11章 発信編
11-1

まとめて用意する。一週間ぶんの下書きを、金曜のうちに

B。

あなたは週に何回か、発信をしています。いちばん時間を溶かしているのは、次のどっちだと思いますか。

  • A. 文章を書くこと
  • B. 「今日、何を書こう」と毎回ゼロから考えること

答えは、この話のいちばん下にあります。

この話を読むと

毎回ゼロから考えていた投稿を、一週間ぶんまとめて先に用意しておけるようになります。

続けられないのは、あなたの根気が足りないからではありません。たいていの人がつまずくのは、書く場所ではなく、「何を書くか」を毎回立ち上げるところです。書くのは、始まってしまえば案外進む。重いのは、始める前の「さて、今日は何を」の部分なのです。ごろも、ずっとそこで止まっていました。

白い机の七つの開いた封筒を一つずつ確認し、承認したものだけ右トレイへ移すごろ

考え方は、まとめ買いと同じです。買い物を毎日行くと、行き来だけで疲れます。週末に一回でまとめて買えば、平日は冷蔵庫を開けるだけ。発信もこれと同じで、下書きを一投稿ずつ考えるのをやめて、一週間ぶんをいっぺんに用意してしまいます。

ネタは、新しくひねり出さなくていいです。この一週間に自分が感じたこと、読んだもの、誰かに答えた質問。それを渡すと、そこから下書きの種が出てきます。あなたの中にもう、材料はあるのです。

ここで作るのは、完成品ではありません。「そのまま出す文章」ではなく、「直せば出せる下書き」です。七割の下書きが七本あるほうが、十割の完成品が一本あるより、次の一週間はずっと楽になります。全部同じ調子だと単調なので、月曜は軽く、週の半ばは中身のある一本、週末はゆるく、と温度差をつけて頼むと、並べたときに人らしくなります。

そして、ここだけは太字にします。まとめて作った下書きは、必ず一本ずつ、自分の目で通してから外に出します。まとめて作ることと、まとめて出すことは、まったく別のことです。作るのはまとめて、通すのは一本ずつ。

実演

ごろは、相棒にこう頼みました。

「この一週間で私が話したこと・感じたことを下に貼ります。ここから、来週ぶんの短い投稿の下書きを7本つくってください。月曜は軽め、水曜は中身のある一本、週末はゆるめ。まだ完成品でなく、私が直せる下書きでいいです。」

ごろのとなりで、七本の下書きがぱらぱらと出てきました。ごろは得意げに、全部を右のトレイへ移そうとします。ところが、水曜ぶんが、去年の自分の話とちょっと食い違っている。ここでごろは気づきました。「あ、これは違う」。一本だけ「まだ」のトレイに戻して、そこだけ書き直しを頼み直しました。

七本まとめて作っても、通すのは一本ずつ。それでいいのです。この日、ずっと眺める側だったごろが、はじめて出す側の準備を整えました。

ごろはじめの一歩
  • どこで: いつものチャット画面で。黒い画面はいりません。
  • どうやって: この一週間のメモを、箇条書きでいいので貼って、「ここから来週ぶんの下書きを何本か」と頼む。
  • きっかけ: 金曜の夕方、店じまいの前に一回。作った下書きは、月曜の自分へのおみやげです。
ごろはじめの一歩

手順(全4ステップ) 1. この一週間の出来事を箇条書きで5行ほど書き出す。ひねらず「起きたこと」をそのまま並べる。 2. 書き出したメモを渡す前に、他人の名前・未公開のことがまざっていないかひと目見る。 3. 「上のメモから来週ぶんの下書きを7本。月曜は軽め、水曜は中身、週末はゆるめ。出力は本文のみ。解説はいらない」と頼む。 4. 出てきた7本を一本ずつ通し、事実が自分の記憶と食い違っていないか確かめる。ずれた一本だけ言い直す。

所要目安: 15分〜20分(工場1回転の実測は2分35秒。メモ作成込みで15〜20分)

到達チェック - できたら○ 調べて書くところまで、ひと続きで任せられた - できたら○ 下書き棚に未送信の本が並んだ状態で、週明けを迎えられた

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先生の赤ペン:金曜の下書き工場(M10)

見るポイント1 claude -p は「解説まで出す」が初期設定

3本だけ頼んだのに、最初のプロンプトでは「切り口の説明」「字数の注記」「次のアクション提案」を前後に添えて返してくる。2回目のプロンプトで「出力は本文のみ。解説・メタコメントは不要」の一文を足したら、3本だけになった。初回プロンプトの末尾にこの一文を入れると、工場の回転が速くなる。

見るポイント2 ネタメモの「温度」が下書きの質を決める

「読者さんから怖くて使えないというメールが来た」という一行が下書きの骨格になった。「AIについて何か書く」では出力がぼやける。「いつ・誰が・何をした・どうなった」を1行1件で書くほど、出力は具体的になる。抽象語は使わない。

次の一手2 「下書き棚」は送信ツールとは別に管理する

今回作った下書き棚にはチェックリストが未チェックのまま保存されている。AIは下書き工場であり、送信局ではない。「生成」と「送信」を分けて管理することで、工場の持続可能性が生まれる。


あせらず、ゴロゴロ。

実録・やってみた

金曜の夕方。ごろの手元には、この一週間のメモが散らばっていました。カレンダーの端に書いたひとこと、誰かに答えた返事、読んで「へえ」と思った記事のこと。まとめて相棒に渡す前の、机の上はこんな状態です。

・月曜 スーパーの豆腐が値上がりしてた話をした
・火曜 友だちの相談にのった(→他人の話。抜く)
・水曜 去年から続けてる朝の散歩、今週で一年になった
・木曜 新しい炊飯器の予約タイマーの話
・金曜 読んだ記事「小さく続けるコツ」がよかった
ごろ
ごろが打った文「上のメモから、来週ぶんの短い投稿の下書きを7本つくってください。月曜は軽め、水曜は中身のある一本、週末はゆるめ。まだ完成品でなく、私が直せる下書きでいいです。」
相棒
相棒の返答「7本の下書きです。曜日ごとに温度差をつけました。 月曜(軽め)『豆腐が10円上がってた。この10円で世界が回ってると思うと、ちょっとえらい。』 火曜『友だちの相談にのって、こう伝えました…』 水曜(中身)『朝の散歩、今週でちょうど一年。続いた理由は、たぶん…』 (…木・金・土・日の下書きが4本…)」

画面で見えること7本がずらっと縦に並び、曜日の札がついています。

ごろは得意げに、全部を右のトレイへ移そうとしました。ところが火曜ぶんを見て、手が止まります。これは、友だちが打ち明けてくれた相談の話でした。相棒は、渡したメモの一行をそのまま下書きにしてしまったのです。ごろは、その一本だけを抜きます。

ごろ
ごろが打った文「火曜のは、他人の相談の話なので外します。代わりに、火曜も私の身の回りの軽い話で1本つくり直してください。」
相棒
相棒の返答「失礼しました。火曜ぶんを差し替えます。 火曜『新しい炊飯器に予約タイマーがついてた。朝、炊きたてが待ってるだけで、起きる理由がひとつ増えた。』」

画面で見えること火曜の枠だけが、別の話に入れ替わりました。

直したあとの、七本の仕上がりはこうなりました。

月 豆腐10円値上げ(軽め・くすっと)
火 炊飯器の予約タイマー(軽め・差し替え済)
水 朝の散歩が一年(中身・続いた理由)
木 小さく続けるコツ、の読書メモ
金 今週の気づき(ゆるめ)
土 週末のひとりごと(ゆるめ)
日 (空欄のまま。休む日の候補)

七本まとめて作っても、通すのは一本ずつ。 この日ごろは、他人のものを一本抜くという、手すりの実物にも触れました。

この日はこう返ってきました。頼み方が同じでも、出てくる下書きの中身や言い回しは、毎回すこし違います。

手順
  1. この一週間の出来事を、箇条書きで書き出す

    こうした方がいい

    ネタをひねらず「起きたこと」をそのまま並べる

    ごろはこうしてみた

    豆腐の値上げも散歩も、思い出した順に5行だけ書いた。

  2. 書き出したメモを、渡す前にひと目見る

    こうした方がいい

    他人の名前・未公開のことがまざっていないか一度だけ確かめる

    ごろはこうしてみた

    「友だちの相談」の行に気づいたので、印だけつけておいた。

  3. 本数と温度差を指定して頼む

    こうした方がいい

    「何本、どの曜日はどの温度」まで先に言うと、並べたとき人らしくなる

    ごろはこうしてみた

    「7本、月は軽め・水は中身・週末はゆるめ」と指定した。

  4. 出てきた下書きを一本ずつ、自分の記憶と照らす

    こうした方がいい

    事実の部分だけ、自分の覚えと合っているか見る

    ごろはこうしてみた

    火曜が他人の話だったので、そこだけ抜いた。

  5. 食い違った一本だけ、作り直しを頼む

    こうした方がいい

    全部やり直させず、ずれた枠だけ差し替える

    ごろはこうしてみた

    火曜だけ「私の身の回りの話で」と頼み直した。

  6. 直した七本を、そのまま次の勝負(順番決め)へ渡す

    こうした方がいい

    作る流れと並べる流れを、一続きにする

    ごろはこうしてみた

    直後に「三列の表にして」へつないだ。

うまくいったかの確かめ方

手元に「直せば出せる下書き」が数本そろっていて、そのどれもが自分の記憶と食い違っていなければ成功です。一本でも「これは違う」を見つけて直せていれば、通す目が働いている証拠です。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。

書く時間より、「何を書くか」を毎回立ち上げる時間のほうが長いのです。文章を書くのが遅いのではなく、毎回エンジンをかけ直しているのが遅い。ここをまとめて先に片づけると、一回あたりの立ち上げが消えます。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

最近つくった料理と、失敗した料理を書きます。これをもとに、暮らし系の投稿の下書きを4本。うち1本は「失敗から学んだこと」でお願いします。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

なぜ、書くことより「何を書くか」のほうが重いのでしょうか。ひとつは、切り替えの費用です。ゼロから話題を立ち上げるとき、頭は「今日の気分」「先週なにを出したか」「かぶっていないか」を一度に思い出そうとします。この立ち上げを一日おきにくり返すと、毎回そのぶんの助走が要ります。まとめて用意するのは、この助走を一回にたたむ作業です。

もうひとつは、相棒の得意分野と重なることです。相棒は、ゼロから「今日の名案」をひねり出すのは、あまり得意ではありません。けれど、あなたがすでに持っている材料を並べ替えて、下書きの形に整えるのは、たいてい速い。だから、材料はあなたが出し、形は相棒が出す、という分け方がかみ合います。「一週間ぶんまとめて」という頼み方が効くのも、相棒にとっては七本を一度に整えるほうが、話題ごとの助走が要らず、通しの調子をそろえやすいからです。ここで作るのが完成品でなく下書きなのも、理由があります。完成品はあなたの判断が全部入って初めて完成品になります。相棒に出せるのは、その手前まで、ということです。

例をもっと

この一週間で私が答えた質問と、印象に残ったニュースを下に貼ります。ここから、仕事アカウント向けの短い投稿の下書きを5本。専門用語は減らして、読み手は同業以外の人です。

最近つくった料理と、失敗した料理を書きます。これをもとに、暮らし系の投稿の下書きを4本。うち1本は「失敗から学んだこと」でお願いします。

このあいだ登った山のメモを貼ります。写真の説明文の下書きを3本、長さ違いで。1本は短く一言、1本はふつう、1本は少し語る感じで。

今週読んだ本の気づきを箇条書きで貼ります。読書メモの投稿を3本、それぞれ別の本で。引用は私があとで正確に入れるので、いまは「たしかこう書いてあった」の要約でかまいません。

(医療者向け・ダミーデータ前提)院内向けの豆知識メモを貼ります。ここから、スタッフ掲示板用のひとくちメモの下書きを5本。数値や事例はすべて仮のダミーです。私が正しい値に差し替えます。

ごろつまずき集
  • 症状: 七本が全部そっくりな調子になる。原因: 温度差の指示を入れていない。一手: 「月曜は軽く、半ばは中身、週末はゆるく」と、曜日ごとの温度を先に指定します。
  • 症状: 下書きの中身が、自分の記憶と食い違っている。原因: 相棒が材料の行間を勝手に埋めた。一手: 出てきた下書きを一本ずつ通し、事実の部分だけ自分の記憶と照らします。ごろが水曜ぶんでヒヤリとしたのが、これです。
  • 症状: 材料がうまく出てこない。原因: 「なにか良いネタを」と丸投げしている。一手: ネタでなく「この一週間の出来事」を貼ります。ひねるのは相棒の仕事で、思い出すのはあなたの仕事です。
  • 症状: 貼ったメモに、他人の名前や未公開のことがまざっていた。原因: 見直しを飛ばした。一手: 貼る前にひと呼吸おいて、他人のものが入っていないか一度だけ見ます。抜いてから、渡します。
あせらず、ゴロゴロ。
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