秘書を、常駐させる
朝の段取りを一度だけ仕込めば、二日目からは合図一言で走る。それが、この一話のすべて
朝いちのブリーフィングや棚の見張りを「秘書」に任せて、毎朝の思い出す手間を消せるようになります。
「秘書」なんて言うと、自分には縁のない、社長ドラマの世界に聞こえますよね。でも、ここで言う秘書は、生身の人ではありません。毎朝きまった一言を打つと、決まった段取りをまとめてやってくれる、あの仕組みのことです。第1篇や第2篇で、ごろはもう、これに近いものを覚えています。ここでは、それを「秘書」と呼び直すだけです。
会社をひらいたごろには、部署が四つできました。ところが、部署が増えると、今度は「今日、どの部署の何をやるんだっけ」が、分からなくなってきました。発信部の下書きは途中だったか。家計部の集計は先週やったか。おでかけ部の予約は、いつまでだったか。朝、布団の中で、ごろの頭は、いきなり渋滞します。
ごろは、思い出すのに疲れました。めんどくさがりのごろにとって、朝いちばんに頭をフル回転させるのは、いちばん向いていない仕事です。そこでごろは、はっと気づきます。会社なら、これ、秘書さんの仕事だ。朝、席に着いたら「今日のご予定です」と、まとめて教えてくれる、あの役。
ごろは、相棒に「朝の合図」を一つ、覚えさせました。ごろが朝、「おはよう」と打つと、相棒が決まった段取りを走らせます。今日の予定、抱えているやること、昨日からの続き。それが、まとめて目の前に並ぶのです。ごろは、もう頭の中で思い出す必要がなくなりました。

毎朝それを頼むの、大変じゃないかな、とごろは布団の中で身構えます。でも、頼むのは「おはよう」の一言だけ。あとは相棒が、決まった段取りを勝手に走らせます。長い指示を打つのは、最初に一回、この合図を仕込むときだけ。二日目からは、あいさつするだけで一日が始まります。
この「毎朝の段取りを覚えさせる紙」には、じつは名前があります。第4部の置き手紙、あの CLAUDE.md です。秘書というのは、置き手紙に「朝はこの三段を出して」と書いておいた、その一枚のことでした。新しい道具ではなく、もう覚えたものの使い直しです。
秘書の仕事は、朝のブリーフィングだけではありません。棚の見張りも頼めます。「家計部にレシートが溜まってきたら教えて」「発信部の下書きが三日止まっていたら声をかけて」。頼まなくても、裏でそっと見ていて、頃合いになったら教えてくれる。忘れっぽいごろの代わりに、秘書が棚を見張ってくれるのです。ただし、ひとつ正直に。この「向こうから声をかけてくれる」形だけは、朝のあいさつ一言では動きません。相棒は、呼ばれていないあいだは眠っているからです。第14章で覚えた時計仕掛け、あの「決まった時間に自動で動かす」仕組み、正式には定期実行(スケジュール実行/cron)と呼ばれるものと組み合わせて、はじめて向こうから来てくれます。細かい仕込み方はオンライン追補に置くとして、まずは「おはよう」で呼ぶ朝の秘書から。それだけでも、毎朝の思い出す手間は、ちゃんと消えます。
朝、布団の中でぐるぐる考えます。「昨日の続きはどこだっけ。発信部の下書きは途中だったか。家計部の集計は先週やったか」。このぐるぐるを止めるには、次のどっちのほうが効くと思いますか?
- A: 思い出せるように、メモを増やす
- B: 「おはよう」の一言だけで、まとめて出てくる仕組みを、先に仕込んでおく
ごろが、相棒に朝の合図を仕込みます。「これから毎朝『おはよう』と打つから、そのときは、今日の予定、抱えているやること、昨日の続き、の三つを、いつも同じ形でまとめて出して」。
翌朝、ごろは布団から「おはよう」とだけ打ちました。相棒は、四つの部署をぐるっと見て、今日やるといいことを三段でまとめて返してきます。「発信部: ブログ下書きの続き。家計部: 4月レシートの集計がまだ。おでかけ部: 京都の宿、今週中に決める」。ごろは、思い出す手間ゼロで、一日の地図を手に入れました。
はじめの一歩- どこで: いま使っている相棒の、いつもの入力欄で。置き手紙(CLAUDE.md)に一行足す気持ちで
- どうやって: 「毎朝『おはよう』と打ったら、予定・やること・昨日の続きを、同じ形で出して」と、一度だけ仕込む
- きっかけ: 「朝、何をやるか思い出すのに疲れた」と感じたら、秘書を常駐させる合図
- 3分でためす: 今日いちど「おはよう」の合図と三段の型を仕込み、明日の朝もう一度「おはよう」だけ打つ。確かめ方は、二日目に長い指示なしで同じ三段が出てくるかどうか。出てくれば、朝の思い出しを一つ、頭の外へ出せています。この「決まった段取りに名前をつけて呼ぶ」感覚が、そのまま次の段(型を作って共有し、決まった時間に自動で回すLv.3)への入口になります
はじめの一歩あせらず、ゴロゴロ。秘書を雇うのに、面接も、お給料も要りません。朝の合図を一つ、仕込むだけです。
【著者の実話・朝の一言で】 私は毎朝、パソコンに一言あいさつすると、その日の予定と、抱えているタスクと、昨日からの引き継ぎが、まとめて目の前に並ぶようにしています。以前は、朝いちばんに「今日は何があったか」を思い出すところから始めていました。いまは、それを思い出す仕事ごと、秘書役に渡しています。おかげで、朝のいちばん頭が回らない時間に、頭を使わずに済むようになりました。ここでも、患者さんに関わることは、この段取りには一切のせません。並ぶのは、あくまで自分の仕事の予定だけです。
会社をひらいたごろは、朝、布団の中で毎日おなじことをしていました。四つの部署を頭の中でぐるっと思い出し、「えーと、発信部は……家計部は……」とやっている。そのうち、思い出すのに疲れて、二度寝します。まず、その朝の様子を、そのまま打ってみます。
$ ls goro_shouten/
発信部/ 学び部/ 家計部/ おでかけ部/
(四つの部署はあるが、今日どれを触るかは、ごろの頭の中にしかない)ごろは、はじめ、その日その日で、思いつきの頼み方をしていました。
ごろが打った文今日、なんかやることあったっけ?
相棒の返答申し訳ありません、「やること」がどこに書かれているか分かりません。どのフォルダを見ればよいか、教えていただけますか?
画面で見えること毎朝、置き場所から説明し直していて、朝から会話が長い。
これでは、毎朝おなじ説明を繰り返すことになります。ごろは、朝の段取りそのものを、相棒に覚えさせることにしました。
ごろが打った文これから毎朝『おはよう』と打つから、そのときは決まった手順で答えて。手順はこう。①今日の予定を確認する ②四つの部署(発信・学び・家計・おでかけ)をのぞいて、途中のものや溜まっているものを拾う ③昨日の続きを一つ挙げる。この三つを、いつも同じ三段の形で出して。長い前置きはいらない。
相棒の返答承知しました。以後「おはよう」で、次の三段を出します。【今日の予定】【部署の様子】【昨日の続き】。明日の朝から、この形でお出しします。
画面で見えること段取りが一度きちんと決まり、以後は合図一言で走る約束ができている。
翌朝、ごろは「おはよう」とだけ打ちました。
$ (翌朝)おはよう
【今日の予定】特になし(自由に動ける日)
【部署の様子】家計部: 4月レシートが未集計。発信部: ブログ下書きが3日止まっています。
【昨日の続き】おでかけ部の「京都の宿」を、今週中に決める、で止まっています。思い出す仕事を、まるごと秘書に渡せました。朝の段取りを一度だけ仕込めば、二日目からは合図一言で走る。それが、この一話のすべてです。この日はこう並びました。何を「溜まっている」と見なすかは、そのつど少し変わるので、頃合いの目安(何日止まったら声をかけるか)は、あとから調整していきます。
まず、毎朝いつも自分がやっている「思い出し」を書き出す
こうした方がいい頭の中でやっている段取りを、そのまま言葉にする。それがそのまま秘書の手順になる
ごろはこうしてみた「予定を確認→部署を見回す→昨日の続きを思い出す」の三段だと分かった。
その段取りを、相棒に一度だけ仕込む
こうした方がいい「毎朝『おはよう』でこの三段を出して」と、合図と中身をセットで渡す
ごろはこうしてみた三段の手順と「長い前置きはいらない」を、まとめて頼んだ。
出す形(型)を、いつも同じにそろえる
こうした方がいい毎朝ちがう形だと読みにくい。三段の見出しを固定しておく
ごろはこうしてみた【今日の予定】【部署の様子】【昨日の続き】の三段に固定した。
翌朝、合図の一言だけを打って試す
こうした方がいい二日目からは、長い指示を打たない。あいさつだけで走るかを確かめる
ごろはこうしてみた「おはよう」だけで、三段がまとまって出てきた。
頃合いの目安を、少しずつ調整する
こうした方がいい「何日止まったら声をかけるか」などは、使いながら自分に合わせて直す
ごろはこうしてみたはじめは3日で声をかけてもらい、うるさければ延ばす、と決めた。
二日目の朝、長い指示を打たずに「おはよう」だけで一日の地図が出てくれば成功です。もし毎朝、置き場所から説明し直しているなら、段取りがまだ仕込めていないサインです。
答えタップして答え合わせ

B。思い出せるメモが増えると、読むものも増えます。
ぐるぐるの解決には、なりません。朝の段取りを一度だけ仕込めば、二日目からは、一言で走ります。しかも、思い出すこと自体に使っていた朝いちばんの元気を、使わずに済むようになります。秘書に任せられる仕事を、自分の頭で毎朝やり直さない、ということです。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
家計部にレシートの画像が10枚以上溜まったら、朝のまとめのときに「そろそろ集計しませんか」と一言そえてください。
増補もっと知りたい人へ (3)
秘書と呼んでいますが、正体は「決まった段取りを、短い合図で呼び出す仕組み」です。ふだん、朝いちばんに頭の中でやっている「今日は何だっけ」という思い出し作業を、そっくり相棒に渡している、と考えると分かりやすいでしょう。ここで効いているのは、二つのことです。一つは、合図が短いこと。「おはよう」の一言で、長い段取りが丸ごと走る。毎朝それを説明していたら、それこそ日課になってしまいますが、一度仕込めば、あとは一言でいい。もう一つは、型が決まっていること。毎朝おなじ三段で出てくるので、どこを見ればいいかを、頭が覚えます。読む側の負担も、ぐっと下がる。この「短い合図で、決まった段取りを呼ぶ」やり方は、朝のブリーフィングだけのものではありません。「おやすみ」で一日の片づけをする、「週のはじめ」で今週の見通しを出す、というふうに、合図を増やすほど、毎日の決まりごとが、一つずつ頭の外に出ていきます。さらに秘書は、こちらが呼ばなくても働く形にもできます。「レシートが溜まってきたら教えて」のように、頃合いを見て向こうから声をかけてもらう。忘れっぽさを、仕組みで補うわけです(これは第14章の時計仕掛けとの合わせ技で、あいさつだけでは動きません)。ただし、いきなり全部を秘書任せにすると、何が起きているか見えなくなります。まずは朝のあいさつ一つから。効いたら、次の合図を足す。秘書は、少しずつ育てるのがちょうどいいのです。
毎朝『おはよう』と打ったら、①今日の予定 ②四つの部署の途中・溜まっているもの ③昨日の続き、の三段で、いつも同じ形にまとめてください。長い前置きは要りません。
毎晩『おやすみ』と打ったら、今日やり残したことと、明日にまわすことを、二つのリストに分けて出してください。片づけの合図として使います。
家計部にレシートの画像が10枚以上溜まったら、朝のまとめのときに「そろそろ集計しませんか」と一言そえてください。
発信部の下書きが、3日以上さわられていなかったら、朝のまとめで教えてください。せかす言い方ではなく、そっと知らせるだけで。
(医療者向け・ダミーデータ前提)毎朝『おはよう』で、学習用のダミー資料の「今日の復習テーマ」を一つだけ挙げてください。患者さんの実データは、この段取りには一切のせません。
つまずき集- 症状: 毎朝、置き場所から説明し直していて、朝の会話が長い。原因: 段取りがまだ仕込めていない。一手: 「毎朝『おはよう』でこの三段を出して」と、合図と手順を一度セットで渡す。
- 症状: 出てくる形が毎朝ちがって、読みにくい。原因: 出す型を決めていない。一手: 見出しを三つに固定し、「いつもこの形で」と念を押す。
- 症状: 秘書が、細かいことまで山ほど並べてきて、逆に疲れる。原因: 拾う範囲が広すぎる。一手: 「今日ほんとうに関係するものだけ、三つまで」と、数を絞る。
- 症状: 「溜まったら教えて」が、うるさすぎる/静かすぎる。原因: 頃合いの目安が合っていない。一手: 「何枚で」「何日で」の数字を、自分の暮らしに合わせて調整する。
