11章 発信編
11-4

らしさを教える。自分の過去から、自分の書き方を学ばせる

B。

Web追補この話は、ほかより少しだけ手数が多い一話です。むずかしければ、11-1から11-3が回りはじめてから戻ってきて大丈夫。オンライン追補に、手本の選び方のコツを置いてあります

AIに書いてもらった下書きが「上手いけど、自分じゃない」と感じるとき、足りないものは何でしょう。

  • A. 情報の量
  • B. あなたの書き方の見本

答えは、この話のいちばん下にあります。

この話を読むと

「なんだかAIっぽい」文章を、自分の過去の投稿を手本にして、「自分の書き方」に寄せてもらえるようになります。

上手いのに自分じゃない、というあの違和感には、理由があります。相棒は、あなたの過去を知りません。だから、当たりさわりのない上手さになるのです。ここまでの三つの勝負は「早く用意する」話でしたが、この話だけは少し毛色が違って、「自分らしく仕上げる」話です。だから、いちばん最後に置きました。

鏡の前の脱力したごろが、よそゆきに姿勢を決めた鏡像へ力を抜くよう促し、肩が下がるのを見てうなずく

やり方は、二段です。まず、自分が過去に書いて「これは自分らしい」と思う投稿を、三本から五本ほど渡します。(前の章でやった「例をいくつか見せて頼む」の、投稿版です。)多くなくていいです。「らしさ」がにじむものを選びます。ただし、ここで最初の手すりが効いてきます。渡す前に、その投稿の中に他人の名前や、まだ言えないことがまざっていないか、一度だけ見る。抜いてから、渡します。

そして、いきなり書かせるのではなく、先に「私の書き方の特徴を挙げて」と頼みます。すると、長い一文が多い、言い切らない、たとえ話をよく使う、といった癖が出てきます。自分では気づけなかった癖が、言葉になって見えるのです。その特徴を使って、いまの下書きを「私の書き方に寄せて」と頼みます。ゼロから書かせるより、直させるほうが、ずっと自分に近づきます。

ときどき、癖を強調しすぎて、かえって不自然になります。そのときは「もう少し自然に」と一段戻します。手本は真似の対象であって、そっくりさんを作るためのものではありません。そして最後は、声に出して読んで、「自分が言いそうか」で決めます。ここだけは、相棒に任せられません。これも、下書きまで。仕上げの耳は、自分のものです。

実演

ごろは、こう頼みました。

「私が前に書いた投稿を3本、下に貼ります。まず、私の書き方の特徴を挙げてください。そのあと、いまの下書きをその書き方に寄せて直してください。似せすぎず、自然な範囲で。」

「一文が短い」「言い切らずに、ですね、で終わることが多い」。自分の癖が、ずらりと並びました。ごろはそれを見て、「なるほど、こういう猫か」と直しにかかります。ところが勢いあまって、語尾を全部「ですね」にそろえてしまいました。読み返して「ちょっとくどい」と気づき、半分に戻します。

手本に寄せるのは、寄せすぎる一歩手前が、ちょうどいい。AIっぽさが、ここではじめて「自分のらしさ」に上書きされました。

ごろはじめの一歩
  • どこで: チャット画面で、過去の投稿を貼るだけ。特別な道具はいりません。
  • どうやって: 「特徴を挙げて」、それから「その書き方に寄せて直して」。この二段で頼む。一気に書かせない。
  • きっかけ: 「上手いけど自分じゃない」とモヤっとした、まさにその瞬間に。違和感は、手本を渡す合図です。
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ごろはじめの一歩

あせらず、ゴロゴロ。

実録・やってみた

ごろの手元に、AIが書いた下書きが一本あります。上手なのに、どこか自分じゃない。読み返すと、よそゆきの服を着せられたような、つるっとした感じがします。手本にする過去の投稿も、三本えらんであります。

渡すもの
・いまの下書き(AIが書いた。上手いけど自分じゃない)
・過去の投稿3本(自分で「これは自分らしい」と思うもの)
 └ 貼る前チェック: 3本目に友だちの名前 → 抜く
ごろ
ごろが打った文「私が前に書いた投稿を3本、下に貼ります。まず、私の書き方の特徴を挙げてください。そのあと、いまの下書きをその書き方に寄せて直してください。似せすぎず、自然な範囲で。」
相棒
相棒の返答「まず、三本から見えた書き方の特徴です。 ・一文が短い。二十字くらいで切ることが多いです ・言い切らず、『ですね』『かもしれません』でやわらげます ・身近なたとえ(台所・散歩・布団)をよく使います ・段落の頭に、まず結論を置きます そのうえで、いまの下書きを寄せて直しました。」

画面で見えること自分でも気づいていなかった癖が、箇条書きでずらりと並びました。

ごろは「なるほど、こういう猫か」と直された下書きを読みます。ところが、寄せ方が強すぎました。語尾がぜんぶ「ですね」で終わって、くどいのです。

ごろ
ごろが打った文「特徴は合ってます。でも語尾の『ですね』が多すぎてくどい。半分くらいに減らして、もう少し自然にしてください。」
相棒
相棒の返答「そろえすぎました。語尾を散らして、言い切りとまぜます。 (直し前)『続けるのは、大事ですね。無理しないのが、いいですね。』 (直し後)『続けるのは、大事。無理しないのが、いちばんかもしれません。』」

画面で見えること語尾がばらけて、読んだときの調子が、いつものごろに近づきました。

仕上がった一本を、ごろは声に出して読んでみます。

直す前(AIっぽい): この習慣を継続することには、多くのメリットがございます。
直したあと(自分寄り): 続けると、いいことがある。たぶん、思ってるより地味に。

手本に寄せるのは、寄せすぎる一歩手前が、ちょうどいい。 AIっぽさが、ここではじめて「自分のらしさ」に上書きされました。

この日はこう返ってきました。挙がる特徴も、寄せた文の言い回しも、頼むたびに毎回すこし違います。

手順
  1. 「自分らしい」と思う過去の投稿を三本から五本えらぶ

    こうした方がいい

    数より、らしさがにじむものを選ぶ

    ごろはこうしてみた

    「これは自分だ」と思う三本にした。

  2. 渡す前に、一度だけ見直す

    こうした方がいい

    他人の名前・未公開のことがまざっていないか確かめ、抜いてから渡す

    ごろはこうしてみた

    三本目に友だちの名前があったので抜いた。

  3. いきなり書かせず、まず「特徴を挙げて」と頼む

    こうした方がいい

    癖を言葉にしてから直させると、ねらいが定まる

    ごろはこうしてみた

    先に特徴を出させたら、知らない癖が見えた。

  4. その特徴を使って「寄せて直して」と頼む

    こうした方がいい

    ゼロから書かせるより、直させるほうが自分に近づく

    ごろはこうしてみた

    挙がった癖を使って下書きを直させた。

  5. 寄せすぎたら「もう少し自然に」と一段戻す

    こうした方がいい

    癖の強調は、そっくりさんになる手前で止める

    ごろはこうしてみた

    「ですね」を半分に減らしてもらった。

  6. 最後に、声に出して読む

    こうした方がいい

    「自分が言いそうか」で決める。ここは相棒に任せない

    ごろはこうしてみた

    音読して、言いそうな言い回しに落ち着いた。

うまくいったかの確かめ方

挙がった特徴のなかに「言われて初めて気づいた癖」が一つでもあれば、手本がちゃんと効いています。直した文を声に出して「これ、自分が言いそう」と思えたら成功です。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。

AIは、あなたの過去を知りません。だから、当たりさわりのない上手さになります。自分が前に書いたものを何本か手本に渡すと、口ぐせも、文の長さも、句読点のリズムも拾って、ぐっと自分寄りになります。個性は、教えれば移せるのです。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

私のいつものメッセージのやりとりを何件か貼ります(相手の名前は消してあります)。ここから、私のくだけた話し方の特徴を挙げて、この告知文をもう少し私らしく、かたすぎない感じに寄せてください。

自分の日記を数日ぶん貼ります。まず私の書き方の特徴を挙げて、そのあと、この投稿を「よそゆき」でなく「日記の私」に近づけて。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

手本を数本見せると、なぜ文章が自分寄りになるのでしょうか。相棒は、たくさんの人の文章を平らにならした「まんなかの上手さ」を持っています。だから何も渡さないと、その平均に近い、当たりさわりのない上手さになります。ところが、あなたの過去の投稿を三本から五本見せると、相棒はその範囲に照準を合わせ直します。「この書き手は一文が短い」「言い切らない」「たとえ話が多い」という手がかりを拾って、平均から、あなたのほうへ寄せてくるのです。これは前の章でやった「例をいくつか見せて頼む」の、投稿版です。

二段に分けるのにも意味があります。いきなり「私らしく書いて」と頼むと、相棒は自分の中の「らしさ」の想像で書いてしまいます。先に「私の書き方の特徴を挙げて」と一段はさむと、癖が言葉になって画面に出ます。自分では気づけなかった癖が見えるのも、この一段のおかげです。その言葉になった特徴を使って直させるので、ねらいが定まります。ただし、寄せすぎると、そっくりさんになって不自然になります。手本は真似の対象であって、コピーを作る型ではありません。だから最後は、声に出して読んで「自分が言いそうか」で決めます。仕上げの耳だけは、相棒に渡せません。ちなみに、この「自分の声」を集めておく方法として、しゃべった言葉をそのまま文字にして材料にしておくやり方もあります。手で打つより、地の声が残りやすいことがあります。

例をもっと

私が前に書いた投稿を4本、下に貼ります。まず、私の書き方の特徴を5つほど挙げてください。そのあとで、いまの下書きをその書き方に寄せて直して。似せすぎず、自然な範囲で。

過去のブログ記事を3本貼ります。私の文章の癖を挙げてから、この新しい記事の書き出しだけ、私らしく直してください。全文でなく、まず一段落で試したいです。

私のいつものメッセージのやりとりを何件か貼ります(相手の名前は消してあります)。ここから、私のくだけた話し方の特徴を挙げて、この告知文をもう少し私らしく、かたすぎない感じに寄せてください。

自分の日記を数日ぶん貼ります。まず私の書き方の特徴を挙げて、そのあと、この投稿を「よそゆき」でなく「日記の私」に近づけて。

(医療者向け・ダミーデータ前提)過去に書いた患者さん向けの説明文を3本貼ります(固有名や具体的な数値はダミーに置き換え済み)。私の説明の癖を挙げて、この新しい説明文を同じ調子に寄せてください。事実は私が確認します。

ごろつまずき集
  • 症状: 癖を強調しすぎて、かえって不自然になる。原因: 寄せすぎ。一手: 「もう少し自然に」と一段戻します。ごろが語尾の「ですね」を半分に戻したのが、これです。ちょうどいいのは、寄せすぎる一歩手前です。
  • 症状: 手本を渡しても、あまり自分に近づかない。原因: 手本が「らしくない」ものばかり。一手: 数でなく、「これは自分らしい」とにじむものを選びます。多くなくてかまいません。
  • 症状: 手本の中に、他人の名前や言えないことがまざっていた。原因: 貼る前の見直しを飛ばした。一手: 渡す前に一度だけ見て、抜いてから渡します。過去の投稿ほど、こういうものが残りがちです。
  • 症状: いきなり書かせたら、想像の「自分らしさ」で書かれた。原因: 特徴を挙げる一段を飛ばした。一手: まず「特徴を挙げて」、それから「寄せて直して」。二段に分けます。
あせらず、ゴロゴロ。
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