打たない、しゃべる
この日はこう返ってきました。声は速いぶん、固有名詞の変換ミスを拾いきれません。送る前に最初の一文だけ流し読みする、この10秒で事故が減ります。「上手に言おう」としないぶん、指示はかえって素直で長くなり、それがAIには効きました。毎回、変換のクセはすこし違います。ダミーの名前で示しましたが、実名は書かない前提です。
ここまでで、机の装備は、だいぶ揃いました。最後に手を出したのは、道具ではなくて、やり方です。
キーボードを打つのをやめて、しゃべって入力するアプリを入れてみました。声を、そのまま文字に変換してくれるやつです。ここでいう「しゃべる」は、AIと口で会話するのとは少し違います。話した内容がテキストに変わって、そのままごろへの指示になる。いわゆるディクテーション、声で文字を打つ仕組みです。日本語でも動くので、変換の壁はほぼありません。長い指示を打つのは、地味に体力がいります。声なら、寝転んだまま、口だけ動かして頼みごとができる。手が、完全に自由になりました。
これは究極のなまけです、と言い切りたいところですが、半分だけ本当です。残りの半分は、ちゃんと理由があります。長い頼みごとほど、打つより、しゃべるほうが速い。頭に浮かんだ順に口から出して、あとはごろに整えてもらえばいい。「うまく言おう」としなくなった分、かえって指示が素直になりました。
実益はひとつ。頼みごとを「打つ」から「しゃべる」に変えたら、長い指示ほどラクになりました。寝ながら口で指示して、あとはごろに任せる。この本がめざす「ゴロゴロしているだけでもパソコンが動く」に、物理的に、また一歩、近づいたのです。
……とうとう、指を一本も動かさずにパソコンを使う方法を、見つけてしまいました。ここまで来ると、もう机に向かう必要すらありません。最初に戻って、また布団の中です。人はこうして、ゴロゴロに帰っていくのですね。

オンライン追補しゃべって入力する道具は入れ替わりが速いので、いま試せるものは追補ページで随時直しておきます。
>あせらず、ゴロゴロ。
声で文字を打つアプリを入れて、初日に長めの指示をしゃべってみました。布団に寝転んだまま、天井に向かって口だけ動かします。頼みたい内容は、頭の中にはあるけれど、まだ整理はしていません。
しゃべる前の状態:
- 姿勢=布団で仰向け、手は布団の中
- 頼みたいこと=今日の会議のまとめ、なんとなく頭にある
- キーボード=触っていない画面で見えることしゃべった通りに文字が並びました。ただし変換に一箇所ミスがあって、参加者の名前らしき固有名詞が別の漢字になっていました。それに気づかず、そのまま送ってしまいます。
画面で見えること相棒のほうが、変換ミスに気づいてくれました。声入力は速い代わりに、固有名詞をよく取りこぼす。ここで、送る前のひと手間を覚えます。二度目からは、送信前に最初の一文だけ読み返すようにしました。
画面で見えること二度目は、迷いなく通りました。仕上がった指示は、打つより明らかに速く、しかも素直で長い文になっていました。
声で出した指示(整えたあと):
今日の会議のまとめを作って。
参加者ごとに発言を分けて、最後に次のアクションも箇条書きで。
名前は「山田さん」「佐藤さん」の二人。この日はこう返ってきました。声は速いぶん、固有名詞の変換ミスを拾いきれません。送る前に最初の一文だけ流し読みする、この10秒で事故が減ります。「上手に言おう」としないぶん、指示はかえって素直で長くなり、それがAIには効きました。毎回、変換のクセはすこし違います。ダミーの名前で示しましたが、実名は書かない前提です。
まず整えずに、思いついた順に声で流す
こうした方がいい上手にまとめようとせず、頭に浮かんだ順に口から出す(声の利点はそこ)
ごろはこうしてみた「えーと」から始めて素直に流したら、打つより言いたいことが多く出た。
よく使う固有名詞を、先に辞書登録しておく
こうした方がいい名前・略称・専門用語は誤変換されやすいので、最初の10分で登録しておく
ごろはこうしてみた毎回ミスる名前を登録したら、次から正しく出るようになった。
送信の前に、最初の一文だけ読み返す
こうした方がいい全文でなく冒頭一文だけ確認し、目的と固有名詞をチェックする
ごろはこうしてみた冒頭だけ見る習慣にしたら、名前の誤変換をその場で直せた。
実在の名前は、ダミーに置き換えるか伏せる
こうした方がいい個人が特定される情報は声でも打っても残さない
ごろはこうしてみた名前は「山田さん」のような仮名に置き換えてから送るようにした。
人がいる場所では、無理せずキーボードに戻す
こうした方がいい声入力はひとりの時間限定にして、場面で使い分ける
ごろはこうしてみた家族がいる時に声を出しづらかったので、その時は打つ、と割り切ったら続いた。
送信前に冒頭の一文を読んで、目的と名前が正しく出ているか。誤変換が冒頭に見当たらなければ、あとは多少崩れていてもごろが整えてくれます。
増補もっと知りたい人へ (3)
「打つ」から「しゃべる」への切り替えで変わるのは速度だけではありません。指示の素直さが変わります。キーボードで打つとき、人はたいてい「ちゃんとした文章」に整えようとします。変換ミスが怖いから、短くまとめようとする。でも声は、頭に浮かんだ順に出てきます。整えようとする意識が入りにくい分、指示が素直で長くなる傾向があります。AIへの指示は、実は「上手に書く」より「素直に長く伝える」ほうが精度が上がることが多いので、この特性は意外な利点になります。声入力で注意したいのは、固有名詞や専門用語の変換精度です。一般的な日本語は精度が高くなっていますが、略称や造語は誤変換されやすいです。送信前に一度だけ流し読みする習慣をつけておくと、誤変換を拾えます。
「今日の会議のまとめを、参加者ごとの発言ポイントに分けて整理して」と布団から声で頼む。打つより30秒速い。
料理中、両手がふさがった状態で「このレシピの次のステップを読んで」とAIに声で指示する。手が使えなくても動く。
散歩中にスマホに向かって「さっき浮かんだアイデアを整理して、明日のメモにまとめて」と話しかける。歩きながら仕事が進む。
趣味の作曲で「この歌詞の続きを、同じトーンで三行作って」と口で頼む。楽器を持ったまま作業できる。
(医療者向け・ダミーデータ前提)診察の合間に「この症状パターンの鑑別を声でまとめて」と頼む。カルテ入力とは別の情報整理に声が使える。
つまずき集症状: しゃべったのに、全然違う文字に変換されていた。原因: 固有名詞や略語が辞書に登録されていない。一手: よく使う用語だけあらかじめ辞書登録しておくと、精度が大きく上がります。最初の10分の投資が効きます。
症状: 長く話しすぎて、AIへの指示が何を頼みたかったのか分からなくなった。原因: 声だと整理せずに話しすぎてしまう。一手: 送信前に「最初の一文だけ読み返して、目的が書いてあるか確認する」習慣をつけると、迷子の指示が減ります。
症状: 家族がいる環境で声を出しにくく、結局打つことになった。原因: 環境に合っていない。一手: 声入力はひとりの時間限定にして、人目があるときはキーボードと使い分けると、ストレスなく続けられます。使い分けること自体が正解です。
