
あせらず、ゴロゴロ。章トビラ

任せる者から、育てる者へ。 ごろはついに、自分の相棒を「うちの子」と呼びはじめました。
前の部で、ごろは写真の山も書類の箱も相棒に任せ、「うっかり上書きしても戻せる」を覚えました。任せるのが、こわくなくなったのです。ところが、任せられるようになると、今度は別のことが気になりだしました。ごろは、ある夜ふと気づきます。相棒に向かって、また同じことを言っている。「です・ますで」「短くして」「むずかしい言葉は使わないで」。毎晩、毎晩、おなじ前置きです。
打ちながら、ちょっと脱力しました。これ、昨日も言ったな。おとといも言ったな。相棒はちゃんとやってくれるのですが、ごろのほうが毎回、自己紹介からやり直しているのです。まるで、毎朝おなじ人に「はじめまして」と名刺を渡しているみたいでした。

めんどくさがりのごろにとって、これは見過ごせない話です。ここまで来て、ごろの中の名人が静かに目を覚まします。言わずに済むなら、言わずに済ませたい。
そこでごろは、一枚のメモを書いて、机の壁に貼りました。自分がどんな猫で、どんな言葉づかいが好きで、何をされたくないか。たった数行です。すると次の朝から、相棒はそのメモを先に読んでから仕事を始めるようになりました。前置きが、まるごと消えたのです。

道具は、使うだけのものではありませんでした。自分に合わせて、育てられる。ごろは、はじめて相棒のことを「うちの子」と思いました。

この部でやるのは、ぜんぶそういう話です。自分専用のドリルを作り、かんたんな道具を作ってもらい、できたものを直し、置き手紙で覚えさせ、得意技を仕込み、最後は合言葉ひとつで呼ぶ。むずかしそうな言葉が並びますが、中身はどれも素朴です。第4部は、この本のいちばん大事な合言葉、「方向を決めるのは自分、手を動かすのはAI」が、いちばん効くところでもあります。あせらず、ゴロゴロ。