第3部 ファイルとくらしを任せる
3-4

長い資料を1枚にまとめる

まとめは、元に戻って確かめられる形が良いまとめ。

この節は、相棒(第2部)が要ります。

この話を読むと

長い資料を、戻って確かめられる一枚にまとめられるようになります。

短いほうが良いまとめだ、と思っていませんか。じつは、ちがいます。まとめは、元に戻って確かめられる形が良いまとめ。 どこから取ったか分かれば、気になったところだけ、自分で元を読み直せます。Aの三行は、たしかに読みやすい。でも、本当にそう書いてあったのか、確かめようがありません。長い物を短くするときこそ、元とのひもを切らないのがコツです。これは、幕間C1で握った「鵜呑みにしない」を、実際にやってみる節でもあります。

コツは、順番にあります。まず「短くして」の前に「何のために」を言う。全体像を掴みたいのか、決まったことだけ知りたいのか、人に説明したいのか。目的でまとめ方は変わります。目的を一言足すだけで、返ってくるものが、ぐっと自分に寄ります。

次に、いきなり要約させず、先に「見出しを付けて」と頼みます。だらだら長い資料も、内容ごとに見出しが立つと、地図のように全体が見える。要約より先に、地図を作る発想です。

分厚い資料から細い糸を引き出し、二つの参照を経て一枚の短いメモへ巻き取る

会議の議事録なら、もっと便利な頼み方があります。「決まったこと・宿題・保留」の三つに分けさせるのです。とくに宿題は「誰が、何を、いつまでに」まで拾わせると、そのまま使える議事録になります。だらだらした会話の記録が、明日から動ける段取りに変わります。

そして最後に、要点が揃ったところで「A4・一枚に収まる形で」と頼む。配るのも、あとで見返すのも、一気にラクになります。寝転がったまま、電話帳が一枚になるのです。

◆ 実演

ごろの一言はこうでした。「この議事録を読んで、A4・一枚にまとめて。『決まったこと・宿題(誰が何をいつまで)・保留』の三つに分けて。各項目に、元の該当箇所も書いて」。

相棒が読み込んで、報告します。「まとめました。決定が四件、宿題が三件、担当と期限つきです。保留が二件。各項目に、元のどの段落から取ったかを添えてあります」。あとでごろが「この宿題、本当にそう決まった?」と気になったときは、添えられた場所を開けば、すぐに確かめられました。

◆ はじめの一歩

  • どこで: 手元にある一番長い資料一本。マニュアル・議事録・説明書・PDF、どれでも。
  • どうやって: 「何のためのまとめか」と「元の場所も残して」の二つを添える。
  • きっかけ: 会議の直後、記憶が新しいうちに議事録を投げてみる。
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一枚にできると、荷物がぐっと軽くなります。あせらず、ゴロゴロ。

開きのクイズ

三十ページのマニュアルを「三行に要約して」と頼んだら、相棒が返してくれました。さて、次のどちらの使い方が、あなたを守るでしょう。

  • A 読みやすいから、そのまま信じて仕事に使う
  • B 「元の何ページ目から取ったか、各行に付けて」と頼み直してから使う
実録・やってみた

ごろの手元にあったのは、先週の打ち合わせの議事録でした。だらだらと話した順に書かれていて、読み返す気になれません。まず、こう頼みました。

ごろ
ごろが打った文「この議事録、三行に短くして」
相棒
相棒の返答「三行にまとめました。(1)新しい企画は来月から始める。(2)予算は追加で確保する方向。(3)次回までに各自が案を持ち寄る」

画面で見えることきれいな三行が返ってきている。読みやすい。

読みやすいのですが、ごろは手が止まりました。「予算は追加で確保する方向」なんて、本当にそう決まったのか、この三行からは確かめようがありません。あとで誰かに「そう書いてあった?」と聞かれたら、答えに詰まります。そこで頼み直します。

ごろ
ごろが打った文「A4一枚にまとめ直して。『決まったこと・宿題(誰が何をいつまで)・保留』の三つに分けて。各項目に、元のどのあたりから取ったかも書いて」
相棒
相棒の返答「分けました。決まったことが四件、宿題が三件(担当と期限つき)、保留が二件です。各項目に、元の議事録のどの発言から取ったかを添えました。たとえば宿題の一件は『◯◯さんが企画案を来週金曜まで』で、元の中盤のやりとりから拾っています」

画面で見えること三つの見出しの下に箇条書きが並び、各行のうしろに小さく元の場所が添えられている。

できあがりは、こんな形でした(中身はダミーです)。

【決まったこと】
- 新企画は来月開始 …(元: 冒頭のやりとり)
- 予算は「保留」であって未決 …(元: 中盤/ごろの一回目の要約は誤り)
【宿題(誰が・何を・いつまで)】
- Aさん: 企画案を来週金曜まで …(元: 中盤)
- Bさん: 見積もりを月末まで …(元: 後半)
【保留】
- 予算の追加分 …(元: 中盤で「持ち帰り」と発言)

ここでごろは、はっとしました。一回目に「予算は追加で確保する方向」と読んだのは、じつは早とちりだったのです。元をたどれる形にしたら、それは「保留」で、決定ではありませんでした。元に戻れる形にしたから、自分の早とちりに気づけたのです。この日はこう返ってきました。決定や宿題の件数は、資料によって毎回違います。

手順
  1. 手元でいちばん長い資料を一本選ぶ

    こうした方がいい

    マニュアルより、決定が絡む議事録のほうが「元に戻れる」効き目が分かる

    ごろはこうしてみた

    先週の打ち合わせ議事録で試した

  2. いきなり「短く」で終わらせない

    こうした方がいい

    三行要約は読みやすいが、元と照らせず信じてよいか分からない

    ごろはこうしてみた

    一度「三行に」で頼み、確かめようがなくて手が止まった

  3. 目的と分類を指定する

    こうした方がいい

    議事録なら「決まったこと・宿題・保留」に分けると、そのまま動ける

    ごろはこうしてみた

    三分類を指定したら、話した順の記録が段取りに変わった

  4. 「元の該当箇所も書いて」を必ず添える

    こうした方がいい

    各項目に元の場所が付くと、気になった一点だけ読み直せる

    ごろはこうしてみた

    「予算」の行を元までたどり、自分の早とちりに気づけた

  5. 宿題は「誰が・何を・いつまで」まで拾わせる

    こうした方がいい

    担当と期限が入ると、読んだ人がすぐ動ける

    ごろはこうしてみた

    宿題三件すべてに担当と期限がついた

うまくいったかの確かめ方

二つです。各要点のうしろに、元のどこから取ったかが添えられていること。そして、気になった一点を、その印から実際に元へたどれること。この二つができれば、そのまとめは人に見せても大丈夫です。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。三行要約は読みやすい。

でも、本当にそう書いてあったのかを確かめる手がかりがありません。「元の場所も書いて」と頼むと、気になった一点だけ読み直せます。どこから取ったか分からない要約は、信じているのではなく、賭けているのです。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

この議事録を読んで、A4一枚にまとめて。「決まったこと・宿題(誰が何をいつまで)・保留」の三つに分けて。各項目に、元の該当箇所も書いて。

この三十ページのマニュアルに、まず内容ごとの見出しを付けて。要約はその後で頼むから、今は地図だけ作って。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

短いほうが良いまとめだ、という思い込みは、どこから来るのでしょう。おそらく、私たちが学校で「要点を三つに絞りなさい」と習ってきたからです。でも、まとめの本当の値打ちは、短さではありません。元に戻って確かめられるかどうかです。三行にきれいにまとまった要約は、読むのは速い。けれど「本当にそう書いてあったのか」を確かめる手がかりがないと、それを人に伝えるときに不安が残ります。とくに、後で責任が問われるような資料では、この不安は無視できません。だから、要点ごとに「元の何ページ・どの見出しから取ったか」を残させる。気になった一点だけ、自分で元を開いて読み直せます。もう一つ、順番にもコツがあります。いきなり「短くして」ではなく、先に「見出しを付けて」と頼む。だらだら長い資料も、内容ごとに見出しが立つと、地図のように全体が見えます。地図が見えてから要約すると、大事な骨が抜け落ちにくい。会議の議事録なら「決まったこと・宿題・保留」の三つに振り分けさせると、そのまま動ける段取りに変わります。とくに宿題は「誰が・何を・いつまでに」まで拾わせると、読んだ人がすぐ動けます。まとめとは、情報を減らす作業ではなく、元とのひもを切らずに見通しを良くする作業なのです。

例をもっと

この議事録を読んで、A4一枚にまとめて。「決まったこと・宿題(誰が何をいつまで)・保留」の三つに分けて。各項目に、元の該当箇所も書いて。

この三十ページのマニュアルに、まず内容ごとの見出しを付けて。要約はその後で頼むから、今は地図だけ作って。

このPDFを「全体像を掴みたい」目的で三行にまとめて。それぞれ、元の何ページから取ったかを付けて。

この長いメールのやりとりを、時系列で「何が決まって・何が保留か」に整理して。私が返信すべきことがあれば、最後に一覧で。

(医療者向け・ダミーデータ前提)この学会抄録集を、演題ごとに「テーマ・結論・元のページ」の三点で一覧にして。気になった演題だけ後で原文を読みたい。

ごろつまずき集
  • 症状: 要約はきれいだが、元と照らせなくて使いにくい。原因: 元ページのひもづけを頼んでいない。一手: 「各項目に元の該当箇所も書いて」を必ず添える。
  • 症状: 大事な点が要約から抜け落ちた。原因: いきなり短くさせた。一手: 先に「見出しを付けて」で地図を作ってから要約する。
  • 症状: 議事録が「話した順」のままで、使えない。原因: 分類を指定していない。一手: 「決まったこと・宿題・保留」の三分類を指定する。
  • 症状: 宿題は出たが、誰がやるのか分からない。原因: 担当と期限を拾わせていない。一手: 「誰が・何を・いつまでに、まで拾って」と足す。
あせらず、ゴロゴロ。
読んだ