「ここをこう」の直し往復
どこを、どう。
できたものを、言葉で少しずつ直せるようになります。
作り直すのは、いさぎよくて気持ちがいいものです。でも、もったいない。全部消してしまうと、良かった8割まで消えてしまいます。AIとの仕事は、ゼロから作る一発勝負ではありません。「ここをこう」を何度も往復して、少しずつ自分の形に寄せていく仕事です。
ごろは、これで一度、青ざめました。粘土のかたまりを、一発できれいな形にしようと力んで、いっそ全部つぶして作り直そうとしたのです。ところが、つぶした拍子に、気に入っていた8割まで消えてしまいました。ごろの顔から、すっと血の気が引きます。
でも、慌てませんでした。第3部で「戻せる」を覚えたごろです。「さっきの形に戻して」。ひと息つくと、粘土はもとに戻りました。そこからは、親指でちょんちょん。気に入らないところ「だけ」を、押して直していきます。

コツは、2つだけ言うことです。どこを、どう。 場所(最後の一文、この表、3行目)と、方向(やわらかく、短く、丁寧に)。この2つを言えば、そこだけが動きます。
消えてほしくないところは、先に守ってあげましょう。「全体はこのまま」「ここは残して」。ひと言、盾を置くだけです。これを言い忘れると、直したいところと一緒に、気に入っていたところまで動いてしまうことがあります。
直す言葉は、道具箱に貯めておくと便利です。「もっと短く」「例を1つ足して」「かたい言い方に」「小学生にも分かるように」。よく使うものから、手に馴染んでいきます。
そして、直して悪くなったら、いつでも「さっきのに戻して」。往復は、失敗してもタダです。3回でも5回でも、気軽にどうぞ。完璧な一発より、気楽な往復のほうが、ずっと近道です。
AIが作ってくれた文章、8割はいいのに、最後のひと言だけ気に入りません。どうする?
A 全部いったん消して、最初から作り直してもらう B 「最後のひと言だけ、もっとやわらかく」と、直すところだけ言う
あなたが打つのは、こんな流れです。
「今の文章、全体はこのまま。最後の一文だけ、もっとやわらかい言い方に直して」。見て、まだ気になったら「ここは残して、3行目だけ短く」。
すると、指したところだけが変わり、ほかは保たれます。気に入らなければ「戻して」で一手前へ。数往復で、自分の形に落ち着きます。
はじめの一歩- どこで いま作業している、同じ会話の続き(新しく始め直さない)
- どうやって ①「全体はこのまま」と守る ②「〈場所〉を〈方向〉に」と、1つだけ直す ③違えば「戻して」
- きっかけ 出てきたものが「8割いいけど、あと少し」なとき(つまり、ほぼ毎回)
一発で決めなくて、いいのです。ちょんちょん、往復すれば。あせらず、ゴロゴロ。
お客さまへのお礼メールを、相棒に下書きしてもらいました。8割は、ちょうどいい。ただ、結びのひと言だけが、少し硬い。ここを直します。手元の下書きは、こんな文面です。
このたびはご来店いただき、誠にありがとうございました。
またのお越しを心よりお待ち申し上げております。
何卒よろしくお願い申し上げます。はじめ、ごろは全部つぶしにかかりました。
画面で見えること文章がまるごと入れ替わり、気に入っていた最初の2行まで消えていました。ごろの顔から、すっと血の気が引きます。
第3部で覚えた安全網を、思い出します。
画面で見えること消えたはずの、気に入っていた2行が返ってきました。ひと安心です。
今度は、直したい一点「だけ」を言います。
画面で見えること前の2行はそっくりそのまま。最後の一行だけが、やわらかく変わっていました。
仕上がりは、こうなりました。
このたびはご来店いただき、誠にありがとうございました。
またのお越しを心よりお待ち申し上げております。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。この日はこう返ってきました。言い回しは一例で、頼むたびに少し違います。
直す前に、消したくないところを守る
こうした方がいい「全体はこのまま」「ここは残して」と、先に盾を置きます
ごろはこうしてみた盾を置き忘れて全消しし、気に入った2行まで失って青ざめました。次からは先に守っています。
どこを直すか、場所を1つに絞る
こうした方がいい「最後の一文」「3行目」「この表」と、場所を1つだけ指します
ごろはこうしてみた「最後の一文だけ」と指したら、ほかは一切動きませんでした。
どう直すか、方向を1つ言う
こうした方がいいやわらかく・短く・丁寧に、など方向を1語で示します
ごろはこうしてみた「やわらかく」の一言で、硬かった結びがほどけました。
直して悪くなったら、すぐ戻す
こうした方がいい気に入らなければ「さっきのに戻して」で一手前へ。往復はタダです
ごろはこうしてみた全消しのときも「戻して」で復活。おかげで気軽に試せました。
同じ会話の続きで直す
こうした方がいい新しく始め直さず、いま作業している会話をそのまま続けます
ごろはこうしてみた続きでやったので、前の文脈が残ったまま一点だけ直せました。
うまくいったかの確かめ方: 直した箇所だけが変わり、それ以外はさっきのまま、なら成功です。指してもいない場所まで動いていたら、盾(「ここは残して」)を置き忘れた合図です。
答えタップして答え合わせ

B
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
全体はこのまま。最後の一文だけ、もっとやわらかい言い方に直してください。
この表はいじらないで。3行目の言葉づかいだけ、丁寧にしてください。
増補もっと知りたい人へ (3)
なぜ「作り直す」より「直す往復」のほうが近道なのでしょうか。最初に出てくるものは、完成品ではなく、たたき台だからです。AIは、あなたの頭の中を全部は知りません。だから一発では、8割は当たっても、残りの2割は外します。ここで全部消してしまうと、当たっていた8割まで一緒に消えます。これがもったいない。
コツは「どこを、どう」の2つを言うことです。場所を指し、方向を示す。すると、指したところだけが動きます。この「差分で直す」考え方は、じつはものづくりの現場で広く使われている作法です。全部を作り直すのでなく、変えたい一点だけを変える。消えてほしくないところは「ここは残して」と先に盾を置く。そして、直して悪くなったら「さっきのに戻して」で一手前へ。第3部で覚えた「戻せる」があるから、この往復は失敗してもタダなのです。完璧な一発を狙うより、気楽な往復を3回、5回とくり返すほうが、結局は早く自分の形に着きます。
全体はこのまま。最後の一文だけ、もっとやわらかい言い方に直してください。
この表はいじらないで。3行目の言葉づかいだけ、丁寧にしてください。
ここは残して。前半の説明を、小学生にも分かるように短くしてください。
いまの案は気に入っています。タイトルだけ、もう3つ別の候補をください。
(医療者向け・ダミーデータ前提)この患者説明文、内容は変えないで。専門用語のところだけ、やさしい言い換えを添えてください。
つまずき集- 直したいところと一緒に、気に入っていたところまで変わる。原因は盾を置き忘れたこと。一手は「全体はこのまま」「ここは残して」を先に言うこと。
- どこを直すか伝わらず、見当違いが返る。原因は場所があいまいなこと。一手は「最後の一文」「3行目」「この表」と、場所を1つに絞ること。
- 直すほどに悪くなっていく。原因は往復のたびに指示が増えて濁ること。一手は「さっきのに戻して」で一度リセットし、直しを1つずつに絞ること。
- 新しい会話を始めてしまい、前の文脈が消える。原因は往復を別の場所でやったこと。一手は、同じ会話の続きで直すこと。
