
あせらず、ゴロゴロ。章トビラ

認定の一言。ぜんぶ家の中で回せるようになったごろが、はじめて、自分から外へ出る側に立ちました。
ごろは、長いあいだ家の中の猫でした。布団からデスクまで。デスクからまた布団まで。その往復のなかで、めんどくさいことをひとつずつ相棒に渡し、朝になれば仕事が終わっている、という暮らしを手に入れました。第1篇から第3篇まで、ごろがやってきたのは、ぜんぶ自分のための自動化です。回るようになりました。よかった。
ところが、この章でごろは、思ってもみなかったものに出会います。渇きです。回るようになった者だけがたどり着く、次の渇き。ある朝、布団のなかで天井を見上げて、ごろはつぶやきます。「……暇だな」。やることが減ったのに、なぜか物足りない。この物足りなさの正体を、ごろはこの章でゆっくり確かめていきます。

正体は、たぶんこうです。ごろの中にはずっと、「こんなものがあったらいいのに」「これとこれがつながったら面白いのに」という、小さな声がありました。今まではそれを、めんどくさいこと片づけに使ってきた。でも片づけが終わってしまうと、その声は、外を向き始めます。誰かのために、何かをしてみたい。ずっと見る側だった世界に、こんどは自分から出てみたい。
この編の勝負は四つ。回る者の渇きに気づいて、「あったらいいのに」を棚おろしする話。外で回すための身支度を整える話。外から頼まれごとが来たときに、相棒と一緒に「受ける・断る・条件を変える」を考える話。そして、誰でもたくさん作れる時代に、量とうまさのつぎに何が残るのかを確かめる話。どれも、家の外へ一歩ふみ出すための、玄関先の話です。

外へ出ても、留守番はちゃんと動いています。だから、安心して出られます。
あせらず、ゴロゴロ。
この章の前に、ひとつだけ

外へ出る話に入る前に、ひとつだけ、先に手すりを置かせてください。
この章から、ごろは外の世界とつながり始めます。外で指示を出したり、誰かからの頼まれごとに返事をしたり。相棒と一緒にできることが、ぐっと広がります。広がるのは、いいことです。でも、広がるぶんだけ、「最後のひと押し」を誰が押すのかを、はっきりさせておく必要があります。
この章のあいだ、ずっと変わらない約束は一つです。外に向かって何かを出すとき、送信も、公開も、招待も、最後に押すのは自分の指です。 相棒に下書きは頼めます。返事の案も、告知の文も、誰かを誘う文も、いくらでも作ってもらえます。でも、それを本当に外へ出すボタンだけは、毎回あなたが押します。ごろも一度、この章でヒヤリとします。だから先に言っておきます。作るのは相棒、出すのは自分の指。この順番さえ守れば、外に出ても、安心してゴロゴロできます。
もうひとつ。外へ出ても、家の仕事はちゃんと動いています。第3篇までで作った留守番の仕組み、つまり毎朝きまった時間に相棒がひとりでに仕事を進めておいてくれる、あの仕掛けが、あなたが出かけているあいだも回っています。だから、外の話に集中して大丈夫です。家のことは、家が見ています。
それでは、いきましょう。
あせらず、ゴロゴロ。