スライドは、しゃべる順に。飾りより、順番
一枚に伝えることは一つだけ。
発表が終わったあと、聞き手の感想で多いのは、次のどっちだと思いますか。
- A. 「スライドがきれいだった」
- B. 「何が言いたかったのか、よく分からなかった」
答えは、この話のいちばん下にあります。
スライドを飾りから作るのをやめて、「一枚一メッセージ」で、しゃべる順にそのまま並べられるようになります。
前の話で、話の骨組みはできました。次に多くの人がやってしまうのが、いきなりきれいなスライドを作ろうとして、色やフォントやレイアウトで丸一日溶かすことです。飾りに凝るほど、聞き手が迷子になっていく。これは、ふしぎな話ですが、本当のことです。ごろも、はじめての登壇で、装飾のテンプレートを二時間いじって、中身が一文字も進まない、ということをやりました。

大事なのは、二つだけです。ひとつ、一枚に伝えることは一つだけ。二つ以上を一枚に詰めると、聞き手はどちらを聞けばいいか分からなくなります。話し手も、その一枚で何を言うか迷います。ふたつ、スライドは、しゃべる順にそのまま並べる。前の話で作った骨組みの順番を、そのまま一枚ずつのスライドにするのです。骨組みが目次で、スライドはその一項目ずつ、という関係です。
このとき、スライドを、いつものチャットと相性のいい形で作っておくと、あとの直しが楽です。この本の著者は、専用のスライドアプリを増やすかわりに、文字で書けるスライド(HTMLや、Marpと呼ばれる形)で組んでいます。見た目のかたまりでなく、文字の並びとして持っておくと、一枚を動かしたい、言葉を変えたい、というとき、その場で相棒に頼めるからです。詳しい作り方は、少し込み入るので、オンライン追補のQRに置いてあります。ここでは、「一枚一メッセージで、話す順に」という骨だけ、覚えて帰ってください。
色やフォントの飾りつけは、いちばん最後です。順番と中身が固まる前に飾ると、一枚動かすたびに飾りがずれて、全部やり直しになります。飾りは、前日でも間に合います。
ごろは、こう頼みました。
「前に作った話の骨組みを、スライドの並びにしてください。一枚に伝えることは一つだけ。しゃべる順にそのまま並べて。各枚に、見出しと、その一枚で私が口で言う一言。色や飾りは、まだいりません。」
見出しだけのスライドが、話す順にずらりと並びました。ごろは満足して、色を選びにいこうとします。ところが、四枚目のスライドに、「便利な例」と「注意すること」の二つが同居しているのを見つけました。「ここ、二つ入ってる」。ごろは、その一枚を二枚に割り直してから、先へ進みます。
一枚に一つ、しゃべる順に。それだけで、飾りがなくても、もう分かりやすい。ごろは、飾りに逃げたくなる気持ちを、ぐっとこらえました。
はじめの一歩- どこで: まずはチャット画面で、スライドの並びを言葉で作ります。見た目に落とす道具は、あとから。
- どうやって: 前の話の骨組みを渡して、「一枚一メッセージで、話す順に並べて」と頼む。飾りはまだ頼まない。
- きっかけ: 骨組みができた直後に、ひと続きで。作る、並べる、を一回の流れにすると、助走が要りません。
はじめの一歩手順(全3ステップ):
- 話したいテーマのメモを箇条書きで5ブロック手書きする(完全ダミーでよい)。
claude -p "このメモから5枚のHTMLスライド(1ファイル・縦5枚・シンプルで大きい文字)を作って"と発表メモを渡す。生成ファイルをブラウザで開き、一枚に一メッセージになっているか確認する。- 1枚だけ「図解っぽく」と指定して直し依頼を1往復する。
所要目安:15分〜30分
到達チェック:
>- できたら○ メモからスライドHTMLが1コマンドで生成できた(実測41秒を参照)
- できたら○ 1往復の直し依頼で、指定した枚の表現が変わった
先生の赤ペン:文字で書くスライド(M14)
【見るポイント 1】claude -p はstdoutではなくファイルに書く。
slides.html を作成しました。保存先: M14_文字で書くスライド/slides.htmlという行が出たとき、stdoutには説明文だけが入っている。> slides.htmlでリダイレクトしても中身は届かない。【見るポイント 2】直し依頼には「現在のHTML」を埋め込む必要がある。
claude -pはステートレスで前の会話を覚えていない。今回は現在の3枚目HTMLブロックをプロンプトに貼り込んで渡した。「直して」だけでは何を直すか分からない。【見るポイント 3】「箇条書き→図解」の変換は1往復で完了する。「3枚目を図解っぽく」という曖昧な1文から、左右比較カード+矢印+色分けまで自動生成された(実測33秒)。ただしCSSクラス名が既存と衝突するプロジェクトでは上書きが起きる。新規ファイルなら問題ない。
あせらず、ゴロゴロ。
前の話で、話の骨組みは六つの流れにまとまっていました。ごろの手元には、それがそのまま残っています。まだ、スライドの形にはなっていません。
話の骨組み(前の話の続き)
1 つかみ 私も最初はこわかった
2 問い AIって、こわい?
3 答え 実は、話しかけるだけ
4 例 いちばん身近な例をひとつ
5 一歩 きょう帰ったら、これを一回
6 まとめ こわがらず、一回さわってみて1 見出し『私も、こわかった』|一言『最初は黒い画面を想像してました』 2 見出し『AIって、こわい?』|一言『みなさんも、そう思っていませんか』 3 見出し『実は、話しかけるだけ』|一言『打つ、待つ、返る。それだけです』 4 見出し『たとえば、晩ごはん』|一言『冷蔵庫の中身を打つと、献立が返ってきます』/『使いすぎには気をつけて、も一言』 5 見出し『きょう帰ったら』|一言『ひとつだけ、話しかけてみてください』 6 見出し『こわがらず、一回』|一言『それが、はじめの一歩です』 」
画面で見えること六枚が話す順に並びました。ただ、四枚目の一言が「/」で二つに割れています。
ごろは満足して、さっそく色を選びにいこうとします。でも、四枚目で引っかかりました。ここには「晩ごはんの例」と「使いすぎ注意」の、二つが入っています。
4 見出し『たとえば、晩ごはん』|一言『冷蔵庫の中身を打つと、献立が返ってきます』 5 見出し『ひとつだけ、注意』|一言『便利だから、使いすぎには気をつけて』 (以降は一枚ずつ後ろへ。全7枚)」
画面で見えること四枚目が二枚になり、全体が七枚に伸びました。色もフォントも、まだどこにもありません。
仕上がったスライドの並びは、こうです。
1 私も、こわかった
2 AIって、こわい?
3 実は、話しかけるだけ
4 たとえば、晩ごはん
5 ひとつだけ、注意
6 きょう帰ったら
7 こわがらず、一回
※各枚に口で言う一言つき。色・飾りはまだ無し一枚に伝えることは一つだけ。 ごろは、二つ入った四枚目を、二枚に割り直しました。
この日はこう返ってきました。見出しの言葉や、割り方の刻みは、頼むたびに毎回すこし違います。
前の話の骨組みを、そのまま渡す
こうした方がいい作った直後、ひと続きでやると助走が要らない
ごろはこうしてみた骨組みを作ったその画面で、続けてスライドの並びを頼んだ。
「一枚一メッセージ・話す順」を先に指定する
こうした方がいいこの二つを言わないと、詰め込みや並べ替えが起きる
ごろはこうしてみた「一枚に一つ、しゃべる順に」と先に区切った。
各枚に「口で言う一言」を添えてもらう
こうした方がいい当日しゃべる言葉まで一緒に出すと、本番の自分が助かる
ごろはこうしてみた見出しの下に一言をつけてもらった。
二つ入っている枚を探して、割る
こうした方がいい一枚を二枚にするのは、飾る前なら軽い
ごろはこうしてみた四枚目の「例」と「注意」を二枚に割った。
飾りは、順番と中身が固まってから
こうした方がいい色・フォントは最後。先に飾ると動かすたびにずれる
ごろはこうしてみた割り終わるまで、色は一切選ばなかった。
見た目に落とす道具は、あとから選ぶ
こうした方がいいスライドの道具や作り方は追補のQRへ。まず言葉で固める
ごろはこうしてみた並びが固まってから、見た目の清書に移った。
スライドが、話す順にそのまま並んでいて、そのどの一枚も「伝えることが一つ」になっていれば成功です。二つ入った枚を一枚でも見つけて割れていれば、詰め込みを見抜く目が働いています。
答えタップして答え合わせ

B。 きれいさとは別のところで、スライドは分かりにくくなります。
一枚に二つ以上を詰めたとき、もしくは話す順番とスライドの順番がズレているとき。きれいなスライドでも、一枚に三つ詰まっていれば、聞き手は迷います。逆に、飾りがなくても、一枚一つで順番どおりなら、すっと伝わります。飾りはあとから足せます。でも、順番と「一枚一つ」だけは、最初から決めておかないと、きれいに飾っても伝わりません。
増補もっと知りたい人へ (3)
「一枚一メッセージ」は、見栄えのルールではなく、聞き手の頭の仕組みに合わせたルールです。人は、一枚のスライドを見た瞬間、そこに何が書いてあるかを一度に読み取ろうとします。一つなら、すっと入る。二つ以上あると、どちらを先に読むか、話し手の声とどちらを合わせるか、で一瞬まよいます。この一瞬の迷いが積み重なると、聞き手はだんだん置いていかれます。飾りが多いスライドが分かりにくいのも、同じ理由です。矢印や枠や色は、それ自体が「情報」として読み取られるので、一枚あたりの読み取る量が増える。飾りは、伝えるためでなく、伝わりにくくするために働いてしまうことがあるのです。
「話す順に並べる」のも、地味ですが効きます。骨組みの順番と、スライドの順番と、話す言葉の順番。この三つがずれていると、話し手は「次、何のスライドだっけ」と手元を探し、聞き手は「今どこの話?」と迷います。三つを同じ順に揃えておくと、話しながらスライドをめくるだけで、自然に話が進みます。だから、スライドを骨組みから、しゃべる順にそのまま起こすのが、いちばん楽なのです。そして、この並びを、相棒とすぐ直せる形で持っておくと、リハーサルで「ここの順番、入れ替えたい」となったとき、その場で頼めます。専用のアプリを一つ増やすより、いつもの相棒と地続きにしておくほうが、めんどくさがりには続きます。
この話の骨組みを、スライドの並びにしてください。一枚に一つだけ、しゃべる順に。各枚に、口で言う一言も。全部で10枚くらい、色や飾りはまだいりません。
発表の途中で、実際にやってみせる場面を入れたいです。「ここで実演」というスライドを一枚はさんで、その前後を、実演が引き立つように並べてください。飾りはまだ不要です。
スライドが今15枚あって、15分に収まりません。一枚一メッセージを守りながら、削れる枚を提案してください。芯の「伝えたい一つ」から遠いものから。
この並びを、聞き手を飽きさせないように見直してください。固い話が続いていたら、あいだに軽い一枚を入れる提案を。順番だけで、色はまだいりません。
(医療者向け・ダミーデータ前提)この骨組みを、スライドの並びに。一枚一メッセージで、しゃべる順に。数値や症例はすべて仮のダミーで、私が正しい内容に差し替えます。
つまずき集- 症状: 一枚に、話が二つ以上詰まっている。原因: 「一枚一メッセージ」を指定していない。一手: 「一枚に伝えることは一つ」と先に区切ります。ごろが四枚目を割り直したのが、これです。
- 症状: 飾りに凝って、丸一日が溶けた。原因: 順番より先に見た目から入った。一手: 色もフォントも、順番と中身が固まるまで触りません。飾りは前日で間に合います。
- 症状: 話しながら「次どのスライド」と迷う。原因: スライドの順と話す順がずれている。一手: しゃべる順に、そのまま並べ直します。三つの順を揃えると、めくるだけで進みます。
- 症状: スライドの道具の操作で手が止まる。原因: いきなり見た目の道具から始めている。一手: まず言葉で並びを固めます。道具の細かいやり方は、追補のQRに逃がしてあります。
