同じ所を、三回直した日
長引いた会話の中で直すほど、相棒は前の失敗に足を引っぱられる。
(配置: 第8章「ふところ事情編」8-3「長い散歩は、こまめに帰る」の直後。会話の長さと相棒の雑さの話なので、F-1「並べたら、分からなくなった」の姉妹編として置く)
ある晩、ちいさな不具合が一つ見つかりました。直せば五分の話です。ごろは軽い気持ちで、その相棒に直しを頼みました。
一度目、直りました。よし、と次に移った矢先、さっきと同じところがまた崩れます。おかしいな、と同じ相棒に「また戻ってる、直して」と頼む。二度目も、直ったように見えました。そしてまた、しばらくすると再発する。三度目を頼むころには、会話はもう見上げるほど長く伸びていて、相棒の直しは、どんどん雑になっていました。前に自分がつけた傷をまた踏んで、その上からまた別の傷をつける。そんな手つきです。気づけば、五分の話に三時間かけて、夜が更けていました。

あとで分かったのは、こういうことでした。会話は、長くなるほど、相棒が前の失敗に引きずられることがあります。失敗した直し、その言い訳、また失敗した直し。それを後生大事に引きずったまま次を考えるので、だんだん頭がいっぱいになって、手つきが雑になっていく。長い散歩でくたびれて足元がふらつくのと、たぶん似ています。長引いた会話の中で直すほど、相棒は前の失敗に足を引っぱられる。 三時間の格闘の正体は、腕の悪さではなく、荷物の重さのほうでした。
立て直しは、三つにしました。
ひとつ。二回直してだめなら、その会話は捨てる。三回目を同じ場所で粘らない。粘るほど荷物が増えるだけだと、この晩に骨身にしみました。
ふたつ。新しい会話を開いて、「いまの状態」と「して欲しいこと」だけを、まっさらに渡し直す。前の失敗の言い訳も、途中の脱線も、持ち込みません。まっさらな相棒は、余計な荷物がないぶん、たいてい素直です。
>みっつ。直す前に、まずセーブ(12章)。控えを取ってから触れば、何度やり直しても、いつでも元の一枚に戻れます。
翌朝、ごろは新しい会話を開いて、二行だけ書きました。いまここがこう崩れている、ここをこう直してほしい。それだけです。三時間ぶんの格闘は、その会話では、一発でした。
長い会話をこまめに切り上げて帰る話は第8章8-3「長い散歩は、こまめに帰る」に、直す前の控えの取り方は12章のセーブに、それぞれ本編で書いています。私は同じ所を二回直したら、この二つに立ち戻るようになりました。
あせらず、ゴロゴロ。
