23章 帰宅編
23-2

それでも、自分の指で。外に出るほど、最後は自分が決める

外に出るほど、最後のひと押しは自分が握る。

外の仕事は、相棒に任せられる部分がたくさんあります。案内文の下書き、スライドの骨組み、想定問答。では、この中で、相棒に任せずに自分の指でやったほうがいいのは、次のどっちだと思いますか。

  • A. 下書きを作るところ
  • B. その下書きを、外に向けて送り出す最後のひと押し

答えは、この話のいちばん下にあります。

この話を読むと

任せる範囲と、自分でやる範囲の境目が、外に出るほどはっきり見えてきます。任せられるのはどこまでで、どこからは自分の指か、線が引けるようになります。

外の仕事を覚えると、任せられることが一気に増えます。相棒は、案内文の下書きを作ってくれる。スライドの骨組みを組んでくれる。質疑応答の想定を並べてくれる。あんまり便利なので、ついつい、最後まで任せたくなります。送信も、登壇の第一声も、会の締めのあいさつも、ぜんぶ用意してもらえば楽なのに、と。

相棒が用意した整った書類束の最後に、ごろの手だけが封筒の口をそっと閉じる

でも、ごろは、この篇を通してずっと、最後のひと押しだけは自分の指でやってきました。下書きは任せても、送信ボタンは自分で押す。スライドは任せても、登壇の第一声は自分の口から出す。案内は任せても、会の締めのあいさつは自分で言う。

理由は、シンプルです。外に出るものには、相手がいるからです。家の中の作業なら、多少ずれても、自分が困るだけでした。でも、外に出すものは、受け取る人がいる。送った案内には返事が来る。登壇の第一声は、その場の空気を作る。会の締めは、参加者が持って帰るものになる。だから、外に出る最後の瞬間だけは、自分の目と、自分の口と、自分の指で、確かめてから出す。外に出るほど、最後のひと押しは自分が握る。 これは、任せることの逆ではありません。安心して任せるための、たった一つの手すりです。

任せる範囲を、もう一度だけ確かめておきます。任せていいのは、下書き・骨組み・下調べ・案の並べ。自分の指でやるのは、送る・言う・締める・決める。この境目さえ握っておけば、相棒にどれだけ多くを任せても、外の仕事はちゃんと自分のものでいられます。

実演

ごろは、会の案内文を送る日、相棒にこう頼みました。

「今度の勉強会の案内文を、下書きしてください。日時と場所と、持ち物と、申し込みの締め切りを入れて。送るのは自分でやるので、まだ送らないでください。」

ごろが案内文を一行ずつ確認し、日時と場所を丸で済ませ、締め切りのありえない日付で爪を止める

ごろのとなりで、案内文の下書きが出てきました。ごろは、それを上から下まで読みます。日時、よし。場所、よし。ところが、締め切りの日付が、実際より一日早く書かれていました。相棒が、なんとなく切りのいい日にしてしまったのです。ごろは、そこだけ直します。もし、このまま送っていたら、申し込みそこねる人が出ていたかもしれません。

送る前に、自分の目で一度通す。直してから、自分の指で送る。この最後のひと押しがあったから、まちがった日付は、外に出ませんでした。下書きは任せていい。でも、外に出す瞬間だけは、いつも自分でした。

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ごろはじめの一歩
  • どこで: いつものチャット画面で。任せるのも、確かめるのも、同じ場所です。
  • どうやって: 相棒に何かを頼むとき、「作るところまで」と「送るところ」を、言葉で分けて頼む。
  • きっかけ: 外に出すものを作ったとき。送るボタンに指をかける前に、ひと呼吸おいて、自分の目で一度通す。
ごろはじめの一歩

あせらず、ゴロゴロ。

手順
  1. 相棒に頼むとき、「作るところまで」で止める、と先に言う

    こうした方がいい

    「送らないで」「まだ出さないで」を頼みの中に入れておく

    ごろはこうしてみた

    案内文の頼みに「送るのは自分でやる」と付けた。

  2. できた下書きを、外に出す前に、自分の目で上から下まで通す

    こうした方がいい

    日付・名前・場所など、まちがうと相手が困るところを重点的に見る

    ごろはこうしてみた

    締め切りの日付が一日ずれているのを見つけた。

  3. 直すところは、自分の手で直す

    こうした方がいい

    「ここを直して」と頼み直してもいいが、外に出る一歩手前は自分で握る

    ごろはこうしてみた

    日付だけ、自分で直した。

  4. 送る・言う・締めるの最後のひと押しは、自分の指でやる

    こうした方がいい

    送信ボタン、第一声、締めのあいさつは、相棒に代わってもらわない

    ごろはこうしてみた

    送信は、自分でボタンを押した。

  5. 任せる範囲と自分の範囲を、たまに口に出して確かめる

    こうした方がいい

    「作るまでは任せる、出すのは自分」を、自分に言い聞かせておく

    ごろはこうしてみた

    会のたびに、この線を思い出すようにした。

うまくいったかの確かめ方

相棒に任せた下書きが、外に出る前に必ず一度、自分の目を通っていれば成功です。送る・言う・締める、のどれかを相棒に代わってもらっていなければ、境目が守れています。

答えタップして答え合わせ
ごろ

B。 下書きを作るのは、相棒に任せていいところです。

でも、それを外に向けて送り出す最後のひと押しは、自分の指でやります。外に出るものには相手がいるからです。任せる範囲は「作るまで」、自分の指は「送るところ」。この境目を握っておけば、安心してたくさん任せられます。

ごろあなたの番3分

そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。

登壇の第一声だけ、自分で考えたいので、相棒には手伝わないでほしいです。かわりに、そのあとの本題の流れの下書きをお願いします。

会の締めのあいさつは、自分の言葉で言いたいです。あいさつ以外の、当日の司会進行の下書きを作ってください。

増補もっと知りたい人へ (3)
深掘り

任せることと、手放すことは、似ているようで違います。任せるのは、作業を渡すこと。手放すのは、責任まで渡してしまうこと。外の仕事で危ないのは、便利さにまかせて、任せるつもりが手放しになってしまうことです。案内文の下書きを任せるのは、任せる。でも、その案内を送る判断まで相棒にゆだねてしまったら、それは手放しです。境目は、外に出る瞬間にあります。外に出るまでは任せていい。外に出す瞬間だけは、自分が握る。

なぜ「外に出るほど」自分の指が効くのか。それは、外に出たものは、取り消しがきかないからです。家の中のファイルなら、まちがえても戻せます。この本の第三部で、ごろは「元に戻す」を覚えました。でも、送ってしまった案内、口に出してしまった第一声、参加者が持って帰った締めの言葉は、あとから戻せません。戻せないものほど、出す前に自分の目を通す。これは、疑い深いのではなく、外の仕事に対する、いちばん素直な手すりです。この手すりがあるから、ごろは安心して、たくさんのことを相棒に任せられました。

例をもっと

このお知らせを、SNSに投稿する下書きにしてください。まだ投稿はしないでください。日付と場所が正しいか、私が確かめてから、自分で投稿します。

登壇の第一声だけ、自分で考えたいので、相棒には手伝わないでほしいです。かわりに、そのあとの本題の流れの下書きをお願いします。

会の締めのあいさつは、自分の言葉で言いたいです。あいさつ以外の、当日の司会進行の下書きを作ってください。

このメールを送る前に、宛先と、添付するファイルの中身に、外に出してはいけないものが入っていないか、確認の観点だけ挙げてください。送るのは自分でやります。

(医療者向け・ダミーデータ前提)研究会の案内文を下書きしてください。送信は自分で行います。日時・会場・演者名はすべて仮のダミーで、実名や患者情報は入れていません。私が正しい情報に差し替えてから送ります。

ごろつまずき集
  • 症状: 便利なので、つい送信まで相棒に任せてしまいそうになる。原因: 任せると手放すの境目があいまい。一手: 頼むときに「送らないで」を先に付けます。作るまでは任せ、出すのは自分、と口に出します。
  • 症状: 下書きに、日付や名前のまちがいがまざったまま外に出そうになった。原因: 送る前の目通しを飛ばした。一手: 外に出るものは、まちがうと相手が困るところ(日付・名前・場所)を、送る前に自分の目で通します。
  • 症状: 送ってしまってから、まちがいに気づいた。原因: 外に出るものは戻せない、という前提を忘れていた。一手: 「戻せないものほど、出す前に一度見る」を習慣にします。戻す手間より、見る手間のほうが軽いです。
  • 症状: 何を自分でやり、何を任せるか、毎回迷う。原因: 境目を言葉にしていない。一手: 「作るまでは任せる、送る・言う・締めるは自分」と、一度紙に書いておきます。
あせらず、ゴロゴロ。
読んだ