想定問答とリハーサル。本番の前に、こわい質問を先に浴びる
こわい質問は、本番でなく家で出会う。
発表の本番で、いちばん心臓に悪いのは、次のどっちでしょう。
- A. 予想していた質問が来ること
- B. まったく考えていなかった質問が来ること
答えは、この話のいちばん下にあります。
本番でどんな質問が来るかを、相棒に聴衆役をやらせて先に浴びておき、答えの用意と、時間の見積もりまで、家で済ませられるようになります。
本番がこわいのは、話す内容そのものより、「予想外」がこわいのです。想定していなかった質問。思ったより早く終わってしまう時間。言おうと思っていたのに、飛ばしてしまった大事な一言。これらは全部、本番で初めて出会うから、こわい。だったら、家で先に出会っておけばいい。ごろも、はじめての登壇の前夜、この「先に浴びる」で、ずいぶん救われました。

やることは、三つです。ひとつ、相棒に聴衆の役をやらせて、質問を出させます。「AIをまだ触っていない十人の聴衆になったつもりで、この発表に質問を五つ」と頼むと、自分では思いつかない角度の質問が返ってきます。ふたつ、その質問に、一度自分で答えてみます。うまく答えられなかった質問だけ、答えの下書きを相棒と用意しておきます。みっつ、通しで一度、時間を測ります。声に出して読んで、何分かかるか。長ければ削り、短ければ足す場所を決めます。
この三つを、本番の前にやっておくだけで、当日の「予想外」がぐっと減ります。予想外がゼロにはなりません。でも、ゼロにする必要もありません。八割を家で潰しておけば、残りの二割は、その場で「いい質問ですね、少し考えさせてください」と言えばいい。全部に完璧に答える必要は、ないのです。
そして、リハーサルの主役は、あなたです。相棒は質問を出し、時間の見積もりを手伝いますが、実際に声に出して読むのは、あなた自身です。口が回らない場所、言いにくい言葉は、読んでみて初めて分かります。ここは、相棒に代わってもらえません。
ごろは、こう頼みました。
「私の発表のスライドを下に貼ります。AIをまだ触っていない十人の聴衆になったつもりで、この発表に出そうな質問を5つ挙げてください。意地悪でなく、初心者が素朴に思う質問で。」
質問が、五つ返ってきました。ごろは、四つまではすらすら答えられました。ところが五つ目、「お金はかかるんですか?」で、言葉に詰まります。そういえば、料金の話は、スライドに入れていなかった。ごろは、この一問だけ、答えの下書きを相棒と用意しました。「最初は、お金をかけずに試せます」の一言を、手元のメモに足しておきます。
こわい質問は、本番でなく家で出会う。ごろは、当日の心臓が、少し軽くなったのを感じました。
はじめの一歩- どこで: チャット画面で、スライドや骨組みを貼って、聴衆役を頼みます。貼るのも「外に出す」のうちです。人の名前や、仕事で知り得たことが紙面に残っていないか、貼る前に一度だけ見てください。
- どうやって: 「〇〇な聴衆になったつもりで、質問を五つ」と役を指定して頼む。答えにくかった質問だけ、下書きを用意。
- きっかけ: 本番の前日か前々日に。当日の朝だと、直す時間がありません。
はじめの一歩あせらず、ゴロゴロ。
本番の二日前の夜。ごろは、七枚のスライドを一通り眺めて、なんとなく自信がありました。でも、いざ人の前で話すことを想像すると、質問が来たらどうしよう、という不安だけが残ります。そこで、こわい質問を、先に浴びておくことにしました。
手元にあるもの
・スライド7枚(前の話で作ったもの)
・なんとなくの自信
・「質問が来たらどうしよう」の不安- 『AIって、私の書いたことを勝手に覚えたりしないんですか?』
- 『パソコンが苦手でも、本当にできますか?』
- 『間違ったことを言われたら、どう見分けるんですか?』
- 『スマホでもできますか?』
- 『お金は、かかるんですか?』 」
画面で見えること五つの質問が並びました。どれも、意地悪ではなく、初心者が本当に思いそうなものです。
ごろは、一つずつ、声に出して答えてみます。一つ目は「大事なことは入れないようにすれば大丈夫」。二つ目は「話しかけるだけだから平気」。三つ目、四つ目も、なんとか答えられました。ところが、五つ目の「お金はかかるんですか?」で、口ごもります。料金の話は、スライドに一枚も入れていませんでした。
『まずは、お金をかけずに試せます。無料で始めて、もっと使いたくなったら、そのとき考えれば大丈夫です。今日は、無料の範囲で一回さわってみてください。』」
画面で見えること料金の質問への、短い答えが一つ用意されました。
そのあと、ごろは通しで一度、時間を測りました。
リハーサルの結果
・通しで声に出して読む → 12分(15分の枠に収まった。少し余裕あり)
・詰まった質問 → 「お金」の1つだけ(答えを用意済み)
・言い忘れそうな一言 → まとめの「一回さわってみて」(手元メモに大きく書いた)こわい質問は、本番でなく家で出会う。 ごろは、五つ浴びて、詰まった一つだけを潰しました。
この日はこう返ってきました。出てくる質問の角度も、答えの言い回しも、頼むたびに毎回すこし違います。
スライドか骨組みを貼って、聴衆役を頼む
こうした方がいい「どんな聴衆か」まで指定すると、質問が本番に近づく
ごろはこうしてみた「初心者10人になったつもりで」と役を指定した。
出てきた質問に、一度自分で答えてみる
こうした方がいい声に出して答える。詰まる質問が、そこで分かる
ごろはこうしてみた五つ声に出し、五つ目で口ごもった。
詰まった質問だけ、答えの下書きを用意する
こうした方がいい全部でなく、答えられなかったものだけ
ごろはこうしてみた「お金」の一問だけ、短い答えを用意した。
通しで一度、時間を測る
こうした方がいい頭の中でなく、声に出して測る。読む速さは、思うより遅い
ごろはこうしてみた12分だった。15分枠に少し余裕があった。
長ければ削る場所、短ければ足す場所を決める
こうした方がいい芯から遠い場所を削り、余裕は「間」に使う
ごろはこうしてみた余った3分は、実演をゆっくりやる時間にした。
言い忘れそうな一言を、手元メモに大きく書く
こうした方がいいいちばん伝えたい一つは、飛ばすと痛い
ごろはこうしてみた「一回さわってみて」を大きくメモした。
家で五つほど質問を浴びて、詰まった質問を一つでも潰せていれば成功です。通しで時間を測って、枠に対して長いか短いかが分かっていれば、本番の「予想外」は、ずいぶん減っています。
答えタップして答え合わせ

B。 予想していた質問は、こわくありません。
答えを用意してあるからです。こわいのは、考えてもいなかった質問です。だから、本番の前に、自分では思いつかない質問を相棒に出させて、先に浴びておきます。家で一度会っておけば、本番で同じ質問が来ても、それはもう「予想していた質問」に変わっています。
増補もっと知りたい人へ (3)
なぜ、家で質問を浴びておくと、本番が楽になるのでしょうか。本番でこわいのは、質問そのものより、「初めて会う質問に、その場で答えを組み立てる」という作業です。人前で、みんなが見ているなかで、ゼロから答えを考えるのは、家で一人で考えるより、何倍も難しい。ところが、家で一度その質問に会っておくと、本番で同じ質問が来ても、答えを「思い出す」だけで済みます。組み立てるのと、思い出すのは、難しさがまるで違います。相棒に聴衆役をやらせるのが効くのは、あなた一人では、自分の話の「穴」に気づけないからです。話し手は、自分が分かっていることの前提を飛ばしがちで、その飛ばした前提こそ、聞き手が質問したくなる場所なのです。
時間を測るのも、同じ「予想外を減らす」働きです。頭の中で「だいたい十五分ぶんかな」と思っていても、声に出すと、たいてい違います。速く読みすぎて余ることもあれば、間を取りすぎて足りないこともある。声に出して一度測ると、この誤差が見えます。そして、余った時間は、削るためでなく、間を取るために使えます。早口で詰め込むより、大事なところでひと呼吸おくほうが、伝わります。ただし、リハーサルで測れるのは、あくまで目安です。本番は、緊張で速くなったり、質問で延びたりします。だから、きっちり枠ぴったりに作るより、少し余裕を持たせておくほうが安全です。ごろが十二分に収めて、三分を「間」に回したのは、ちょうどいい配分でした。そして、この「声に出して読む」だけは、相棒が代わってはくれません。口が回らない場所は、あなたの口でしか見つからないからです。
このスライドを貼ります。私の話に懐疑的な聴衆になったつもりで、厳しめの質問を5つ。ただし意地悪でなく、真剣に疑問に思う角度で。答えにくいものを教えてほしいです。
この発表を、通しで声に出して読むと、だいたい何分かかりそうか見積もってください。長すぎるなら、芯から遠い場所を削る提案も。
発表の途中で言葉に詰まりそうな箇所を、事前に教えてください。専門用語や、説明が飛んでいそうな場所を、聞き手の目線で。
質問が来なかった場合の「こちらから投げかける問い」を、3つ用意してください。沈黙が続いたときに、場をほぐせる軽いものを。
(医療者向け・ダミーデータ前提)この勉強会の資料に、スタッフが質問しそうな点を5つ。数値や事例はすべて仮のダミーです。答えにくい質問だけ、私が下書きを用意します。
つまずき集- 症状: 出てくる質問が、当たりさわりなさすぎる。原因: 聴衆の像を指定していない。一手: 「初心者」「懐疑的な人」など、どんな聴衆かを指定します。役が具体的だと、質問も本番に近づきます。
- 症状: 全部の質問に、完璧な答えを用意しようとして、疲れる。原因: ゼロを目指している。一手: 詰まった質問だけ用意します。残りは本番で「少し考えさせてください」で大丈夫です。八割で十分です。
- 症状: 頭の中では時間内なのに、本番で足りない/余る。原因: 声に出して測っていない。一手: 一度、声に出して通します。黙読と音読では、速さがまるで違います。
- 症状: いちばん言いたい一言を、本番で飛ばした。原因: どこで言うか決めていない。一手: 芯の一言を、手元メモに大きく書いておきます。ごろが「一回さわってみて」を大きく書いたのが、これです。
