7章 二刀流編
7-4

二匹に、同じことを頼んで見比べる

AIに勝たなくていい
この話を読むと

「この作業はこっちの子」という使い分けの勘が、遊びながら育ちます。

「使い分け」なんて、通の人がやることに聞こえますよね。でも、いちばん確実な使い分けの覚え方は、理屈ではなく「二匹に同じことを頼んで、返事を並べて眺める」という、ただの遊びです。

ごろは、二匹の得意が違うらしい、とうすうす感じていました。でも、どっちがどう違うのかは、言葉にできません。そこでごろは、いちばん手っ取り早い方法を選びます。同じお願いを、両方に投げて、返事を並べてみる。

一匹目は、要点をきちんと取捨選択して、意味の通ったまとめを返してきました。方向づけが上手なのです。二匹目は、機械的だけれど手早く、そつのないまとめを返してきました。速いのです。並べてみて、ごろははじめて、二匹の得意が自分の目で見えました。

ここでごろは、ちょっと欲張って失敗します。せっかく二つ良い答えがあるのだから、と、両方をまるごと合体させてしまったのです。すると、かえって長くごちゃごちゃした要約ができあがりました。ごろは頭をかいて気づきます。いいとこ取りは、混ぜることじゃなくて、選ぶことなんだ。ごろは合体をやめて、必要な数行だけを残しました。

二枚の返事を見比べるごろの頭上に、考える島と手を動かす島の地図が浮かぶ

選ばなきゃいけないのかな、とごろは二枚の紙を交互に見くらべます。でも、どちらを捨てる気にもなれません。こっちは考えるのが得意、こっちは手が速い。それぞれの島に住んでもらうだけ。勝ち負けじゃない、とごろはようやく気づきます。

勝ち負けをつける必要は、ありません。片方は方向づけが上手、片方は淡々と数をこなすのが上手、というだけ。合言葉のとおり、AIに勝たなくていい。二匹に乗り比べて、乗り心地の良いほうへ、そのつど乗ればいい。一度この地図ができれば、次からは考える仕事は一匹目、手数のいる仕事は二匹目、と迷わず振れます。

開きのクイズ

同じお願いを、一匹目と二匹目の両方に投げてみました。返ってきた二つの答えを見て、いちばん賢い使い方はどっち?

  • A: どっちが「正解」か決めて、負けたほうのAIはもう使わない
  • B: 二つを見比べて、良いところをいいとこ取りする。次からは、それぞれの得意な役に回す
実演

ごろが、同じお願いを二匹に投げます。「この長いメモを、3行に要約して」。

一匹目は、意味の通った3行を返しました。二匹目は、手早くそつのない3行を返しました。ごろは二つを並べて、なるほど、まとめ方の判断は一匹目、量をさばくのは二匹目だな、と、頭のなかの地図に書き込みます。理屈ではなく、遊びで覚えました。

ごろはじめの一歩
  • どこで: 次に要約や下書きを頼むとき、一匹目だけでなく二匹目にも同じお願いを出してみる
  • どうやって: 二匹目を持っていなくても見比べはできる。いつものアプリで「新しい会話」(左上や「+」の印)をもう一つ開き、同じお願いを両方に投げて、返ってきた二つを上下に並べて読む。違いを一言メモする(「こっちは丁寧」「こっちは速い」で十分)
  • きっかけ: 「どっちに頼めばいいか迷う」と感じた作業こそ、見比べ遊びの出番
ごろはじめの一歩

あせらず、ゴロゴロ。使い分けは、暗記するものではありません。二匹に乗り比べているうちに、いつのまにか体が覚えています。

実録・やってみた

ごろの手元に、町内会だよりが一枚あります。清掃、夏祭り、防災倉庫と、話題が三つ詰まった長めの文章。これを3行に要約したいのですが、どちらの相棒に頼むと良いのか、まだ分かりません。そこで、同じお願いを両方に投げて、返事を並べてみることにしました。まず、元の長さを見ておきます。

$ cat mikurabe_74/町内会だより.txt
今月の町内会からのお知らせです。まず、来週の日曜日に公園の清掃活動が
あります。朝9時に東屋前に集合してください。(…夏祭りの実行委員募集、
防災倉庫の点検と続いて、全部で5行…)

同じお願いを、二匹に出します。

ごろ
ごろが打った文(一匹目にも二匹目にも、同じ文を)この長いメモを、3行に要約して。
相棒
相棒一匹目の返答・来週日曜9時から公園清掃(雨なら翌週、道具は用意あり)/・夏祭りの実行委員を募集中(7月開始・月2回・会長へ連絡)/・今月末に防災倉庫の点検(倉庫前の駐車は控える)
相棒
相棒二匹目の返答・公園の清掃活動が来週日曜の朝9時にある/・夏祭りの実行委員を募集している/・防災倉庫の点検を今月末に行う

画面で見えること二つの3行が上下に並ぶ。一匹目は括弧で細かい条件まで拾い、二匹目はすっきり短い。

並べてみて、得意の違いが目で見えました。一匹目は「雨なら翌週」「駐車は控える」まで束ねる方向づけが上手。二匹目は、余計を落として手早くまとめるのが上手。ここでごろは、ちょっと欲張って失敗します。

ごろ
ごろが打った文せっかく二つ良いから、両方まるごと合体させて。
相棒
相棒の返答両方を結合しました。ただ、同じ内容が二度ずつ出て、6行の長い要約になっています。(重複した6行を表示)

画面で見えることいいとこ取りのはずが、かえって長くごちゃごちゃした要約になっている。

ごろは頭をかいて、合体をやめました。いいとこ取りは、混ぜることではなく、選ぶこと。一匹目の丁寧さを土台に、二匹目の短い言い回しを一部だけ借りて、必要な3行に整えます。

$ cat mikurabe_74/要約_いいとこ取り.txt
・来週日曜9時から公園清掃(雨なら翌週、道具は用意あり)
・夏祭りの実行委員を募集中(7月開始・月2回)
・今月末に防災倉庫の点検(倉庫前の駐車は控える)

これで、頭のなかに小さな地図ができました。まとめ方の判断は一匹目、量を手早くさばくのは二匹目。勝ち負けをつけず、得意な島に住んでもらうだけです。この日はこう返ってきました。どちらがどこまで細かく拾うかは、頼むたびに少し揺れます。

手順
  1. 要約したい実物と、答えの形を決める

    こうした方がいい

    「3行で」「一言で」と、答えの形をそろえておくと差が見える

    ごろはこうしてみた

    町内会だよりを「3行に要約」と形を決めて頼んだ。

  2. まったく同じお願いを、両方に投げる

    こうした方がいい

    一字一句そろえる。お願いが違うと、得意の差でなく指示の差になる

    ごろはこうしてみた

    一匹目にも二匹目にも、同じ「3行に要約して」を出した。

  3. 二つの返事を上下に並べて読む

    こうした方がいい

    どちらが正解かでなく「どこが違うか」を一言メモする

    ごろはこうしてみた

    「一匹目は条件まで拾う」「二匹目は短い」とメモした。

  4. 合体させず、必要なところだけ選んで残す

    こうした方がいい

    混ぜると重複して長くなる。土台を一つ決めて、他はつまむ

    ごろはこうしてみた

    一度は合体して6行に膨らんだので、やめて3行に選び直した。

  5. 気づいた得意を、頭の地図に書き込む

    こうした方がいい

    地図は固定せず、たまに乗り比べて描き直す

    ごろはこうしてみた

    「判断は一匹目・量は二匹目」と覚え、次の振り分けに使った。

うまくいったかの確かめ方

二つの返事の違いを、自分の言葉で一言で言えれば、見比べは成功です。いいとこ取りは、行が増えていないか(混ぜて長くなっていないか)を見れば分かります。増えていたら、選び直すサインです。

作った本人に、レビューさせない

見比べる使い方には、もう一つ顔があります。「作る役」と「直す役」を分ける、という使い方です。

>

ごろはある日、書いた文章を一匹目に「おかしいところを教えて」と頼みました。一匹目はこう返してきました。「とてもよくまとまっています。強いて言えば……」。強いて言えば、です。自分が書いたものを、自分で粗探しするのは、たいていどんな相棒でも難しい。褒めるほうへ、流れていきます。

そこでごろは、新しい会話を別に開いて、二匹目に頼んでみます。「良いところは要りません。直すべき場所だけ、全部挙げてください」。

二匹目は、一匹目が見逃した揺らぎや言い回しの重複を、素直に出してきました。事情を知らないぶん、遠慮もない。作った本人(同じ会話の相棒)は、自分の仕事に甘くなりがちです。粗探しは、別の一匹に任せる。それだけで、見つからなかった直しが出てきます。

二刀流でなくても、同じことができます。今の相棒との会話が長くなってきたら、新しい会話を開いて「直すべき所だけ挙げて」と同じ文章を渡してみる。それだけで、一匹でも粗探し係を呼べます。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。二匹の答えに勝ち負けをつける必要はありません。

得意が違うだけ。見比べると、その違いが自分の目で見えてきます。見えたら、次からは得意な役に回せばいいのです。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

この長いメモを、3行に要約してください。(同じお願いを、一匹目と二匹目の両方に出して見比べる)

(粗探し係への頼み方・その一)この文章を読んでください。良いところは要りません。直すべき場所だけ、全部挙げてください。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

なぜ、二匹の得意は違うのでしょうか。同じ「AI」とひとくくりにされても、育ち方や中身の作りが少しずつ違うので、返ってくる答えの手ざわりも変わってきます。片方は、要点を選び取って方向づけをするのが上手。もう片方は、細かいことを気にせず、手早く数をこなすのが上手。どちらが偉いという話ではなく、向きが違うだけです。この違いは、説明を読んで覚えるより、同じお願いを両方に投げて、返事を並べて眺めるほうが、ずっと早く腹に落ちます。自分の目で見た違いは、忘れません。ここでごろがやりかけた失敗が、いいヒントになります。二つとも良いからと、まるごと合体させたら、かえって長くごちゃごちゃになった。いいとこ取りとは、混ぜることではなく、選ぶことでした。二つの答えは、素材だと思ってください。並べて、必要なところだけつまむ。それを何度か繰り返すうちに、「この作業はこっちの子」という地図が、頭のなかにできてきます。地図ができれば、もう迷いません。考える仕事は方向づけの上手なほうへ、手数のいる仕事は速いほうへ、そのつど気楽に振ればいいのです。ちなみに、得意は将来変わることがあります。だから地図も、ときどき描き直すくらいの気持ちで、ゆるく持っておくのがよさそうです。

例をもっと

この長いメモを、3行に要約してください。(同じお願いを、一匹目と二匹目の両方に出して見比べる)

このニュース記事を、家族に一言で説明するとしたら? 両方に頼んで、分かりやすいほうを選ぶ。

この旅行プランの下書きに、抜けている観点を挙げてください。二匹の指摘を並べて、重なった分と、片方だけの分に分ける。

この趣味のレシピ、材料を半分にしたときの分量を計算して。両方に頼んで、数字が合っているほうを採用する。

(医療者向け・ダミーデータ前提)この学習用ダミー症例の要点を、3行でまとめてください。両方の要約を並べて、抜け落ちのないほうを土台にする。実データは使いません。

(粗探し係への頼み方・その一)この文章を読んでください。良いところは要りません。直すべき場所だけ、全部挙げてください。

(粗探し係への頼み方・その二)新しい会話として聞きます。この文章に、言い回しの揺らぎ、重複、読みにくい箇所があれば、指摘してください。褒め言葉は省いて構いません。

ごろつまずき集
  • 症状: 二つの答えを合体させたら、かえって読みにくくなった。原因: 混ぜてしまった。一手: 合体をやめ、必要な数行だけを選んで残す。いいとこ取りは「選ぶこと」。
  • 症状: 見比べても、違いがよく分からない。原因: お願いが漠然としていて、差が出にくい。一手: 「3行で」「一言で」と、答えの形を指定してから比べる。
  • 症状: どっちが正解か決めたくなって、疲れる。原因: 勝ち負けで見ている。一手: 「得意が違うだけ」と割り切り、島を二つ描くつもりで眺める。
  • 症状: 前は速かったほうが、今日は遅く感じる。原因: 得意はときどき変わります。一手: 地図を固定せず、たまに乗り比べて描き直す。
あせらず、ゴロゴロ。
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