第1部 まずAIと話してみる
1-2

「いい感じに」では、いい感じにならない

誰と、いつ、どこで、何を大事にするか。
この話を読むと

頼めばちゃんと返ってくる、という手ごたえがつかめます。

AIに頼むとき、つい「いい感じに」と言いたくなります。だって、相手はかしこいらしいから、こっちの気持ちを察してくれそうな気がする。ごろも、そう思っていました。

そして、見事に転びました。「いい感じの晩ごはんを考えて」。返ってきたのは、どこかで見たような、ぼんやりした一般論。ごろは肩を落とします。かしこいのに、なんで。理由は簡単で、AIはあなたの頭の中をのぞけないからです。エスパーではありません。渡した材料の分だけ、返してくれる相手です。

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ごろ図

コツは、たった4つの材料を足すことです。誰と、いつ、どこで、何を大事にするか。 このどれか一つを足すだけで、返ってくる答えの解像度が上がります。全部いっぺんに、と気負わなくていい。一つずつで十分です。

それから、一発で完璧を狙わないこと。返ってきた答えに「温泉はやめて、美術館を入れて」と足していく。この直しの往復が、いちばんの近道です。頼み方も、かしこまった命令文でなくていい。友達に相談するように話しかけて大丈夫です。

開きのクイズ

旅行の計画を頼むとき、どっちが役に立つ答えが返ってくるでしょう。

  • A「いい感じの旅行プランを考えて」
  • B「70代の両親と、11月に2泊3日で京都。歩く距離は少なめ、温泉あり。1日の予定を教えて」

答えは、下にあります。

雑な頼み方:「お礼状を書いて」 → あたりさわりのない、誰にでも使えそうな文が返ってきます。

画面で見る(実際の操作)
実演: Claude Desktopで、短く頼み、質問に答え、最後の一文だけ直すまで
実演画面
Claudeが足りない材料を聞いてくれます。選択肢に答えるだけで、依頼が具体的になります
Claudeが足りない材料を聞いてくれます。選択肢に答えるだけで、依頼が具体的になります
要点ズーム
最後の一文だけを短くする。直す範囲を小さくすると、返事も読みやすくなります
最後の一文だけを短くする。直す範囲を小さくすると、返事も読みやすくなります

材料を足した頼み方:「先週、上司に食事をごちそうになったお礼。堅すぎず、でも丁寧に。3〜4行で」 → そのまま送れそうな、具体的な下書きが返ってきます。

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同じ「お礼状」でも、渡した材料でこれだけ変わる、というのを目で見てください。

  • どこで: claude.aiの入力欄
  • どうやって: いつもの頼みごとに「誰と・いつ・どこで・何を大事に」のどれか1つを足す
  • きっかけ: まず雑に頼んで、返事を見てから「もっとこうして」と1回足してみる

あせらず、ゴロゴロ。

実録・やってみた

場面設定。ごろは、お世話になった人へ贈り物のお礼を言いたい。でも、うまい言い回しが出てきません。まず、いちばん雑な頼み方から転んでみます。

ごろ
ごろが打った文お礼状を書いて
相棒
相棒の返答このたびは、心のこもった贈り物をいただき、誠にありがとうございました。あたたかいお心遣いに、深く感謝申し上げます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

画面で見えることそれらしい文が返ってきます。ただ、誰にでも当てはまる、のっぺりした文面です。

ごろは、これを読んで首をかしげました。まちがってはいない。でも、自分の言葉に感じられない。1-2で習った「材料を足す」を、ここで使ってみます。

ごろ
ごろが打った文先週、上司に食事をごちそうになったお礼。堅すぎず、でも丁寧に。3〜4行で
相棒
相棒の返答先週はお食事をごちそうさまでした。おいしいお店で、話も弾んで、とても楽しい時間でした。お気遣いいただき、ありがとうございます。またお供させてください。

画面で見えることさっきより短く、そのまま送れそうな、生きた文面に変わります。

ただ、ごろは一つだけ引っかかりました。「またお供させてください」が、自分の口ぶりには少しあらたまりすぎです。そこで、全部を作り直さず、その一箇所だけ直しを頼みます。

ごろ
ごろが打った文最後の一文だけ、もっとくだけて。「また誘ってください」くらいの軽さで
相棒
相棒の返答(前の二文はそのまま)…また誘ってもらえたら、うれしいです。

画面で見えること最後の一文だけが軽い言い回しに差し替わり、前の二文は動きません。

一発で完璧にはなりませんでした。でも、気になった一文だけを直す往復で、ちょうど自分の口ぶりに近づきます。

足したのは「誰に・どんな場面・どんな雰囲気・長さ」の4点だけ。 それだけで、のっぺりした一般論が、自分の状況に寄った下書きに変わりました。ごろは、この二つを並べて置いてみます。

[前] お礼状を書いて
  → 誰にでも使える、かしこまりすぎた定型文

[後] 先週、上司に食事をごちそうになったお礼。堅すぎず、でも丁寧に。3〜4行で
  → そのまま送れそうな、場面に合った下書き

同じ「お礼」でも、渡した材料でこれだけ変わります。この日はこう返ってきました。文面は毎回すこし違うので、気に入らなければ「もう少しくだけて」ともう一回頼めば大丈夫です。

手順
  1. まず、いつもの雑な頼み方でそのまま打ってみる → [こうしたほうがいい] いきなり完璧を狙わず、一度雑に投げて手ごたえを見る

    ごろはこうしてみた

    「お礼状を書いて」で投げたら、のっぺりした定型文が来た

  2. 返事を見て、足りない材料を1つ見つける → [こうしたほうがいい] 「誰と・いつ・どこで・何を大事に」のどれが抜けているかで探す

    ごろはこうしてみた

    「誰に・どんな場面」がまるごと抜けていると気づいた

  3. その材料を1つだけ足して、打ち直す → [こうしたほうがいい] 一度に全部盛らない。1つ足すだけで答えは目に見えて変わる

    ごろはこうしてみた

    「上司に食事をごちそうになったお礼」を足したら、急に自分ごとの文になった

  4. さらに雰囲気と長さを添える → [こうしたほうがいい] 「堅すぎず」「3行で」のように、トーンと分量を一言で渡す

    ごろはこうしてみた

    「堅すぎず、でも丁寧に、3〜4行」を足して、ちょうどいい重さになった

  5. 直したい所だけ、範囲を区切って頼む → [こうしたほうがいい] 「ここだけ直して、あとはそのまま」と言うと、良かった部分が消えない

    ごろはこうしてみた

    全部作り直しを頼んで、気に入っていた一行まで変わってしまい、やり直した

うまくいったかの確かめ方。前の返事と後の返事を声に出して読み比べて、後のほうが「自分の状況に近い」と感じられれば成功です。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。Aは「誰と・いつ・どこで・何を大事にするか」が抜けているので、当たり障りのない一般論しか返りません。

渡した材料の分だけ返してくれる相手だ、と覚えておいてください。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

「いい感じに」がなぜ空振りするのか、もう少し裏側をのぞきます。AIは、あなたの言葉から「たぶん、こう続くだろう」という自然なつながりを、とても大量の文章の傾向から選んでいます。材料が少ないと、選ぶ手がかりも少ない。だから「多くの人に無難に当てはまる、まん中あたりの答え」に寄っていきます。灰色のぼんやりした皿は、いじわるで返しているのではなく、手がかりが足りないと自然にそうなる、というだけのことです。

逆に、誰と・いつ・どこで・何を大事にするか、のどれかを足すと、当てはまる範囲がぐっと狭まります。「70代」「歩く距離は少なめ」と言った瞬間に、階段だらけの名所が候補から外れる。制約は、AIの答えを狭めて、あなたに近づける働きをします。ここが直感と逆で、「自由にやって」より「条件を絞って」のほうが、良い答えに近づきます。往復で直せるのも同じ理屈で、あなたの反応そのものが新しい手がかりになり、一回ごとに的が絞られていきます。

ただ、ひとつだけ勘違いしやすいところがあります。具体で頼む、は、長く頼む、ではありません。良かれと思って一度に注文を十個も盛ると、いちばん大事な注文が、そのほかの注文に埋もれて薄まってしまいます。あとで置き手紙に好みを盛りすぎると窮屈になるのと、同じ型のつまずきです。だから、注文は一回に一つか二つでいい。足りない分は、返ってきたものを見てから、直しの往復で継ぎ足していく。そのほうが、いっぺんに盛るより、かえって早く自分の形に着きます。

例をもっと

同じ頼みごとを、材料を足す前と後で見比べる形にしています。仕事・くらし・学びから散らしました。

前: 会議のメールを書いて 後: 来週火曜15時の定例会議の案内メール。参加者は社内5名、議題は新商品の名前決め。3行で、堅すぎず

前: 週末どこか行きたい 後: 土曜、3歳の子連れ、車で1時間以内、雨でも遊べる屋内。午前中に出て昼過ぎ帰りの案を3つ

前: 英語を勉強したい 後: 通勤の20分でできる英語の勉強法を、続けやすい順に3つ。今はTOEIC500点くらい、目標は日常会話

前: 節約したい 後: 一人暮らし、食費が月4万。無理なく3万に近づける工夫を、効果の大きい順に5つ

(医療者向け・ダミー可)患者説明の練習をしたい → 架空の設定で、2型糖尿病と診断されたばかりの60代へ、食事の第一歩を3つ、専門用語なしで。実データは使いません

ごろつまずき集
  • 症状: 材料を足したのに、まだ一般論っぽい → 原因: 足したのが「もっと詳しく」など中身のない一言だった → 一手: 誰と・いつ・どこで・何を大事に、の具体語を1つ入れる
  • 症状: 条件を盛りすぎて、ぼやけた答えになった → 原因: 一度に注文が多く、優先順位が伝わらない → 一手: 「いちばん大事なのは◯◯」と一つだけ強調する
  • 症状: 直そうとすると、良かった部分まで変わってしまう → 原因: 全体をやり直す頼み方になっている → 一手: 「ここだけ直して、あとはそのまま」と範囲を区切る
  • 症状: かしこまった命令文が思いつかず手が止まる → 原因: 正しい書き方を探しすぎている → 一手: 友達に相談する口調で大丈夫。文法は気にしない
あせらず、ゴロゴロ。
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