外の仕事の受け方。頼まれごとに、相棒と「受ける・断る・条件を変える」を考える
決めるのは自分、文を作るのは相棒。この二つを、混ぜないことです。
外から「発表してくれませんか」と頼まれたとき、相棒にいちばん手伝ってもらうといいのは、どっちでしょう。
- A. 断りの文を、代わりに送ってもらうこと
- B. 受けるか断るかを、一緒に考えてもらうこと
答えは、この話のいちばん下にあります。
外から来た頼まれごとに、相棒と一緒に「受ける・断る・条件を変える」を落ち着いて考えて、返事の下書きまで作れるようになります。
頼まれごとに困るのは、あなたが優柔不断だからではありません。多くの人がとっさに困るのは、「返事の内容」と「返事の文」を、いっぺんに考えようとするからです。受けるかどうかも決まっていないのに、角の立たない断り文を探し始めて、こんがらがる。まず決めることと、文を作ることを、分けていないのです。ごろも、はじめは、ここで固まりました。

考え方は、道の分かれ目に立ったときと同じです。分かれ道の前で大事なのは、急いで一本を選ぶことではなく、それぞれの道の先に何があるかを、先に眺めることです。頼まれごとも同じで、「受けたら、どうなる」「断ったら、どうなる」「条件を変えたら、どうなる」の三つを、まず並べて見ます。相棒は、この三つの道の先を、落ち着いて描くのが得意です。
やり方は、二段に分けます。まず、返事の文を作る前に、「受ける・断る・条件を変える、それぞれの良い点と気になる点を挙げて」と頼みます。ここではまだ、文は作りません。判断の材料を、机の上に並べるだけです。そのうえで、自分がどうしたいかを決めます。決めるのは、あなたです。相棒は、決めてくれません。三つの道を照らすところまでが、相棒の仕事です。
決まってから、はじめて返事の文を頼みます。「受けます」なら受ける文、「今回は見送ります」なら角の立たない断り文、「日程を変えてもらえるなら」なら条件をそえた文。ここは下書きです。相手の名前や事情がまざるので、出す前にもう一度、自分で見ます。
そして、ここは太字にします。決めるのは自分、文を作るのは相棒。この二つを、混ぜないことです。 決める前に文を探し始めると、こんがらがります。先に決めて、それから文。この順番だけで、頼まれごとは、ずっと軽くなります。
ごろのところに、勉強会での発表を頼む連絡が来ました。ごろは、嬉しい半面、迷います。そこで、相棒にこう頼みました。
「勉強会で発表してほしい、と頼まれました。まだ受けるか決めていません。返事の文を作る前に、『受ける・断る・日程を相談する』の三つで、それぞれの良い点と気になる点を並べてください。決めるのは私がやります。」
相棒は、三つの道の先を並べました。受ければ、外に出る一歩になる。でも準備の時間が要る。断れば楽だが、せっかくの機会を逃す。日程を相談すれば、準備の時間を確保できる。ごろは、これを見て、「準備の時間さえあれば、やってみたい」と気づきます。三つ目の道です。
得意になったごろは、その場で相棒に「じゃあ、この内容で返事を送っておいて」と頼みそうになります。指が止まりました。「送るのは、自分だった」。ごろは、返事の下書きだけ作ってもらい、相手の名前と日程を自分で確かめてから、自分の指で送りました。
決めるのは自分、文を作るのは相棒。ごろは、外の仕事の受け方を、この一件で覚えました。
【BOX 人間の先生のはなし】人間の先生も、外から声がかかる仕事をたくさん抱えています。講演の依頼、原稿の依頼、取材の依頼。全部は受けられません。そこで先生は、返事を書く前に、いつも自分に問うそうです。「これは、いま自分がやるべきことか」。受ける・断る・条件を変える。この三つを一度机に並べてから決めると、あとで「なんで受けちゃったんだろう」が減る、と。相棒に手伝ってもらうのは、この「並べる」ところ。決めるのは、いつも先生自身です。ここに白衣は出てきません。頼まれごとの、さばき方の話です。
はじめの一歩- どこで: いつものチャット画面で。頼まれごとの連絡を、手元に置いて。
- どうやって: 文を作る前に、「受ける・断る・条件を変える、それぞれの良い点と気になる点を並べて」と頼む。決めてから、文を頼む。
- きっかけ: 外から頼まれごとが来て、返事に迷った、まさにその瞬間に。迷いは、三つの道を並べる合図です。
はじめの一歩あせらず、ゴロゴロ。
ある日、ごろのところに、一通の連絡が届きました。近所の勉強会で、AIの使い方について発表してほしい、という頼まれごとです。ごろは、嬉しさと、とまどいで、固まりました。人前で話すなんて、考えたこともありません。でも、断るのも、なんだかもったいない。
届いた頼まれごと
・内容: 勉強会でAIの使い方を発表してほしい
・気持ち: 嬉しい、けど、こわい、けど、興味もある
・困っていること: 受けるか断るか、決められない
・やりかけたこと: 断りの文を、探し始めていたごろは、とっさに、角の立たない断りの文を相棒に頼もうとしました。でも、その前に、はたと気づきます。まだ、断ると決めたわけではないのでした。ごろは、頼み方を変えます。
受ける
良い点: 外に出る一歩になる。話すために自分の理解も整理される
気になる点: 準備の時間が要る。人前は緊張する
断る
良い点: 準備の負担がない。いつもの生活が乱れない
気になる点: せっかくの機会を逃す。次に声がかかるとは限らない
日程を相談する
良い点: 受けつつ、準備の時間を確保できる
気になる点: 相手の都合と合うとは限らない決めるのは、あなたです。どれが、いまの自分に合いそうですか。」
画面で見えること断りの文を探していたごろの前に、三つの道の地図が、先に広がりました。
ごろは、この三つを見比べます。断るのは、正直、楽です。でも、良い点の欄にある「外に出る一歩」という言葉が、朝の「暇だな」とつながって見えました。受けたい。ただ、準備の時間だけが心配です。だとしたら、答えは、三つ目でした。
画面で見えること決まったので、ここでようやく、文づくりの話に進みました。
ごろは、得意になって、その勢いで、こう打ちそうになります。
指が、止まりました。「あ」。送るのは、自分の指でした。ごろは、打ちかけた文を消します。
画面で見えること返事の下書きが、名前と日程だけ空けた形で出てきました。送信は、ごろの手に残ります。
この一件で、やったこと
・返事の内容 → 三つの道を並べて、自分で決めた(日程を相談)
・返事の文 → 決めてから、相棒に下書きを頼んだ
・送信 → 空欄を埋めて、自分の指で
・分けたこと → 「決める」と「文を作る」を、混ぜなかった決めるのは自分、文を作るのは相棒。この二つを、混ぜないことです。 ごろは、断りの文を探しかけた手を止めて、先に三つの道を並べたことで、外の仕事の受け方を覚えました。
この日はこう進みました。三つの道のどれを選ぶかは、頼まれごとの中身と、そのときの自分の余裕で、毎回変わります。
返事の文を、すぐに作り始めない
こうした方がいい「決める」と「文を作る」を分け、まず決めるほうから手をつける
ごろはこうしてみた断りの文を探しかけて、手を止めた。
三つの道を、並べてもらう
こうした方がいい「受ける・断る・条件を変える」の良い点と気になる点を、文抜きで並べる
ごろはこうしてみた三つの道の地図を、先に出してもらった。
自分で、どうしたいかを決める
こうした方がいい決めるのは自分。相棒は道を照らすだけ、と割り切る
ごろはこうしてみた「準備の時間さえあれば」で三つ目を選んだ。
決まってから、返事の下書きを頼む
こうした方がいい選んだ道に合う文だけを、あとから作らせる
ごろはこうしてみた日程相談の下書きを、決めてから頼んだ。
相手の名前や事情は、自分で入れる
こうした方がいい個別のことがまざる部分は、空欄にして自分で埋める
ごろはこうしてみた名前と日程を空欄のまま受け取った。
送信は、自分の指で押す
こうした方がいい下書きは相棒、出すのは自分。ここは混ぜない
ごろはこうしてみた「送っておいて」を打ちかけて、指を止めた。
返事を書き始める前に、「受ける・断る・条件を変える」の三つが目の前に並んでいれば成功です。決めてから文を頼み、最後の送信を自分の指で押せていれば、判断と文づくりが、きれいに分かれています。
答えタップして答え合わせ

B。 相棒にいちばん手伝ってもらうといいのは、断りの文ではなく、「受けるか断るか」を一緒に考えることです。
三つの道の先を並べてもらうと、自分がどうしたいかが見えてきます。文を作るのは、そのあとで十分。決めるのはあなた、道を照らすのが相棒、文を下書きするのも相棒。この順番です。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
ある集まりの手伝いを頼まれました。全部は引き受けられません。「全部受ける・一部だけ受ける・今回は見送る」の三つを並べて、それぞれどうなるか教えてください。
友人から、無理のありそうなお願いをされました。角を立てずに、でも自分の負担も守りたいです。まず三つの選択肢を並べて、そのあと、断る場合と条件をつける場合の、両方の下書きを見せてください。
増補もっと知りたい人へ (3)
なぜ、頼まれごとで「決める」と「文を作る」を分けると、楽になるのでしょうか。いっぺんにやろうとすると、頭は二つの別の仕事を同時に抱えます。ひとつは「自分はどうしたいか」という、気持ちと都合の話。もうひとつは「どう書けば角が立たないか」という、言葉の話。決めていないのに文を探すと、「断りたいのか、受けたいのか」が定まらないまま、言葉だけがぐるぐる回って、こんがらがります。先に決めてしまえば、あとは決めた道に合う文を作るだけになり、言葉選びが、ぐっと楽になります。
そして、この「三つの道を並べる」は、断るための技術ではありません。むしろ、受けるための技術でもあります。反射で断ってしまう人は、「準備が大変そう」という気になる点だけが大きく見えて、良い点が見えていないことがあります。三つの道を並べると、断る道の「気になる点」、つまり「せっかくの機会を逃す」も、ちゃんと目に入ります。ごろが三つ目の道を選べたのも、受ける道の良い点と、断る道の気になる点が、同時に見えたからです。そして忘れてはいけないのが、決めるのは、最後まで自分だということです。相棒は道の先を照らしますが、どの道を歩くかは決めません。あなたの体調や、その相手との関係や、これから先の予定は、あなたにしかわからないからです。材料は相棒に並べてもらい、決めるのは自分。この分け方は、頼まれごとにかぎらず、外の仕事すべての土台になります。
取材を受けてほしい、と連絡が来ました。まだ決めていません。「受ける・断る・書面で回答する」の三つで、それぞれの良い点と気になる点を並べてください。決めるのは私です。文はまだ作らないで。
ある集まりの手伝いを頼まれました。全部は引き受けられません。「全部受ける・一部だけ受ける・今回は見送る」の三つを並べて、それぞれどうなるか教えてください。
締め切りが厳しい仕事を頼まれました。「そのまま受ける・締め切りを相談する・断る」の三つで整理して。決めたら、選んだ道に合う返事の下書きだけ作ってください。送信は私がします。
友人から、無理のありそうなお願いをされました。角を立てずに、でも自分の負担も守りたいです。まず三つの選択肢を並べて、そのあと、断る場合と条件をつける場合の、両方の下書きを見せてください。
(医療者向け・ダミーデータ前提)院外から講演の依頼が来ました。「受ける・断る・オンラインで代替を提案する」の三つを、負担と機会の面から並べてください。相手の情報や依頼の詳細は、私が別に管理します。
つまずき集- 症状: 返事の文が、なかなか決まらず、こんがらがる。原因: 受けるか断るかを決める前に、文を作り始めている。一手: まず「決める」、それから「文を作る」。ごろが断りの文を探しかけて止めたのが、これです。
- 症状: 頼まれごとを、いつも反射で断ってしまう。原因: 「気になる点」だけが大きく見えている。一手: 三つの道を並べ、断る道の「気になる点(機会を逃す)」も、同時に見ます。良い点も、目に入れます。
- 症状: 相棒に「どうしたらいい?」と聞いて、決めてもらおうとする。原因: 判断まで相棒に預けている。一手: 相棒は道を照らすだけ、と割り切ります。体調や関係や予定は、あなたにしかわかりません。決めるのは自分です。
- 症状: 返事の下書きを、そのまま送ってしまいそうになる。原因: 相手の名前や事情の確認を飛ばしている。一手: 名前と個別の事情は空欄にして、自分で埋め、最後は自分の指で送ります。ごろが指を止めたのが、これです。
