第5部 使い切る/終章
5-2

手順をつなげて一連にする

バトンを渡す言い方ひとつで、3つの用事が、ひとつの用事になった。

🧩 あなたは新しいお店を出す前に、いつもこの順でやります。街の人口を調べる。競合店を一覧にする。開店のあいさつ文を下書きする。一回の頼みで、この3つを続けてやってもらいたい。どちらが上手い頼み方でしょう。

A ひとつ頼んで結果を見て、次を頼んで、また結果を見て、最後を頼む B 「まず①、次にその結果を使って②、最後に②をふまえて③、という順で全部やって」と一度で頼む

この話を読むと

いくつかの手順を一続きの用事として、一度で任せられるようになります。

私たちの用事は、たいてい3歩でできています。調べる、まとめる、書く。ひとつの大きな仕事に見えても、ほどいてみると、小さな手順が手をつないで並んでいるだけ。だから、その手のつなぎ方さえ相棒に伝えれば、3歩まとめて渡せます。

ごろは、はじめこれを知らずに、3回に分けて頼んでいました。調べてもらって、結果を見て、次にまとめてもらって、また見て、最後に下書きを頼む。悪くはありません。でも、3回とも自分が立ち会う必要があります。めんどくさがりのごろにとって、3回立ち会うのは、じゅうぶんめんどくさい話でした。

調査・まとめ・下書きの三役が一本のバトンをつなぎ、四匹目が完成紙を掲げる

一続きにする鍵は、このバトンです。①で調べた結果を、②がそのまま受け取って使う。②でまとめた表を、③がそのまま見て書く。前の答えを、次に渡す。これさえ伝えておけば、相棒は手ぶらで次に走り出しません。

言い方も、むずかしくありません。番号や矢印を使うだけです。「まず、次に、最後に」。この3語を頼みに入れると、相棒は道を間違えずに歩いてくれます。

もっとも、ごろはここでも一度つまずいています。前の答えを渡すのを言い忘れて、2匹目が手ぶらで走り出してしまった。まとめる係が、何をまとめればいいのか分からずぽかんとしている。「前の答えを次に渡して」と一言足したら、ちゃんとバトンがつながりました。全部任せるのが不安なら、「②までできたら一度見せて」と、途中に区切りを入れることもできます。全自動と手作業の、ちょうどいいあいだの距離です。

実演

ごろは、引っ越し先を決めることにしました。いつもなら3回に分ける用事を、一続きで頼んでみます。

「引っ越し先を決めたいです。まず候補の3つの街の家賃相場を調べて、次にその結果をふまえて通勤時間と一緒に一覧の表にして、最後にその表を見て、私に向けたおすすめコメントを一言つけて。」

相棒は、調べて、表にして、コメントまでを続けてやり、最後に「表とおすすめ」という一枚の紙を差し出しました。ごろは3回頼まず、1回で最後まで受け取りました。バトンを渡す言い方ひとつで、3つの用事が、ひとつの用事になった。 これが一勝です。

>
ごろはじめの一歩
  • どこで: 作業机フォルダで、いつもの用事をひとつ思い浮かべて
  • どうやって: その用事を「まず、次に、最後に」の3歩に分けて、前の結果を次に渡すと明記して頼む
  • きっかけ: 「いつも同じ順番でやってるな」と思う用事があれば、それが一続きにする最初の候補

一度に3歩でじゅうぶんです。10歩つなごうとして転ぶのは、また今度に。あせらず、ゴロゴロ。

実録・やってみた

ごろの用事は「引っ越し先を決める」。手元にあるのは、頭の中の候補3つ(A駅・B駅・C駅)だけ。いつもなら、家賃を調べて、表にして、どこがいいか考えて、と3回に分けて自分が立ち会います。今日は、それを一続きで頼めるか試します。まずは、バトンを渡す言葉をわざと入れずに頼んでみました。

ごろ
ごろが打った文A駅・B駅・C駅の家賃相場を調べて、通勤時間と一緒に表にして、おすすめも書いて。
相棒
相棒の返答3駅の家賃相場を調べました。A駅は…、B駅は…、C駅は…(それぞれ数行)。表とおすすめについては、どの情報を使えばよいでしょうか。改めて教えてください。

画面で見えること調べるところで止まり、「表は何を使えば?」と聞き返してきた。バトンが渡っていない。

まとめ係が、何をまとめればいいか分からずぽかんとしています。前の答えを次に渡す、の一言が抜けていました。そこを足して頼み直します。

ごろ
ごろが打った文さっき調べた3駅の家賃を、そのまま次に使って。まず家賃を調べる、次にその結果に通勤時間を足して一覧の表にする、最後にその表を見て私へのおすすめを一言。前の答えを次に渡しながら順番どおりに。
相棒
相棒の返答順番に進めます。 ① 家賃相場: A駅…/B駅…/C駅…(調査ずみ) ② 通勤時間を足して表に(下記) ③ おすすめ: 家賃と通勤のバランスならB駅。C駅は家賃は安いが通勤が長め。

画面で見えること今度は止まらず、①②③が一続きで流れ、最後に一枚にまとまった。

できあがった表は、こんな一枚でした(数字はダミー)。

| 駅 | 家賃相場 | 通勤時間 | ひとこと |
|----|----------|----------|----------|
| A駅 | 高め     | 20分     | 近いが家賃が張る |
| B駅 | 中くらい | 30分     | バランス◎(おすすめ) |
| C駅 | 安め     | 50分     | 安いが通勤が長い |

ごろは3回頼まず、1回で最後まで受け取りました。この日はB駅推しで返ってきました。毎回すこし理由づけは変わります。1回目に手ぶらで止まったのは、順番でなく「前の答えを渡す」の一言が抜けていたからでした。

もし全部を一気に任せるのが不安なら、途中に区切りを置けます。ごろは別の日、こう頼みました。

ごろ
ごろが打った文同じ流れでいいけど、②の表ができたところで一度見せて。おすすめはそのあとで。
相棒
相棒の返答承知しました。①家賃を調べ、②通勤時間を足した表まで作ったら、いったん止めてお見せします。確認いただいてから、③のおすすめに進みます。

画面で見えること表が出たところで止まり、こちらの「OK」を待ってから最後まで走った。

全自動と手作業の、ちょうど間の距離です。急ぐ日は一気に、慎重に見たい日は「②まで見せて」で区切る。同じ頼みでも、立ち会い方を選べます。

手順
  1. その用事を「調べる・まとめる・書く」のような3歩に割る

    こうした方がいい

    いきなり10歩でなく3歩で試すと、途中でずれても直しやすいです

    ごろはこうしてみた

    「家賃を調べる/表にする/おすすめを書く」の3歩にした。

  2. 「まず・次に・最後に」で順番を目に見える形にする

    こうした方がいい

    番号か矢印で順番を書くと、全部を並列に受け取る事故が減ります

    ごろはこうしてみた

    頼み文に「まず/次に/最後に」を入れた。

  3. 「前の答えを、次に渡して」を必ず一言添える

    こうした方がいい

    これが本当の鍵で、抜けると2番目が手ぶらで止まります

    ごろはこうしてみた

    最初これを忘れて止まり、足したらつながった。

  4. 着地の形(一枚の表か、一枚のメモか)を指定する

    こうした方がいい

    「最後は一つの表にして」と言うと、バラバラに返るのを防げます

    ごろはこうしてみた

    「一覧の表にして」と着地を決めた。

  5. 不安なら「②までできたら一度見せて」と途中に区切りを置く

    こうした方がいい

    全自動と手作業のちょうど間の距離で進められます

    ごろはこうしてみた

    今回は短いので区切らず一気に流した。

うまくいったかの確かめ方: 最後に返ってきたものが、頼んだ3歩ぜんぶを通った「一枚」になっていれば成功です。途中で「何を使えば?」と聞き返されたら、バトンの一言が抜けています。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。Aでも間違いではありませんが、あなたが3回立ち会う必要があります。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

まず冷蔵庫の残り物の写真を見て食材を書き出して、次にその食材で作れる献立を3つ挙げて、最後にいちばん簡単なものの手順を短くまとめて。前の結果を次に使ってください。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

なぜ「まず・次に・最後に」の3語が効くのでしょう。相棒は、頼まれたことを上から順にたどって仕事をします。順番を言葉にしておくと、どの手からどの手へ進むのかが一本道になり、迷わずに歩けます。逆に、順番を言わずに三つの用事をまとめて渡すと、どれを先にやるか、前の答えを次に使ってよいのかが宙に浮き、手ぶらのまま次に走り出すことがあります。一続きにする本当の鍵は、順番そのものより「前の答えを、次に渡す」と伝えることです。 ①で調べた表を②がそのまま受け取り、②のまとめを③がそのまま見て書く。この受け渡しを明記すると、三つの用事が一つの流れになります。私たちの用事の多くは、ほどけば「調べる・まとめる・書く」のような3歩でできています。だから、いきなり10歩をつなごうとせず、まず3歩で試すのが安全です。長くつなぐほど、途中で一つ外すと後ろが全部ずれるからです。不安なら「②までできたら一度見せて」と区切りを入れておけば、全自動と手作業のちょうど間の距離で進められます。よく使う3歩セットには名前を付けておくと、次からは一言で呼び出せます。

例をもっと

まず冷蔵庫の残り物の写真を見て食材を書き出して、次にその食材で作れる献立を3つ挙げて、最後にいちばん簡単なものの手順を短くまとめて。前の結果を次に使ってください。 まず来月の予定表を見て空いている週末を探して、次にその週末に行ける日帰り先を3つ調べて、最後に一つを選んで持ち物リストを作って。順番どおりに、前の答えを渡しながら。 まず子どもの学校のプリントの写真を読んで提出物を書き出して、次に締め切り順に並べ替えて、最後にいちばん近い一件を今日のうちにやる形でひとことにして。 まずこの製品のレビューをざっと読んで良い点と悪い点を分けて、次にそれを表にして、最後に私が買うべきかどうかを一行で。②までできたら一度見せて。 (医療者向け・ダミーデータ前提)まず私が書いた勉強用のメモを読んで論点を書き出して、次にそれを重要そうな順に並べ替えて、最後にいちばん上の論点だけ調べる問いの形にして。患者情報は含めず、メモの文だけを対象にします。

ごろつまずき集
  • 症状: 2番目の作業で相棒が固まる、または的外れなことをする。原因: 前の答えを渡す指示が抜けていた。一手: 「前の結果を次に渡して」の一言を足して頼み直す。
  • 症状: 途中まではよいのに、最後だけずれる。原因: 手順が長すぎて後ろで道を見失った。一手: 3歩まで縮めるか、「②までできたら一度見せて」で区切る。
  • 症状: 順番どおりに動いてくれない。原因: 番号や「まず・次に」の合図がなく、全部を並列に受け取った。一手: 番号か矢印で順番を目に見える形にして渡す。
  • 症状: 最後に成果物がバラバラに返る。原因: 「一枚にまとめて」を言い忘れた。一手: 「最後は一つの表(または一枚のメモ)にして」と着地を指定する。
あせらず、ゴロゴロ。
読んだ