この本の登場猫「ごろ」のこと
ごろの居場所が、あなたの現在地
最後に、この本をいっしょに歩く一匹を、ちゃんと紹介させてください。
白い猫の、ごろです。
ごろは、物知りな案内役ではありません。えらい先生でもありません。あなたと同じ、これから始める側の猫です。だから、同じところでつまずきます。調子に乗って丸投げして、そっけない返事に肩を落とす。むずかしい言葉に一瞬フリーズする。全部いっぺんにやろうとして転ぶ。この本のごろは、よく失敗します。
でも、それがごろの役目なのです。ごろが先に一歩を踏み出して、先に転んでみせる。そして、先に「できた」を見せる。だから、あなたは安心してあとを追えます。うまくいかなくても大丈夫、という空気を、ごろが体をはって運びます。笑ってしまう場面もあると思います。笑ってください。笑いながらのほうが、覚えます。

その影絵は、ごろがこれから通る道です。ごろは、部が進むごとに、少しずつ動きます。布団から顔を出し、体を起こし、机に向かい、やがてモニターを悠々と眺めるようになります。そして最後は、また布団に戻ってきます。
同じ布団に戻るのに、何かが決定的にちがう。それが、この本の約束です。目次を開いたとき、ごろがいまどんな姿勢でいるかを見れば、あなたがどこまで来たかがわかります。ごろの居場所と、あなたの変化が、ずっと重なっていきます。
ごろはまだ、布団の中にいます。何ひとつ達人ではありません。ただ、「関係ないかな」が「話しかけるだけでいいの?」に変わりました。それだけで、十分です。ここからごろは、あなたのかわりに、先に一歩を踏み出します。
称号「ただのゴロニャン」。次の章で、この猫は、しゃべりはじめます。
あせらず、ゴロゴロ。
>序章の最後に、ごろが「遊びから入る」を一回だけ、先にやってみせます。ごろの手元にあるのは、相棒の画面と、ちょっとした好奇心だけ。まだ何も作れる気はしていません。
ごろは、いちばん軽い頼みごとを選びました。
画面で見えることプレビューに「こんにちは」と大きく表示された。ボタンも何もない、ただの1枚。
ごろは、一瞬「地味だな」と思いました。ここで丸投げの癖が出ます。
画面で見えること「いい感じ」だけでは相手も迷い、聞き返しつきで一案出してきた。
「なんかいい感じ」は、向きが抜けている合図でした。0-2で練習した通りです。ごろは向きを一つ決めて言い直します。
画面で見えることうすい水色の背景に足あとが散り、中央にあいさつが出た。ごろの好きな一枚に寄った。
ごろが作ったのは、これだけです。
できたもの(プレビューの1枚)
- うすい水色の背景
- 画面のすみに猫の足あと
- 中央に「ごろへようこそ」
- ボタンも保存機能もなし、ただ見て楽しむ1枚登録も、むずかしい言葉も、黒い画面も出てきませんでした。遊びから入ると、身構える前に手が動いていました。 この日はこう返ってきました。頼む言い方や時期で、出てくる1枚は毎回すこし違います。ここで大事なのは、うまく作ることでなく、一回作って「できた」を味わったことのほうです。
いちばん軽い、遊びの頼みごとを一つ選ぶ
こうした方がいい実用でなく「見て楽しむ」から入る、失敗しても痛くない
ごろはこうしてみた「あいさつのページを1枚」を選んだ
まず雑に頼んで、返ってきた1枚を見る
こうした方がいい最初から凝らない、たたき台を出させる
ごろはこうしてみた「こんにちは」だけの地味な1枚が出た
直したいときは「向き」を足して言い直す
こうした方がいい「いい感じにして」は向きが抜けて聞き返される
ごろはこうしてみた「なんかいい感じに」で聞き返され、「白い猫・水色・足あと」と向きを足した
気に入ったら、そこで一回とめる
こうした方がいい完成を欲張らない、一枚できたら十分
ごろはこうしてみた好きな一枚に寄ったところで満足して手をとめた
プレビューに、自分が頼んだ通りの1枚が表示されていれば成功です。地味でも、ボタンがなくても、画面に何か出て「できた」と思えたら、それが遊びの入口を通った証拠です。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
簡単なあいさつのページを1枚作ってみて(見て楽しむところから)
増補もっと知りたい人へ (4)
ごろを「教える先生」でなく「あなたの分身」にしたのには、理由があります。先生役の案内人は、たいてい先回りして正解を出してしまいます。すると読者は「自分にはあの人みたいにできない」と、かえって遠ざかります。この本のごろは逆で、あなたと同じところでつまずき、同じところで「できた」と喜びます。先に転んでみせるから、あなたは安心して同じ道を歩けます。
ごろの姿勢が部ごとに変わっていくのにも、意味があります。この本は、いきなり難しいことをやらせません。ごろはまず、返ってきた文字を眺めるだけの「しゃべる」段から始めて、相棒を持ち、作業を任せ、少しずつ「仕組みで回す」ほうへ進みます。世の中では、この段階を細かく分けて説明することもありますが、この本はごろの姿勢一つで表します。布団から顔を出したごろは「しゃべる」段、机に向かうごろは「任せる」段、というふうに。だから目次を開いて、ごろが今どんな格好でいるかを見れば、自分がどの段まで来たかがなんとなく分かります。称号も、その歩みに合わせて変わっていきます。ごろの居場所が、あなたの現在地です。急いで先の段へ行かなくて大丈夫です。ごろと同じ速さで進めば十分です。
ごろは、まじめに勉強してから進むタイプではありません。遊びから入ります。あなたも、最初はこれくらい気楽な頼みごとで十分です。
簡単なあいさつのページを1枚作ってみて(見て楽しむところから) よく使う計算を、入れたら答えが出る形にして(ちょっと便利にする) ひまだから、単純なゲームを作ってみて(遊びのついでに) 毎週やっている手間を、少し楽にする方法を一緒に考えて(自分の自動化へ) この予定表を見やすく並べ直して(仕事の小さな片づけ)
遊び、ちょっと便利、そして自分の手間を減らす。この順で進むと、むずかしい言葉に身構える前に、手が動いています。「そんなノリでいいのか、それなら自分にもできる」。この「ノリでゆるくやる感じ」には、あとの章で名前もつきますが、いまは覚えなくて大丈夫です。ごろが道の途中でそう気づくのは、ずっと先の話ですが、入口はこのくらい軽くていいのです。
つまずき集- 症状: ごろが失敗する場面を読むと、「自分はもっとできないのでは」と不安になる。原因: 失敗を減点だと感じている。一手: ごろの失敗は、あなたが同じ穴を避けるための下見です。笑って通り過ぎてください。
- 症状: 早く「デスクに向かうごろ」まで行きたくて焦る。原因: 先の段が偉く見える。一手: どの段のごろにも、その段なりの気持ちよさがあります。布団の中のごろも、ちゃんと得をしています。順番に進んで大丈夫です。
- 症状: ごろに感情移入できず、キャラクターが余計に感じる。原因: 説明だけを追いたいタイプ。一手: ごろの絵は飛ばして、はじめの一歩だけ読んでも成立します。伴走が要る人のための道連れなので、要らなければ置いていってかまいません。
序章は、講座なら導入コマ1コマ(30〜45分)にまとまります。0-0〜0-1で「こわくない」を渡し、0-2で考え方、0-3で全員が一回さわる実習、0-4でごろとの握手、という流れです。M3連載なら、この5節はそのまま導入回1本+各節を短尺に割って予告編にも使えます。日経メディカルなら、コラム1本分の「AIとの向き合い方」(勝つでなく乗る/向きは自分・手はAI)に絞れます。ワークショップなら、0-3の一回さわると0-2の向き・作業の切り分けを核に、正味60分(説明20分+実習30分+共有10分)で回せる見立てです。
