見た目でなく、中身のことば ― アプリを増やさない資料術
見た目でなく、中身のことば。
献立ボードで、ごろはひとつのことを覚えました。頼む、出る、直す。この往復です。じつは同じ往復が、道具づくり以外でも効きます。たとえば、資料づくり。
ある日、ごろに出番が来ました。日曜の子ども会で、ちょっと話すことになったのです。スライドがいります。ごろは、埃をかぶった分厚いスライド専用アプリの箱を、じっと見つめました。開くのが、めんどくさい。使い方も、半分忘れています。しかも、AIに文章を考えてもらっても、それをアプリに手で貼り直すのは、ごろの仕事のまま。相棒はアプリの中まで手が届かないのです。
ごろの脳裏に、4章の記憶がよぎります。あのとき、できたものを言葉で直す往復を覚えました。「ここをこう」と言えば、その場で直る、あの気持ちよさ。あれを、スライドでもやりたい。でも、専用アプリを相手にすると、あの往復ができません。直すたびに、AIに聞いて、アプリに戻って、手で直して、の二度手間になるのです。
ここで、この章のコツです。スライドは、特別な形式でなくてもつくれます。ホームページと同じ、一枚のWebページ(HTML)としてつくれて、めくると次の面が出る。そして大事なのは、その中身が、最初から最後まで「ことば」でできていることです。見た目でなく、中身のことば。 専用アプリの中身はAIから見えにくいのですが、ことばでできたページは、AIが直接読んで、直接書き直せます。人が手で貼り直す工程が、まるごと消えるのです。
だから「三枚目の色を濃く」と言えば、その場で直る。「二枚目、字が多いから削って」と言えば、その場で削れる。言えば書き変わり、開けばすぐ確かめられる。往復が速いほど、納得いくまで詰められます。できあがった一枚のページは、パソコンでもスマホでも、ブラウザさえあれば開けます。相手に特別なアプリを入れてもらう必要もありません。渡すのもリンク一本です(くわしくは13章)。

やってみます。
ごろは、こう頼みました。「日曜の子ども会で話す内容を、五枚のスライドにして。専用アプリは使わず、一枚のWebページとして書き出して。ブラウザで開けるように」。
相棒が、めくれる五枚ぶんを一枚のページとして書き出します。ごろは、それをブラウザで開いて、矢印キーでめくって確かめます。ちゃんと、めくれる。
ところが、ごろの悪いくせが、ここでも出ます。うれしくなって、一気に飾りつけたくなったのです。「背景を虹色にして、字も踊らせて」。前の章までの「欲張ると失敗する」を、性懲りもなく、また。
開いてみたら、にぎやかすぎて、肝心の文字が読めません。虹色の上で字が踊っていて、子ども会で見せる前に、ごろ自身が読めない。
ごろは、けろっと言い直します。「ごめん、飾りは全部やめて。白い背景に黒い字だけ。読みやすさ最優先で」。相棒が、静かな五枚に戻してくれました。今度は、読めます。
中身のことばが通ってから、必要なら一色だけ足す。凝りすぎて手が止まるより、通してから直す。順番は、いつも同じです。
明日の集まりで見せるスライドを、AIに手伝ってもらいながらつくりたい。どっちが往復が速いでしょう。
- A いつものスライド専用アプリを開いて、そこにAIの文章を一枚ずつ手で貼っていく
- B AIに「スライドを一枚のページとして書き出して」と頼み、そのページをそのまま直してもらう
はじめの一歩
- どこで: いつものClaude Codeの画面。新しいアプリは入れない
- どうやって: 「スライドを、一枚のWebページとして書き出して。ブラウザで開けるように」と頼む
- きっかけ: 次に人前で話す小さな機会。その資料を、専用アプリを開かずに一度つくってみる
あせらず、ゴロゴロ。
ごろが困っているのは、日曜の子ども会で話すスライドです。手元には、埃をかぶった分厚いスライド専用アプリと、まっさらなフォルダが一つ。
子ども会スライド/ ← 専用アプリは開かず、フォルダを一つ用意した
(なにもない)slides.html
を一枚つくりました。矢印キーでめくれます。中身はこうなっています。1枚目: 日曜の子ども会へようこそ
2枚目: 今日あそぶこと
3枚目: 気をつけること
4枚目: おやつのじかん
5枚目: またあおうね
(…五枚ぶんが、ぜんぶ「ことば」で書かれている…)画面で見えることブラウザで開いて矢印キーを押すと、ちゃんと次の面がめくれる。
ところが、ごろの悪いくせが、ここでも出ます。うれしくなって、一気に飾りたくなったのです。
画面で見えることにぎやかすぎて、虹色の上で字が踊っていて、肝心の文字が読めない。ごろ自身が読めない。
画面で見えること今度は、読める。ごろが手にしたのは、たった一枚のファイルです。
子ども会スライド/
slides.html ← 五枚ぶんが一枚に。ブラウザで開けるこの日は、飾って読めなくして戻すまで、寄り道を一回しました。最初から静かに出ることもあります。毎回すこし違います。
専用アプリを開かず、フォルダを一つ用意する → [こうしたほうがいい] 新しいアプリは入れない。いつものClaude Codeの画面のままでいい
ごろはこうしてみた分厚いアプリの箱を横目に、フォルダを一つだけ作った。
「一枚のWebページとして書き出して」と頼む → [こうしたほうがいい] 「ブラウザで開けるように」「めくれるように」を一言添えると、開き方で迷いません
ごろはこうしてみた「五枚を一枚のWebページに、ブラウザで開けるように」と頼んだら
slides.htmlが一枚できた。まず中身のことばだけで、一本通す → [こうしたほうがいい] 飾りは後回し。表紙から最後まで、言いたいことが順に並んでいるかを先に見る
ごろはこうしてみた五枚の見出しが順に並んでいるのを、めくって確かめた。
通ってから、飾りは一色だけ足す → [こうしたほうがいい] 盛りすぎると文字が読めなくなる。一気に虹色にしない
ごろはこうしてみた虹色にして読めなくなり、「白地に黒字だけ」と戻した。
直したいところは、言葉でその場で言う → [こうしたほうがいい] アプリに戻って手で直さず、「三枚目の字を減らして」と相棒に言う
ごろはこうしてみた貼り直す工程が一度も出てこなかった。
フォルダに slides.html
のような一枚があり、ブラウザで開いて矢印キーでめくれて、文字が読めれば成功です。スマホで開いても同じように見えれば、渡せる形になっています(共有は13章)。
答えタップして答え合わせ

B。専用アプリに貼る方式だと、直すたびに「AIに聞く」「アプリに戻って手で直す」の二度手間になります。
一枚のWebページとしてつくれば、AIがその中身を直接書けるので、「三枚目の色を濃く」と言えばその場で直ります。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
(医療者向け・ダミーデータ前提)院内の勉強会スライドを、Webページ一枚で。症例は架空のダミーで、実データは入れないで。まず文字だけで一本通して。
増補もっと知りたい人へ (3)
なぜ、一枚のWebページだと往復が速いのでしょうか。鍵は「中身が何でできているか」です。専用アプリの資料は、見た目は整っていても、その中身が独特のしくみで包まれていて、相棒からは直接読み書きしにくいことがあります。だから、相棒に文章を考えてもらっても、それをアプリに貼り直すのは、たいてい自分の手仕事のまま残ります。いっぽうWebページは、表紙から最後の面まで、まるごと「ことば」で書かれています。だから相棒が直接読んで、直接書き直せる。人が手で貼り直す工程が、まるごと消えるのです。
もう一つ、身軽さがあります。一枚のページは、ブラウザさえあれば、パソコンでもスマホでも開けるので、相手に特別なアプリを入れてもらう必要がありません。渡すのもリンク一本で済みます(くわしくは13章)。この本の著者も、資料をこの形に寄せてきたのは「アプリを増やしたくない」という素朴な理由からでした。凝った見た目の技より先に、直しが速い・どこでも開ける・相棒が直接書ける、という三つの実利が効いたのです。順番も、いつも同じにしておくと迷いません。まず中身のことばで一本通す。飾りは、通ってから一色だけ足す。凝りすぎて手が止まるより、通してから直すほうが、結局きれいに仕上がります。
来月の勉強会で話す内容を、六枚のスライドにして。専用アプリは使わず、一枚のWebページとして書き出して。ブラウザで開けるように。
子どもの学校説明会で配る一枚を、Webページで作って。見出しと箇条書きだけの、静かな見た目で。
趣味の登山サークルの活動報告を、写真を入れる場所だけ空けたスライドにして。あとから中身を差し替えられるように。
自己紹介を三枚のページにまとめて。白い背景に黒い字で、読みやすさ最優先。あとで一色だけ足すかも。
(医療者向け・ダミーデータ前提)院内の勉強会スライドを、Webページ一枚で。症例は架空のダミーで、実データは入れないで。まず文字だけで一本通して。
つまずき集- 症状: うれしくなって飾りを盛り、肝心の文字が読めなくなる。原因: 中身が通る前に見た目に手を出した。一手: 「飾りは全部やめて、白い背景に黒い字だけ」と一度戻し、読める状態を土台にします。
- 症状: めくり方が分からず、一枚ずつしか見えない。原因: めくる形で書き出すよう頼んでいない。一手: 「めくれる形にして、矢印キーで進めるように」と言い添えます。
- 症状: 直したいのに、つい専用アプリを開いてしまう。原因: 昔の手順の癖が残っている。一手: 資料は最初から「Webページとして書き出して」と頼み、貼り直す工程を作らないようにします。
- 症状: 相手の環境で開けるか不安になる。原因: 特別なアプリ前提だと思い込んでいる。一手: ブラウザで開ける一枚なら、リンク一本で渡せます。共有の詳しい手順は13章に置いてあります。
