こわしても、戻れる場所を持つ
Git(ギット)
こわすのが怖くなくなります。
道具をいじって動かなくなると、たいていの人は「やってしまった」と血の気が引きます。ごろも、まさにそうでした。育てた道具を、もっと良くしようと欲張って、あちこち触っているうちに、うんともすんとも言わなくなった。ごろは布団の上で固まりました。
でも、ここで大事なことをひとつ。こわすのは、悪いことではありません。触って動かなくなるのは、前に進んでいる証拠です。問題は、こわすことではなく、戻れないことだけ。だから、戻れる場所さえ持っていれば、もう半分は勝ちなのです。
その「戻れる場所」を作る機能があります。ある瞬間の道具まるごとを、写真みたいに一枚、保存しておく。ゲームで、強いボスの前にセーブするのと同じです。あとで失敗しても、その一枚に一瞬で帰れる。

このセーブのしくみ、じつは名前がついています。Git(ギット)といいます。
……と言われても、身構えなくて大丈夫です。この本は、コマンドを暗記する本ではありません。名前は今すぐ忘れてもらってかまいません。覚えるのは、頼み方だけ。Claude Codeに「今の状態をセーブして」と話しかければ、裏で全部やってくれます。
セーブは、一回きりではありません。区切りのいいところで、何回でも打てます。そして、あとから好きな地点に戻れる。戻すのも一言、「さっきのセーブに戻して」でおしまいです。手で元に戻す必要は、もうありません。
せっかく作った道具を、直そうとして、動かなくしてしまいました。どっちのごろが、早く復活できるでしょう。
- A:動いていた昨日のうちに、こまめに「ここまでできた」の印を残していたごろ
- B:印を残さず、記憶を頼りに、手で元に戻そうとするごろ
ごろは、道具が気持ちよく動いた瞬間に、こう打ちました。
「いまの状態をセーブしておいて。あとで戻せるように」
Claude Codeは、その時点の道具を一枚保存して、「保存しました」と返してきます。それだけ。
ところが、ごろです。この日も調子に乗って、セーブしたことなどすっかり忘れ、道具をいじり倒しました。そして案の定、動かなくなってから「あっ、セーブは?」と気づくのです。あわてて「さっき保存したところに戻して」と頼むと、煙がふっと消えて、昨日の元気なごろが戻ってきました。
ごろは学びました。こわす前に、あかりをつけておく。順番はいつも、そっちです。
はじめの一歩- どこで:Claude CodeのデスクトップアプリかWebで、いつも作業している自分のフォルダを開く
- どうやって:道具がちゃんと動いた瞬間に「ここまでをセーブして」と話しかける
- きっかけ:次に何かを直そうとする前に、まず一回セーブ。これだけを習慣にする
はじめの一歩手順(全3ステップ) 1. Claude Codeのデスクトップアプリで、自分のフォルダを一つ開く。 2. 道具が気持ちよく動いた瞬間に「今の状態をセーブして。あとで戻せるように」と話しかける。 3. セーブ後にあえて何か一か所だけいじり、「さっきのセーブに戻して」と頼んで元に戻ることを確かめる。
所要目安: 10分〜15分
>到達チェック - できたら○ 道具が動いた状態でセーブができた - できたら○ こわして戻すまで、一往復体験できた
あせらず、ゴロゴロ。
ごろの手元には、趣味で作った「かんたん家計簿」のフォルダがありました。金額を入れて「たす」を押すと合計が出る、それだけの小さな道具です。ちゃんと動いているうちに、まず一枚セーブしておくことにしました。
このとき手元にあったのは、この三つです。
app.js
index.html
style.css画面で見えることセーブの一覧に「うごく家計簿その1」の一行が増えました。
ここまではよかったのです。ところがごろは、合計をグラフでも見たくなって、app.js をいじり始めました。書きかけのまま手が止まり、道具はうんともすんとも言わなくなります。あわてて、何が変わったのかを先に聞きました。
document.getElementById("sum").textContent = total;
-}
+ // グラフも足そうとして…
+ drawChart(グラフを足そうとした行が、途中で止まっています。
画面で見えること消えた一行と、足しかけの二行が、赤と緑で並んで見えました。
犯人が分かったところで、直そうと手で戻すのはやめました。動いていたあの一枚に、まるごと帰ればいいのです。ただ、最初の頼み方は、少しあいまいでした。
画面で見えること戻り先の候補が二つ、名前つきで並びました。
「さっき」だけでは、相棒も戻り先を決めきれなかったのです。ごろは、戻りたい一枚の名前を、はっきり言い直しました。
戻したあとの app.js は、こうなりました。
let total = 0;
function add(){
total += Number(document.getElementById("amt").value || 0);
document.getElementById("sum").textContent = total;
}念のため、前回のセーブとの食い違いを確かめると、何も出ませんでした。ずれがゼロ、つまり動いていたあの状態に、ぴたりと帰れたということです。手で直すのを一切やめて、一言で丸ごと帰る。これが、こわしても平気になる正体でした。
この日はこう返ってきました。頼み方や画面の文字は、その時々ですこし違います。大事なのは中身で、「今どこが変わってる?」で犯人を見て、「あのセーブに戻して」で丸ごと帰る、この二手はいつも同じです。
道具がちゃんと動いた瞬間に、まず一枚セーブする。
こうした方がいいセーブには「◯◯が動いた状態」と一言そえると、あとで戻り先に迷いません。
ごろはこうしてみた「うごく家計簿その1」と名前をつけて保存し、一覧にその一行が残りました。
次にいじり始める前に、頭の中でもう一度「さっきセーブしたか?」を確かめる。
こうした方がいいこわす前にあかりをつける、順番はいつもそっちです。
ごろはこうしてみたここを飛ばしてグラフをいじり始め、案の定つまずきました。
動かなくなったら、手で直す前に「今どこが変わってる?」と聞く。
こうした方がいい犯人を先に見ると、どこまで戻せばいいかが分かります。
ごろはこうしてみたapp.js の閉じが消えて、足しかけの行が残っているのが赤と緑で見えました。
「あのセーブに戻して」と、名前を指して丸ごと帰る。
こうした方がいい一行ずつ直そうとせず、動いていた一枚にまるごと帰るほうが速くて確実です。
ごろはこうしてみた一言で app.js が元通りになり、また動きました。
戻れたかを、食い違いで確かめる。
こうした方がいい「今、前回のセーブから何が変わってる?」がゼロなら、完全に帰れています。
ごろはこうしてみた何も出ず、ずれゼロを確認できました。
戻したあとに道具がまた動くこと、そして「前回のセーブから何が変わってる?」に「変わっていません」と返ってくること。この二つがそろえば、動いていたあの時に無事帰れています。
答えタップして答え合わせ

Aです。
印(セーブポイント)さえ残っていれば、失敗しても「動いていたあの時」に一瞬で帰れます。Bは、何をどう変えたか思い出せなくなって、朝までさまようことになります。この印のしくみの名前がGitですが、名前は覚えなくて大丈夫。頼み方だけ覚えます。
あなたの番3分そのまま使える文例です。コピーして、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
これから見た目を大きく変えます。作業を始める前に、いったんセーブを一つ打っておいて。
さっき打ったセーブから、今のいじった分がどう変わったか、ざっくり日本語で教えて。
増補もっと知りたい人へ (3)
なぜ、一言で「戻れる」のでしょう。セーブは、道具全体を毎回まるごと複製しているわけではありません。前のセーブから「どこが変わったか」の差分だけを、小さな印として重ねていきます。だから何十回セーブしても、置き場所はそれほど太りません。そして印には、前の印から順につながる一本の線が引かれています。この線をたどると、いつでも過去のどの一点へでも戻れます。変えた履歴が消えずに全部つながって残っている、これがセーブの正体です。
もうひとつ、大事な性質があります。セーブは「上書き」ではありません。新しいセーブを打っても、前のセーブは消えずに残ります。ふつうのファイル保存だと、上書きした瞬間に前の中身は消えてしまいますよね。セーブはその逆で、打つたびに過去が積み重なっていく。だから安心して、区切りのいいところで何度でも打てるのです。
Claude Codeに「セーブして」と頼むと、裏でこの印を一つ足す作業をしてくれます。読者が差分だの履歴だのを意識する必要はありません。ただ、こういう仕組みだから戻れるのだと分かっていると、こわす手が軽くなります。戻れる、というのは気休めではなく、履歴がちゃんと残っているという事実に支えられているのです。
このフォルダが今ちゃんと動いています。「動いた状態その1」としてセーブしておいて。あとで戻せるように。
これから見た目を大きく変えます。作業を始める前に、いったんセーブを一つ打っておいて。
さっき打ったセーブから、今のいじった分がどう変わったか、ざっくり日本語で教えて。
趣味の家計簿ツールをいじる前に、今日の分をセーブ。もし壊したら「今朝のセーブに戻して」で帰れるようにしておきたい。
(医療者向け・ダミーデータ前提)学習用に作った症例クイズのひな型が動きました。中身は架空の練習用データだけです。この状態をセーブしておいて。
つまずき集- 症状:セーブしたつもりが、戻すと何も変わっていない。原因:セーブを打つ前の状態と、打ったあとの状態が同じだった(変更がまだ入っていない)。一手:「今、前回のセーブから何が変わってる?」と先に聞いて、差分があるのを確かめてからセーブします。
- 症状:どのセーブに戻せばいいか分からない。原因:セーブに名前をつけず、ただ数だけ増やしていた。一手:「セーブの一覧を、いつ何をした状態か分かるように見せて」と頼み、次からは「◯◯が動いた状態」と一言そえてセーブします。
- 症状:戻したら、今書いていた分まで消えた。原因:まだセーブしていない作業は、戻すと巻き戻ります。一手:戻す前に「今の分も念のため別で取っておける?」と一声。戻す、は今より前へ行く操作だと覚えておきます。
- 症状:そもそも「セーブして」に反応がない。原因:そのフォルダがまだセーブを使える状態になっていないことがあります。一手:「このフォルダでセーブを使えるように準備して」と最初に一度だけ頼みます。
