18章 デザイン編
18-3

「らしさ」は、見せて渡す

見本1枚の情報量は、言葉100文字を超えることがあります

言葉で色を説明しなくていい、という考え方です。「落ち着いた感じ」を言葉にしようとすると、たいてい詰まります。いちばんの近道は、お手本を1枚見せること。言うより、見せるほうが速いのです。

「あたたかい雰囲気」「上品な感じ」を言葉にしようとして固まる人のための道具です。すでに色の番号が決まっている人は、その番号を渡すのがいちばん早いので、これは要りません。

ごろには、前に見て「これ好きだな」と思って写真に撮っておいた、喫茶店のチラシがあります。ごろは寝転んだまま、そのチラシの写真を1枚みせて、「この雰囲気で」とだけ言います。「ベージュで、文字は細めで、余白を広く……」なんて説明はしません。だいたい、そんな言葉は途中で分からなくなります。見せたほうが、しっぽを動かすより楽で、ずっと早く伝わります。

ごろが喫茶店チラシの写真を口にくわえて相棒に差し出し、相棒がうなずく
  • どこで: 参考の画像を見せられる画面
  • どうやって: 好きな1枚を見せて「この雰囲気で」と言う
  • きっかけ: 「なんかいい感じ」を、もう一度出したいとき
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ごろが一枚の絵はがきを相棒に見せ、相棒がその寒色二色をパレットへ移す

あせらず、ゴロゴロ。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

デザインの「らしさ」は、言葉で説明するのがとても難しい領域のひとつです。「温かみのある感じ」「上品だけど親しみやすい」。こういった言葉は、聞いた人によって思い浮かべる色や形が違います。これがデザイナーとの認識ズレの原因でもあります。画像を見せる行為は、その認識ズレを一気に縮めます。見本1枚の情報量は、言葉100文字を超えることがあります。これは人間とデザイナーの間だけでなく、人とAIの間でも同じです。ただし、見せた画像を「そのまま使う」わけではありません。著作権のある画像をそのままコピーするためではなく、「この雰囲気」という方向性を伝えるための見本として使います。お手本は「複製するもの」ではなく、「言葉の代わりに使うもの」です。自分で撮った写真、気に入ったフリー素材、ノートのスケッチ。どれでも見本になります。

例をもっと

(好きな雑誌の表紙を見せながら)「この余白の感じ、この落ち着いた色合いで、名刺の下地を1枚作ってください」

(気に入ったWebサイトのスクリーンショットを添えて)「この配色と雰囲気に近いお知らせチラシを1枚」

(自分が以前作った資料を見せて)「これと同じ雰囲気で、今回の勉強会のご案内を作ってください」

(フリー素材の風景写真を添えて)「この写真が持つ静けさの雰囲気で、SNS用の告知画像の下地を1枚」

「(医療者向け・ダミーデータ前提)この学会のポスターの配色と文字の重さに近い感じで、患者向け説明資料の下地を作ってください」

ごろつまずき集

「見せた画像の雰囲気と全然違うものが出てきた」: 「この雰囲気で」だけでは、何が「この」なのかが届いていないことがあります。「この画像の落ち着いた色と、余白の広さを参考に」と、具体的にどこが好きかを添えると近づきます。

「見せた画像がそのままコピーされてしまいそうで心配」: 著作権のある画像は「雰囲気の参考」として伝える使い方に留めてください。「参考として見せます。コピーでなく雰囲気だけ参考にして」と添えると明確です。

「好みの画像がそもそも手元にない」: 「温かみのある」「シンプルで上品な」という言葉から始めて、出てきたものを見ながら「もう少し〇〇に寄せて」と調整する方法もあります。画像が無くても大丈夫です。

あせらず、ゴロゴロ。
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