ひらき
ゴロゴロしたいなら、むしろAIを使ったほうがいい。
ごろは、めんどくさがりです。今日もです。
布団から出るのがめんどくさい。晩ごはんを考えるのがめんどくさい。明日の持ち物をそろえるのもめんどくさい。世の中の人が三倍速で走っているあいだ、ごろは布団の中で、なるべく動かずに生きています。それはそれで、才能だと思います。
>ところが、世の中はうるさいのです。AIがすごい、AIで人生が変わった、AIを使わないと置いていかれる。布団の中まで、その声は届いてきます。ごろは思います。置いていかれてもいいから、このままゴロゴロさせてほしい。
でも、この本はちょっとちがうことを言います。ゴロゴロしたいなら、むしろAIを使ったほうがいい。 めんどくさがりこそ、いちばん得をする道具だからです。

この章では、まだ何もしません。むずかしい話も、黒い画面も、登録も出てきません。ただ、布団の中のごろが、寝返りの拍子に画面の吹き出しへ気づく。「話しかけるだけでいいの?」と、目をほんの少しだけ開ける。それだけです。
始まりは、いつだってそれくらいで十分です。まだ動かなくていいのです。布団の中で、もう少しだけ、こちらの話を聞いてください。
>あせらず、ゴロゴロ。
まだ画面には何も打ちません。この節でごろがやったのは、頭の中の棚おろしだけです。ごろの手元にあるのは、一日のあいだにため息をついた場面の記憶だけ。ここではそれを、口に出しながら一つずつ拾っていきます。
ごろは布団の中で、今日ため息をついた場面を思い出しはじめました。
ここで、ごろは一度つまずきます。「議事録をまとめるのがめんどくさい」を思い出したものの、こう考えてしまいました。
半分は当たっていますが、半分はズレています。「中身を理解する」のは渡せませんが、「文字起こしを整えて箇条書きに直す」手の作業は渡せます。整えるとは、だらだら続く話し言葉を、読みやすい箇条書きや見出しに並べ直すことです。ごろは、めんどくささを一つの塊で見てしまい、渡せる部分まで抱えこみかけました。そこで拾い方を変えます。
拾い終わって、ごろの頭の中の付箋はこうなりました。
今日ため息をついた場面(頭の中の付箋)
- 夕飯の献立決め(10分固まった)
- 週末の行き先決め(毎回検索して疲れる)
- 議事録の整え直し ← 「理解」は自分、「整える」は渡せる、と分けられたこの日は、指を一本も動かしていません。 それでも、渡せそうな荷物が3つ見つかりました。頭の中の付箋は、思い出す日によって数も中身も変わります。今日は3つでしたが、少ない日も多い日もあって、それでかまいません。
一日をふり返り、ため息をついた場面を思い出す
こうした方がいい「作業」でなく「そのときの気分」で探すと出やすい、思い出しやすいから
ごろはこうしてみた冷蔵庫前の10分と、週末の検索疲れが、気分の記憶からすぐ出てきた
出てきた場面を、口に出すかメモに書く
こうした方がいい頭の中だけだと消える、3つ書けば十分
ごろはこうしてみた布団の中でつぶやいて、3つ残った
それぞれに「手が疲れる部分はどこか」を一つ問う
こうした方がいい塊のまま見ると「渡せない」に見える、部分に割ると渡せる箇所が出る
ごろはこうしてみた議事録を「理解」と「整え」に割れて、整えのほうを渡せると気づいた
一番めんどくさかった一つに、心の中で印をつける
こうした方がいい全部いっぺんに渡そうとしない、最初の一個だけ決める
ごろはこうしてみた献立決めに印をつけた、これを最初の荷物にする
「これ、私がやらなくてもいいのかも」と思える場面が、頭の中に一つでも残っていれば十分です。数が多いか少ないかは気にしなくて大丈夫です。
増補もっと知りたい人へ (3)
「めんどくさがりこそ得をする」というのは、根性論の反対のことを言っています。道具が生まれる理由は、たいてい誰かの「めんどくさい」からです。歩くのがめんどくさいから車ができて、洗うのがめんどくさいから洗濯機ができました。つまり「めんどくさい」は、その作業を誰かに渡す合図なのです。まじめな人ほど「自分でやらないと」と抱えこんで、渡す合図を見送ってしまいます。
AIという道具が、これまでの道具とちがうのは、渡し方が「話しかけるだけ」というところです。車の運転を覚える必要も、説明書を読む必要もありません。ふだんの言葉で「これ、めんどくさいんだけど」と言えば、相手が受け取ってくれます。だから、めんどくさがりの感覚がそのまま入口になります。「動きたくない」は欠点ではなく、どこを渡せばいいかを一番よく知っている、という才能の裏返しなのです。急がなくて大丈夫です。まずは自分の「めんどくさい」を、そのままにしておいてください。
まだ何も打たなくてかまいませんが、頭の中で「これ渡せそう」と思う言葉を探す練習だけしておきます。渡す合図になりそうな一言の例です。
毎週の買い物リスト、考えるのがめんどくさい 旅行の持ち物、いつも抜けがあってめんどくさい 週末に子どもとどこ行くか、毎回決めるのがめんどくさい 会議のあとに議事録をまとめるのがめんどくさい(仕事) 読みたい論文がたまって、どれから読むか決めるのがめんどくさい(学びの例。中身の判断は自分でします)
どれも「めんどくさい」で終わっている一言です。この「めんどくさい」の一言が、あとで舟に乗せる荷物になります。
つまずき集- 症状: 「自分にはめんどくさいことなんてない気がする」。原因: きちんとやりすぎて、めんどくささに気づかなくなっている。一手: 「もし手伝ってくれる人がいたら、まず何を頼むか」で考えてみると、渡せる作業が見つかります。
- 症状: 「めんどくさがりなのは、良くないことでは」と後ろめたい。原因: 我慢を美徳と思う癖。一手: この本の中だけは、めんどくさがりを長所として扱ってください。使い分けは自分の生活に持ち帰ってからで十分です。
- 症状: 読み始めた瞬間に「やっぱり自分には関係ない」と閉じたくなる。原因: まだ何も見ていないのに、結論を急いでいる。一手: 0-3の一回さわるところまでは、判断を保留にしてください。さわってから決めても遅くありません。
