黒い画面と、和解する
起こす、それからお願いする。この順番ひとつ
黒い画面を「一言お願いする窓口」として使い、二匹目を呼び出せるようになります。
黒い画面。あの、映画のハッカーが猛烈にキーを叩いているやつ。あれを自分が触るなんて、と身構えますよね。わかります。でも実際のあなたがやるのは、猛烈な連打ではなく、たった一行のお願いです。
先に、大事な念押しを。第1篇で私は「黒い画面は出てきません」と約束しました。その約束は、いまも本当です。一匹目は、デスクトップアプリやブラウザ版で、黒い画面なしに最後まで使えます。黒い画面が出てくるのは、二匹目の相棒を迎える、この一回だけ。ここから先の章でも、もう本格的には開きません。だから安心して、ここだけ、扉を少し開けます。
あれは魔法陣ではなく、お願いを書き込む窓口です。あなたが一行書いて渡すと、向こうが返事を書いてくれる。手紙のやり取りに近い。打つのは、二匹目を呼ぶ決まった言葉を一行と、あとは日本語のお願いだけ。プログラムの文法を覚える必要はありません。
そして何より安心なのは、やめ方を先に知っておくことです。困ったら、扉を閉じればいい。閉じれば、ただの静かな画面に戻ります。壊れません。

壊れないかな、とごろは投函口を見つめます。でも、そっとメモを差し込んでみると、扉の向こうから返事の紙が一枚すべり出てきました。ここは、お願いを入れる口。壊すボタンじゃない。こわくなったら扉を閉じればもとどおり、とごろは小さく息を吐きます。
二匹目の相棒を呼ぶには、ある入り口を通ります。次のうち、正しい心構えはどっち?
- A: 黒い画面は上級者だけのもの。触ったら壊れるから、近づかない
- B: 黒い画面は「もう一つの入り口」。挨拶を一言打つだけなら、壊れない
ごろが黒い画面を開き、決まった呼び出しの言葉を一行打って、二匹目を起こします。打つのは、たった一語、claude
です。これで相棒〔Claude
Code〕が黒い画面のなかで起き上がります。起きた二匹目に、ごろは日本語でこう頼みます。「このメモの言葉づかいを、全部『です・ます』にそろえて」。
二匹目は黙々と全文を直して、直しました、と返してきました。ごろがやったのは、呼び出しの一行と、日本語のお願いひとつだけです。
ここでごろは、小さくつまずきます。最初、呼び出しの言葉を打つ前に、いきなり「そろえて」とお願いしてしまい、画面は無反応。ごろはしばらく待って、はっと気づきます。あ、先に二匹目を起こしてからだった。起こす、それからお願いする。順番さえ守れば動くと分かって、ごろは肩の力を抜きました。
はじめの一歩- どこで: まずは一匹目のデスクトップ版・ブラウザ版で十分だと確認する。そのうえで「二匹目を試したい」と思ったときだけ、黒い画面を開く
- どうやって: 黒い画面(ターミナル)を開いて、点滅しているところに
claudeと一語だけ打って、返事を待つ。起き上がったら、あとはいつもの日本語でお願いするだけ - きっかけ: 一匹目に頼んだ仕上げが「同じことの繰り返しで退屈そうだな」と感じた瞬間が、二匹目を呼ぶ合図
【QR:
黒い画面(ターミナル)自体の開き方は、Mac・Windowsで少し違います。OS別の最短手順はオンライン追補に。打つ言葉は、どちらも
claude の一語です】
はじめの一歩あせらず、ゴロゴロ。黒い画面は敵ではありません。一言お願いして、返事を待つ。それだけの窓口です。
【著者の実話・外来のすきまで】 私は外来のあいだ、細かい言い換えや形式そろえのような単調な直しを、二匹目にまとめて回すことがあります。診療の合間の数十秒でお願いを一言だけ投げておくと、席に戻る頃には片づいている。何を書くかは私と一匹目、体裁をそろえるのは二匹目、と分けるだけで、限られた時間の密度が変わりました。ここでも、患者さんの名前や診断書のような大事なものは、けっして画面に入れません。渡すのは、あくまで自分の下書きの言い回しだけです。
ごろの手元に、掃除の手順をなぐり書きしたメモが一枚あります。ただ、語尾がバラバラ。「そろえる」「かけた」「拭くこと」が入りまじって、読み返すたびに落ち着きません。これを全部「です・ます」にそろえたい。単調な直しなので、二匹目に回すことにしました。まず、その散らかりようを見てみます。
$ cat desumasu_72/掃除メモ.txt
玄関の靴をそろえる
リビングの床に掃除機をかけた
トイレはこまめに拭くこと
ゴミは木曜の朝に出す
洗面所の鏡を磨いておいたごろは黒い画面を開きました。ここで、さっそくつまずきます。
ごろが打った文このメモの言葉づかいを、全部『です・ます』にそろえて。
相棒の返答(無反応。カーソルが点滅しているだけ)
画面で見えること何も返ってこない。しんとしている。
しばらく待って、はっと気づきます。二匹目を、まだ起こしていませんでした。先に呼び出しの一行を打って、起こしてからお願いする。順番を直します。
ごろが打った文claude (まず、この一語で二匹目を起こす) → 起き上がってから: このメモの言葉づかいを、全部『です・ます』にそろえて。中身は変えないで、語尾だけ。
相棒の返答承知しました。語尾のみ「です・ます」に統一しました。「拭くこと」は指示形だったので「拭きます」に、「磨いておいた」は「磨きます」にそろえています。(直した全文を表示)
画面で見えること起こす前は無反応だったのに、順番を直したら、直った全文がすべり出てくる。
仕上がった写しがこれです。
$ cat desumasu_72/掃除メモ_ですます.txt
玄関の靴をそろえます
リビングの床に掃除機をかけます
トイレはこまめに拭きます
ゴミは木曜の朝に出します
洗面所の鏡を磨きますつまずきの正体は、むずかしい文法ではありませんでした。起こす、それからお願いする。この順番ひとつです。この日はこう返ってきました。「拭くこと」をどう言い換えるかは、頼むたびに少し表現が変わります。
直したい実物を開いて、どこが不ぞろいかを見ておく
こうした方がいい「語尾だけ」なのか「中身も」なのかを、先に自分で決めておく
ごろはこうしてみた掃除メモを開くと、語尾が「そろえる/かけた/拭くこと」とバラバラだと分かった。
黒い画面を開く
こうした方がいい開いただけでは何も起きない。まだ静かな画面だと知っておく
ごろはこうしてみた開いて、いきなりお願いを打ってしまった。
呼び出しの一語
claudeを先に打って、二匹目を起こすこうした方がいいお願いより先に、必ず
claudeの一語を打つ。ここが順番の要ごろはこうしてみた起こす前にお願いして無反応。気づいて、
claudeから打ち直した。起きたら、日本語でお願いを一つだけ渡す
こうした方がいい「語尾だけ、中身は変えないで」と範囲を狭くそえる
ごろはこうしてみた「です・ます、語尾だけ」と頼んだら、余計な書き換えなしで返ってきた。
不安になったら、扉(画面)を閉じる
こうした方がいいやめ方を先に確かめておくと、気楽に試せる
ごろはこうしてみた閉じても壊れず、次に開くと同じ窓口がそこにあった。
お願いを打って返事が返ってきていれば、二匹目はちゃんと起きています。返ってきた文の語尾が全部そろっていれば成功です。無反応のときは、起こす一行を打ち忘れたサインだと思ってください。
答えタップして答え合わせ

B。二匹目を迎えるときだけ、黒い画面がいちばん素直な入り口になります。
やることは「挨拶を一言打って、返事を待つ」だけ。それ以上でも、以下でもありません。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
(二匹目を起こしたあとで)このメモの言葉づかいを、全部『です・ます』にそろえてください。
(起こしたあとで)この予定の一覧を、日付の早い順に並べ直してください。
増補もっと知りたい人へ (3)
黒い画面という言い方をしていますが、正体は「文字だけで、お願いと返事をやり取りする窓口」です。ふだん使っているアプリは、ボタンやアイコンがきれいに並んでいて、押す場所を目で探せます。黒い画面には、その飾りがありません。かわりに、こちらが一行書いて渡すと、向こうが一行書いて返す。手紙のやり取りにいちばん近い形です。飾りがないぶん、はじめは無愛想に見えます。でも、やることはずっと単純で、覚える手順もぐっと少なくなります。二匹目の相棒を呼ぶときにこの窓口を通るのは、二匹目がこの「文字でやり取りする形」をいちばん素直に受け取ってくれるからです。ここで安心してほしいのは、順番さえ守れば動くということ。先に二匹目を起こす言葉を一行打ってから、日本語でお願いする。ごろが最初につまずいたのは、起こす前にお願いを打ってしまったからでした。起こす、それからお願いする。この順番だけ覚えれば十分です。そして、こわくなったら扉を閉じればいい。閉じても壊れませんし、次に開けば、また同じ窓口がそこにあります。だから、気楽に一度だけ、のぞいてみてください。
(二匹目を起こしたあとで)このメモの言葉づかいを、全部『です・ます』にそろえてください。
(起こしたあとで)この買い物リストを、五十音順に並べ替えてください。中身は変えないで、順番だけで。
(起こしたあとで)この予定の一覧を、日付の早い順に並べ直してください。
(起こしたあとで)この文章のなかで、同じ意味の言葉がバラバラに書かれているところを、一つの言い方にそろえてください。
(医療者向け・ダミーデータ前提)この学習用ダミー文章の見出しの体裁を、全部そろえてください。番号のふり方だけ統一してくれれば十分です。実データや患者さんの情報は入れていません。
つまずき集- 症状: お願いを打ったのに、画面がうんともすんとも言わない。原因: 二匹目をまだ起こしていない。一手: いったん止めて、呼び出しの一行を先に打ってから、お願いを打ち直す。
- 症状: 呼び出しの言葉が合っているか自信がない。原因: 環境によって最初の一行が少し違うことがあります。一手: オンライン追補のQR手順を見ながら、そのまま写す。
- 症状: 途中で不安になって、どうやめればいいか分からない。原因: やめ方を先に確かめていない。一手: 困ったら扉(画面)を閉じる。閉じればもとどおりで、壊れません。
- 症状: 黒い画面をこれから毎回開くのかと身構える。原因: この本での本格的な開封は、この一回だけです。一手: ここから先は「あの窓口をまた少し使う」程度、と受け止めて大丈夫。
