資料の下地を組む。スライドは、白紙からでなく骨組みから
A。
スライドを作るとき、いちばん手が止まるのは、どこでしょう。
- A. 一枚目の白紙を前にした「最初の一枚」
- B. 色やフォントの飾りつけ
答えは、この話のいちばん下にあります。
発表資料やスライドを白紙から作り始めず、話の骨組みと下地を先に組んでもらえるようになります。
白紙が重いのは、あなたのせいではありません。話の順番も決まっていないのに、いきなりきれいな一枚を作ろうとするから、止まるのです。順番さえ決まっていれば、あとは肉付けするだけ。だから、先に骨組みだけ組んでもらいます。

順番は、こうです。まず、見た目より先に「言いたいこと、それを一枚ずつの見出しに割ったもの」を作ってもらいます。スライドの前に、目次を作る感覚です。次に、一枚に詰め込みすぎないよう、「一枚につき伝えることは一つ」で割ってもらう。これだけで資料はぐっと読みやすくなります。そして、スライドの下に「この一枚で口で言うこと」を短く添えてもらうと、当日の自分がとても助かります。作るのは、貼る文字だけではないのです。
色やフォントの飾りつけは、いちばん最後です。順番が決まる前に飾ると、たいてい作り直しになります。
ここで出てくるのは、あくまで下地、たたき台です。中身が正しいか、自分の主張になっているか、事実があっているか。それは、このあと自分が確かめます。骨組みは相棒、中身は自分、これも下書きまでの分業です。
なお、この骨組みはチャット画面の中で作れます。清書して見た目まで整える段になったら、スライドの道具に移ればいいです。ここではまだ、白い紙の道具に触る必要はありません。じつは資料は、専用アプリを使わなくても、ホームページと同じ一枚のWebページ〔HTML(エイチティーエムエル)〕として書き出せます。名前はいま覚えなくて大丈夫。この「一枚のページで作る」続きは、12b章の12b-2でゆっくり触れます。
ごろは、こう頼みました。
「来週、AIの使い方を10分で話します。聞き手はAIをまだ触っていない人。まずスライドの骨組みだけ作ってください。一枚に見出し一つ、その下に口で言う一言。飾りはまだいりません。全部で8枚くらい。」
見出しだけのスライドが八枚、順番に並びました。ごろは満足して、さっそく壁紙を貼り始めようとします。ところが、三枚目に話が二つ詰まっているのに気づきました。「ここ、一枚に二つ入ってる」。その一枚を二枚に割り直してから、先へ進みます。
骨組みが整ってからでも、飾りは間に合う。ごろは、白紙のこわさが消えたのを感じました。
【BOX 人間の先生のはなし】人間の先生も、この「骨組みを先に」を使っています。院内の勉強会や、患者さん向けの説明の紙。まず「この10分で伝えたい一つのこと」を決めて、一枚一メッセージで割ってから、肉付けをするそうです。むずかしい話ほど、詰め込みすぎると伝わらない。骨組みを先に置くことは、そのまま「伝わる資料」の作り方でもある、と。ここに白衣は出てきません。順番の話だけです。
はじめの一歩- どこで: チャット画面で骨組みを作れます。見た目を整える段になったら、スライドの道具へ。
- どうやって: 「テーマ・聞き手・時間・枚数の目安」を伝えて、「まず骨組みだけ」と区切って頼む。
- きっかけ: 発表の予定が決まった日に、骨組みだけ先に。飾りは前日でも間に合います。
はじめの一歩あせらず、ゴロゴロ。
来週、ごろは十分の発表をすることになりました。手元にあるのは、テーマと、聞き手が誰かということだけ。スライドの道具は、まだ開いていません。白い一枚目を前にすると、いつも手が止まるからです。
決まっていること
・テーマ: AIの使い方(はじめの一歩)
・時間: 10分
・聞き手: AIをまだ触っていない人
・枚数の目安: 8枚くらい
決まっていないこと
・話の順番(白紙のまま)画面で見えること見出しだけのスライドが八枚、順番に並びました。ただ、三枚目の見出しが「/」でふたつに割れています。
ごろは満足して、さっそく壁紙を貼りにいこうとします。でも、三枚目で引っかかりました。ここには「話しかける」と「返事が来る」の、二つが入っています。
画面で見えること三枚目が二枚になり、全体が九枚に伸びました。壁紙も色も、まだどこにもありません。
仕上がった骨組みは、こんな並びです。
1 きょうのゴール
2 AIって何?
3 まず一回、話しかけてみる
4 すると、返事が来る
5 何を頼めるの?(3つだけ)
6 やってはいけないこと(1つだけ)
7 きょう帰ったら、これを一回
8 まとめ
9 おわりに
※各枚の下に「口で言う一言」つき。色・フォントはまだ無し骨組みが整ってからでも、飾りは間に合う。 ごろは、白紙のこわさが消えたのを感じました。
この日はこう返ってきました。見出しの言葉づかいや枚数の刻み方は、頼むたびに毎回すこし違います。
テーマ・聞き手・時間・枚数を先に伝える
こうした方がいいこの四つを言わないと、相手の像がぼやけて見出しが上滑りする
ごろはこうしてみた「AIの使い方・未経験者・10分・8枚」と四つ揃えて渡した。
「まず骨組みだけ」と区切って頼む
こうした方がいい見た目を頼まないと、飾りに気を取られて順番が甘くなる
ごろはこうしてみた「飾りはまだいりません」と一言つけた。
一枚一メッセージを指定する
こうした方がいい「一枚に見出し一つ」と先に言うと、詰め込みが減る
ごろはこうしてみたそれでも三枚目に二つ入ったので、次で割った。
各枚に「口で言う一言」を添えてもらう
こうした方がいい当日しゃべる言葉まで一緒に出しておくと、本番の自分が助かる
ごろはこうしてみた見出しの下に一言をつけてもらった。
二つ入った枚を見つけたら、割る
こうした方がいい一枚を二枚にするのは、骨組みの段階なら札を掛け替えるだけで軽い
ごろはこうしてみた三枚目を二枚に割り、全体が九枚になった。
中身の正しさは、このあと自分で確かめる
こうした方がいい順番は相棒、主張と事実は自分、と分ける
ごろはこうしてみた骨組みが固まってから、中身の肉付けは自分の仕事にした。
見た目づくりは、順番が決まってから道具へ移る
こうした方がいい白い紙の道具は最後でいい
ごろはこうしてみた骨組みが固まるまで、スライドの道具は開かなかった。
見出しだけのスライドが順番に並んでいて、そのどれもが「一枚に一つ」になっていれば成功です。二つ入った枚を一枚でも見つけて割り直せていれば、詰め込みを見抜く目が働いています。
答えタップして答え合わせ

A。
最初の白紙が、いちばん重いのです。話の順番さえ決まっていないのに、きれいな一枚を作ろうとするから止まる。先に「何を、どの順で話すか」の骨組みを組んでもらうと、白紙が消えて、あとは肉付けだけになります。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
趣味の会で、自分の作品づくりの流れを5分で話します。聞き手は初心者。骨組みだけ先に、6枚くらいで。一枚に一つずつ、詰め込まないでください。
子どもの学校のPTAで、あるテーマを10分で説明することになりました。専門用語なしで、骨組みだけ8枚。各枚の下に、口で言うやさしい一言も添えてください。
増補もっと知りたい人へ (3)
「骨組みが先、飾りが後」には、順番そのものに理由があります。見た目から作り始めると、話の順番を変えるたびに、色やレイアウトまで作り直しになります。一枚を動かすと、そろえた飾りが全部ずれる。だから、順番が固まる前の飾りつけは、たいてい無駄になります。逆に、骨組みだけなら順番の入れ替えは軽い。札を掛け替えるだけです。ごろが壁紙を後回しにしたのは、正解でした。
「一枚に一つ」の割り方も、ただの見栄えの話ではありません。一枚に二つ以上を詰めると、聞き手はどちらを聞けばいいか迷い、話し手も口が滑ります。一枚一メッセージは、聞き手の負担と話し手の迷いを、同時に減らします。それから、この本の著者が実際にやっている工夫がひとつあります。スライドを、専用のアプリでなく、AIと相性のいい形で組んでおくことです。アプリを一つ増やすと、そのぶん覚えることが増えます。まず言葉で骨組みを固めておけば、見た目に落とす道具は、あとから選べます。ここで大事なのは、骨組みは相棒、中身の正しさは自分、という分け方です。話の順番は手伝ってもらえますが、その主張が本当に自分のものか、事実が合っているかは、このあと自分が確かめます。
来週、社内で新しいツールの使い方を15分で説明します。聞き手は同じ部署の人。まずスライドの骨組みだけ、一枚に見出し一つ、その下に口で言う一言。飾りはいりません。10枚くらいで。
趣味の会で、自分の作品づくりの流れを5分で話します。聞き手は初心者。骨組みだけ先に、6枚くらいで。一枚に一つずつ、詰め込まないでください。
子どもの学校のPTAで、あるテーマを10分で説明することになりました。専門用語なしで、骨組みだけ8枚。各枚の下に、口で言うやさしい一言も添えてください。
読書会で、この本の要点を10分で紹介します。章立てに引っぱられず、「伝えたい一つのこと」から逆に割った骨組みを7枚で。
(医療者向け・ダミーデータ前提)院内勉強会で、あるテーマを10分で話します。まず骨組みだけ、一枚一メッセージで。数値や症例はすべて仮のダミーで、私が正しい内容に差し替えます。
つまずき集- 症状: 一枚に話が二つ以上詰まっている。原因: 「一枚一メッセージ」を指定していない。一手: 「一枚に伝えることは一つ」と先に区切ります。ごろが三枚目を二枚に割り直したのが、これです。
- 症状: 見た目から作り始めて、順番を変えたら全部ずれた。原因: 飾りを先に入れた。一手: 順番が固まるまで、色もフォントも触りません。飾りは前日でも間に合います。
- 症状: 骨組みは出たが、中身が薄い。原因: 骨組みを完成品と勘違いしている。一手: 骨組みはたたき台です。主張と事実は、このあと自分で肉付けし、確かめます。
- 症状: いきなりスライドの道具を開いて手が止まる。原因: 白い紙の道具から始めている。一手: 骨組みはチャット画面で作れます。見た目に落とすのは、順番が決まってからで十分です。
