11章 発信編
11-3

資料の下地を組む。スライドは、白紙からでなく骨組みから

A。

スライドを作るとき、いちばん手が止まるのは、どこでしょう。

  • A. 一枚目の白紙を前にした「最初の一枚」
  • B. 色やフォントの飾りつけ

答えは、この話のいちばん下にあります。

この話を読むと

発表資料やスライドを白紙から作り始めず、話の骨組みと下地を先に組んでもらえるようになります。

白紙が重いのは、あなたのせいではありません。話の順番も決まっていないのに、いきなりきれいな一枚を作ろうとするから、止まるのです。順番さえ決まっていれば、あとは肉付けするだけ。だから、先に骨組みだけ組んでもらいます。

壁も色もない家の骨組みで、四本の柱に部屋の見出し札を掛け、壁紙は巻いたまま待たせるごろ

順番は、こうです。まず、見た目より先に「言いたいこと、それを一枚ずつの見出しに割ったもの」を作ってもらいます。スライドの前に、目次を作る感覚です。次に、一枚に詰め込みすぎないよう、「一枚につき伝えることは一つ」で割ってもらう。これだけで資料はぐっと読みやすくなります。そして、スライドの下に「この一枚で口で言うこと」を短く添えてもらうと、当日の自分がとても助かります。作るのは、貼る文字だけではないのです。

色やフォントの飾りつけは、いちばん最後です。順番が決まる前に飾ると、たいてい作り直しになります。

ここで出てくるのは、あくまで下地、たたき台です。中身が正しいか、自分の主張になっているか、事実があっているか。それは、このあと自分が確かめます。骨組みは相棒、中身は自分、これも下書きまでの分業です。

なお、この骨組みはチャット画面の中で作れます。清書して見た目まで整える段になったら、スライドの道具に移ればいいです。ここではまだ、白い紙の道具に触る必要はありません。じつは資料は、専用アプリを使わなくても、ホームページと同じ一枚のWebページ〔HTML(エイチティーエムエル)〕として書き出せます。名前はいま覚えなくて大丈夫。この「一枚のページで作る」続きは、12b章の12b-2でゆっくり触れます。

実演

ごろは、こう頼みました。

「来週、AIの使い方を10分で話します。聞き手はAIをまだ触っていない人。まずスライドの骨組みだけ作ってください。一枚に見出し一つ、その下に口で言う一言。飾りはまだいりません。全部で8枚くらい。」

見出しだけのスライドが八枚、順番に並びました。ごろは満足して、さっそく壁紙を貼り始めようとします。ところが、三枚目に話が二つ詰まっているのに気づきました。「ここ、一枚に二つ入ってる」。その一枚を二枚に割り直してから、先へ進みます。

骨組みが整ってからでも、飾りは間に合う。ごろは、白紙のこわさが消えたのを感じました。

【BOX 人間の先生のはなし】人間の先生も、この「骨組みを先に」を使っています。院内の勉強会や、患者さん向けの説明の紙。まず「この10分で伝えたい一つのこと」を決めて、一枚一メッセージで割ってから、肉付けをするそうです。むずかしい話ほど、詰め込みすぎると伝わらない。骨組みを先に置くことは、そのまま「伝わる資料」の作り方でもある、と。ここに白衣は出てきません。順番の話だけです。

ごろはじめの一歩
  • どこで: チャット画面で骨組みを作れます。見た目を整える段になったら、スライドの道具へ。
  • どうやって: 「テーマ・聞き手・時間・枚数の目安」を伝えて、「まず骨組みだけ」と区切って頼む。
  • きっかけ: 発表の予定が決まった日に、骨組みだけ先に。飾りは前日でも間に合います。
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ごろはじめの一歩

あせらず、ゴロゴロ。

実録・やってみた

来週、ごろは十分の発表をすることになりました。手元にあるのは、テーマと、聞き手が誰かということだけ。スライドの道具は、まだ開いていません。白い一枚目を前にすると、いつも手が止まるからです。

決まっていること
・テーマ: AIの使い方(はじめの一歩)
・時間: 10分
・聞き手: AIをまだ触っていない人
・枚数の目安: 8枚くらい
決まっていないこと
・話の順番(白紙のまま)
ごろ
ごろが打った文「来週、AIの使い方を10分で話します。聞き手はAIをまだ触っていない人。まずスライドの骨組みだけ作ってください。一枚に見出し一つ、その下に口で言う一言。飾りはまだいりません。全部で8枚くらい。」
相棒
相棒の返答「骨組みを8枚ぶん作りました。見出しと、その下に口で言う一言だけです。 1 きょうのゴール|口で言う一言『触ったことがある、を今日つくります』 2 AIって何?|『こわくない。話し相手だと思ってください』 3 まず一回、話しかけてみる/そして返事が来る|『打つ、待つ、返る。それだけです』 (…4枚目から8枚目まで…)」

画面で見えること見出しだけのスライドが八枚、順番に並びました。ただ、三枚目の見出しが「/」でふたつに割れています。

ごろは満足して、さっそく壁紙を貼りにいこうとします。でも、三枚目で引っかかりました。ここには「話しかける」と「返事が来る」の、二つが入っています。

ごろ
ごろが打った文「3枚目、話が二つ入っています。『話しかけてみる』と『返事が来る』を、別々の二枚に割ってください。全体は9枚になっていいです。」
相棒
相棒の返答「はい、三枚目を二枚に割りました。 3 まず一回、話しかけてみる|『こわがらず、ひとこと打ってみましょう』 4 すると、返事が来る|『待つと返ってくる。この往復が全部の入口です』 (以降の見出しは一枚ずつ後ろへずれます。全9枚)」

画面で見えること三枚目が二枚になり、全体が九枚に伸びました。壁紙も色も、まだどこにもありません。

仕上がった骨組みは、こんな並びです。

1 きょうのゴール
2 AIって何?
3 まず一回、話しかけてみる
4 すると、返事が来る
5 何を頼めるの?(3つだけ)
6 やってはいけないこと(1つだけ)
7 きょう帰ったら、これを一回
8 まとめ
9 おわりに
※各枚の下に「口で言う一言」つき。色・フォントはまだ無し

骨組みが整ってからでも、飾りは間に合う。 ごろは、白紙のこわさが消えたのを感じました。

この日はこう返ってきました。見出しの言葉づかいや枚数の刻み方は、頼むたびに毎回すこし違います。

手順
  1. テーマ・聞き手・時間・枚数を先に伝える

    こうした方がいい

    この四つを言わないと、相手の像がぼやけて見出しが上滑りする

    ごろはこうしてみた

    「AIの使い方・未経験者・10分・8枚」と四つ揃えて渡した。

  2. 「まず骨組みだけ」と区切って頼む

    こうした方がいい

    見た目を頼まないと、飾りに気を取られて順番が甘くなる

    ごろはこうしてみた

    「飾りはまだいりません」と一言つけた。

  3. 一枚一メッセージを指定する

    こうした方がいい

    「一枚に見出し一つ」と先に言うと、詰め込みが減る

    ごろはこうしてみた

    それでも三枚目に二つ入ったので、次で割った。

  4. 各枚に「口で言う一言」を添えてもらう

    こうした方がいい

    当日しゃべる言葉まで一緒に出しておくと、本番の自分が助かる

    ごろはこうしてみた

    見出しの下に一言をつけてもらった。

  5. 二つ入った枚を見つけたら、割る

    こうした方がいい

    一枚を二枚にするのは、骨組みの段階なら札を掛け替えるだけで軽い

    ごろはこうしてみた

    三枚目を二枚に割り、全体が九枚になった。

  6. 中身の正しさは、このあと自分で確かめる

    こうした方がいい

    順番は相棒、主張と事実は自分、と分ける

    ごろはこうしてみた

    骨組みが固まってから、中身の肉付けは自分の仕事にした。

  7. 見た目づくりは、順番が決まってから道具へ移る

    こうした方がいい

    白い紙の道具は最後でいい

    ごろはこうしてみた

    骨組みが固まるまで、スライドの道具は開かなかった。

うまくいったかの確かめ方

見出しだけのスライドが順番に並んでいて、そのどれもが「一枚に一つ」になっていれば成功です。二つ入った枚を一枚でも見つけて割り直せていれば、詰め込みを見抜く目が働いています。

答えタップして答え合わせ
ごろ

A。

最初の白紙が、いちばん重いのです。話の順番さえ決まっていないのに、きれいな一枚を作ろうとするから止まる。先に「何を、どの順で話すか」の骨組みを組んでもらうと、白紙が消えて、あとは肉付けだけになります。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

趣味の会で、自分の作品づくりの流れを5分で話します。聞き手は初心者。骨組みだけ先に、6枚くらいで。一枚に一つずつ、詰め込まないでください。

子どもの学校のPTAで、あるテーマを10分で説明することになりました。専門用語なしで、骨組みだけ8枚。各枚の下に、口で言うやさしい一言も添えてください。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

「骨組みが先、飾りが後」には、順番そのものに理由があります。見た目から作り始めると、話の順番を変えるたびに、色やレイアウトまで作り直しになります。一枚を動かすと、そろえた飾りが全部ずれる。だから、順番が固まる前の飾りつけは、たいてい無駄になります。逆に、骨組みだけなら順番の入れ替えは軽い。札を掛け替えるだけです。ごろが壁紙を後回しにしたのは、正解でした。

「一枚に一つ」の割り方も、ただの見栄えの話ではありません。一枚に二つ以上を詰めると、聞き手はどちらを聞けばいいか迷い、話し手も口が滑ります。一枚一メッセージは、聞き手の負担と話し手の迷いを、同時に減らします。それから、この本の著者が実際にやっている工夫がひとつあります。スライドを、専用のアプリでなく、AIと相性のいい形で組んでおくことです。アプリを一つ増やすと、そのぶん覚えることが増えます。まず言葉で骨組みを固めておけば、見た目に落とす道具は、あとから選べます。ここで大事なのは、骨組みは相棒、中身の正しさは自分、という分け方です。話の順番は手伝ってもらえますが、その主張が本当に自分のものか、事実が合っているかは、このあと自分が確かめます。

例をもっと

来週、社内で新しいツールの使い方を15分で説明します。聞き手は同じ部署の人。まずスライドの骨組みだけ、一枚に見出し一つ、その下に口で言う一言。飾りはいりません。10枚くらいで。

趣味の会で、自分の作品づくりの流れを5分で話します。聞き手は初心者。骨組みだけ先に、6枚くらいで。一枚に一つずつ、詰め込まないでください。

子どもの学校のPTAで、あるテーマを10分で説明することになりました。専門用語なしで、骨組みだけ8枚。各枚の下に、口で言うやさしい一言も添えてください。

読書会で、この本の要点を10分で紹介します。章立てに引っぱられず、「伝えたい一つのこと」から逆に割った骨組みを7枚で。

(医療者向け・ダミーデータ前提)院内勉強会で、あるテーマを10分で話します。まず骨組みだけ、一枚一メッセージで。数値や症例はすべて仮のダミーで、私が正しい内容に差し替えます。

ごろつまずき集
  • 症状: 一枚に話が二つ以上詰まっている。原因: 「一枚一メッセージ」を指定していない。一手: 「一枚に伝えることは一つ」と先に区切ります。ごろが三枚目を二枚に割り直したのが、これです。
  • 症状: 見た目から作り始めて、順番を変えたら全部ずれた。原因: 飾りを先に入れた。一手: 順番が固まるまで、色もフォントも触りません。飾りは前日でも間に合います。
  • 症状: 骨組みは出たが、中身が薄い。原因: 骨組みを完成品と勘違いしている。一手: 骨組みはたたき台です。主張と事実は、このあと自分で肉付けし、確かめます。
  • 症状: いきなりスライドの道具を開いて手が止まる。原因: 白い紙の道具から始めている。一手: 骨組みはチャット画面で作れます。見た目に落とすのは、順番が決まってからで十分です。
あせらず、ゴロゴロ。
読んだ